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コラム

ダーティ・プロジェクターズ(Dirty Projectors)のEPシリーズ集大成『5EPs』を5人で探求

萩原健太、長谷川町蔵、渡邊未帆、Babi、高橋健太郎が読み解く

Photo by Jason Frank Rothenberg
 

USインディー・シーンきっての鬼才、デイヴ・ロングストレス率いる先鋭的な音楽集団、ダーティ・プロジェクターズが『5EPs』をリリースした。同アルバムは、今年の3月以降に配信とアナログ盤の12インチで連続リリースしてきたEP5作をまとめたもの。各EPでは、メイン・ヴォーカリストと音楽的な方向性を変え、リスナーを楽しませてきた。これらを一気に聴くことのできる『5EPs』は、ダーティ・プロジェクターズの多彩なサウンドや一筋縄ではいかない魅力を再認識するのにうってつけの一枚だろう。

DIRTY PROJECTORS 『5EPs』 Domino/BEAT(2020)

今回Mikikiでは、音楽ライター/音楽家の5人に各EPを論じてもらった。ひときわフォーキーな趣の『Windows Open』はアメリカ音楽に造詣が深い萩原健太。モダンR&B的なプロダクションが光る『Flight Tower』は、共著「文化系のためのヒップホップ入門」などで知られる長谷川町蔵。ボサノヴァやブラジル音楽からの影響が色濃い『Super João』は中南米の音楽に詳しい渡邊未帆。過去に録音/制作していたオーケストラ演奏のコラージュをさらに再構築したという『Earth Crisis』は、クラシックの素養があるミュージシャンのBabi。そして、シリーズ最後の作品である『Ring Road』は、EPシリーズ全作をふまえつつ高橋健太郎が解説した。 *Mikiki編集部

 

DIRTY PROJECTORS 『Windows Open』 Domino/BEAT(2020)

不安な日々のただ中のさりげない〈救い〉
by 萩原健太

生ギターを核に据えたひたすらアコースティカルな音像の下、ダーティ・プロジェクターズらしい透明感に満ちたコーラス/ハーモニーに彩られながら、マイア・フリードマンがリード・ヴォーカルをとった4曲。往年のニコやジュディ・シル、ジョニ・ミッチェル、ダンカン・ブラウン、コリン・ブランストーン、初期ピンク・フロイドといったキーワードがイマジネイティヴに脳裏をよぎる。

リリース当初、ちょっと退屈、ミニマルすぎる……など、ネガティヴな評も耳にしたりしたものだが。今、本作に続く他のEPたちがそれぞれ提示する、ポップだったり、ソウルっぽかったり、ボッサ風だったりする多彩な世界観にすでに接した耳には、それらへの導入部として、本EPこそ最適な作品集だったな、と。誰もがそんな思いを抱いているはず。

今年の春、本EPが世に出たとき、すでに世界は誰も体験したことのない不安な日々のただ中。そんな中、静謐でありつつもけっしてクールすぎることのない『Windows Open』の感触は、さりげない〈救い〉をぼくたちに届けてくれたものだ。オリヴァー・ヒルが淡々と美しい弦楽アンサンブルを提供した“Search For Life”の深くメランコリックな音世界など、特にしみた。泣けた。

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