Mr.Childrenにとって20枚目となるオリジナル・アルバム『SOUNDTRACKS』は、
全曲で海外レコーディングが決行された意欲作。ポップスとしての普遍性とバンド・アンサンブルの可能性を追求したその音楽世界から、Mr.Childrenが向かおうとしている未来像が浮かび上がる。

Mr.Children 『SOUNDTRACKS』 Toy's Factory(2020)

前作『重力と呼吸』から約2年ぶりとなるMr.Childrenのニュー・アルバム『SOUNDTRACKS』。彼らにとって20枚目のオリジナル・アルバムとなる本作のレコーディングは、40万人を動員したドーム・ツアー「Mr.Children Dome Tour 2019 Against All GRAVITY」終了後の昨年7月から、ロンドンとロサンゼルスで行われた。

今回のレコーディングでは〈新しい音楽の可能性と刺激〉がテーマとして掲げられた。エンジニアを務めたのは、これまでに数多くの作品に関わってきたスティーヴ・フィッツモーリス。ミックス・エンジニアとして関わったU2の『All That You Can't Leave Behind』(2000年)やシールのシングル『Kiss From A Rose』(94年)がグラミー賞を受賞したほか、近年では宇多田ヒカルの『Fantôme』や『初恋』のレコーディング・エンジニアも務めている人物だ。また、ロンドンでのレコーディングにはジャミロクワイやビョークの作品にも関わってきたアレンジャー、サイモン・ヘイルも参加している。

日本とロンドン/ロサンゼルスを往復しながら進められた今回のレコーディングでは、国外の職人たちとポップスとしての普遍性とバンド・アンサンブルの可能性が追求された。“DANCING SHOES”や“Documentaryfilm”など多くの楽曲で流麗なストリングス・アレンジが施されているが、軸となっているのは骨太で柔軟なバンド・アンサンブル。すべての要素が有機的に結びつき、Mr.Childrenならではの広大な世界を描き出している。なかでも四つ打ちのリズム感覚も織り込まれた“Birthday”や、楽曲の最後にリズムチェンジし、ストリングスと共に空高く舞う“君と重ねたモノローグ”の凝ったアレンジには驚かされるばかりだ。Mr.Childrenが日本有数のモンスター・バンドであると同時に、世界的な視野を持つ現在進行形のロック・バンドであることを証明する作品ともいえるだろう。