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【HIP HOP / R&B】
YNW BSlime


天野以前〈PSN〉で紹介したラッパーのYNW・ビースライムは、YNW・メリー(YNW Melly)の弟です。2007年生まれで、まだ13歳という若さ。日本では中学生ですね。新曲“Need You”のビデオで戯れている女性は、ビースライムのお姉さんにしか見えません(笑)。それはさておき、彼はイマドキのラップ/トラップらしいメロディアスに歌うフロウが特徴で、甘いハイトーン・ヴォイスが耳に残ります。低年齢化著しいアメリカのラップ・シーンの象徴のような彼は、これからどんなラッパーになっていくのでしょうか。メリーは殺人罪で起訴されていますし、あまりサグな道を歩まないでほしいな……」

 

Taphari


天野「NYブルックリン・ブラウンズヴィルのカリブ系アメリカ人アーティスト、タファーリ。彼のことは、マイク(MIKE)の『War In My Pen』(2018年)やアデ・ハキム(Adé Hakim)の『Happiest People In The World Wide Web』(2019年)に参加していて知りました。タファーリが作ったプレイリストにはマイクやキーヤー、ピンク・シーフの曲が入っているので、僕がいま注目しているアメリカのアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンに近い存在なんだと思います。マイク周辺のアーティストはローファイでアヴァンギャルドなビートが特徴ですが、彼の曲にはトラップを意識したテイストや未来的な電子音とエフェクトが入っていて、かなり独特。これからが楽しみな才能です」

 

Ivorian Doll


天野「いまロンドン・ドリル・シーンで注目を集めているアイヴォリアン・ドール。ドリルやギャングスタ・ラップは男性ばかりのシーンですから、女性MCだというのがまず珍しい。ドイツ生まれで東ロンドンに移り、YouTubeでのスキャンダラスな言動で話題になった……、というUK版カーディ・Bのような彼女。2020年4月に発表したシングル“Rumors”がヒット・ソングになり、ドリルMCの顔役であるヘッディ・ワン(Headie One)の傑作『Edna』への参加も印象的でした。ドスの効いた歌声と力強いフロウで男性中心主義的なシーンに殴り込んだ彼女は、痛快きわまりない存在感を発揮していますね」

 

Bree Runway


田中「ロンドンの中心部ハックニーから登場したブリー・ランウェイは、すでにネクスト・ブレイクまちがいなしと囁かれているシンガーです。最近ではリナ・サワヤマのヒット曲“XS”のリミックスにフィーチャーされていましたね。ランウェイは昨年の11月にデビュー・ミックステープ『2000AND4EVA』をリリースしていて、同作はミッシー・エリオットやヤング・ベイビー・テイトが参加したパワフルな作品でした。ティンバランドやネプチューンズによる2000年前後のサウンドに強く影響されているようで、フューチャリスティックなトラックがかっこいい。ラウドなギターを取り入れたロック色の強い楽曲も多く、それはリナ・サワヤマとハモるだろうな、という印象」

 

Jany Green


田中「ジャニー・グリーンはアラスカ出身で、現在はLAを拠点にしているSSW/プロデューサーです。彼の特徴はラップと歌のちょうど真ん中を行くかのようなメロディアスなヴォーカルと、陽性でキャッチーなサウンド。NMEのインタビューでは影響を受けた存在にアウトキャストとドミニク・ファイクの名前をあげていて、彼らの音楽と同様の不思議なミクスチャー感覚が魅力的。音楽的なルーツはラップのようですが、とにかくインディー・ポップが大好きみたいです。個人的には、サード・アイ・ブラインドやシュガー・レイといった90~2000年代のメインストリーム・ロック感があるのもツボですね」