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音楽を届けることはやめたくない

――当時の状況を反映してる内容なので、心にきたんでしょうね。続く“GOiNG ON”も緩急のあるカッコイイ曲で。

トギー「いいですよね~。これもめちゃくちゃライヴでやりたい曲」

ネオ「〈ずっとずっと歩き続けていこうぜ〉とかサビに行く前の前向きな語り口調みたいな歌と、サビの伝え方が真逆な気がしてて。そのギャップが凄い好きだなって思ったんですけど。サビはちょっと寂しい感じもするし」

ティ部「うん。私こういうの泣いちゃう」

――曲調はいちばん明るいぐらいで威勢がいいんですけど、サビは何となく儚くて。

モン「いましかないかもって思わせる歌詞ですね。〈一瞬しかない〉〈一回しかない〉っていう言葉なのに、いまのことだって思いました」

トギー「いましかないからこそ、いまを大事にしなきゃって、改めて実感した曲。〈そんな僕たちは真ん中をすり減らしながら〉って歌詞があって、真ん中って何だろうって思った時に、心とか気持ちなのかなって思って。どれだけ精神的に擦り減っても、その一瞬のためならがんばれるなって思いました」

――4曲目の“I ain't weak maybe..”もエモーショナルです。作曲のYUNOSYさんは初めての方ですね。

ティ部「福岡のSCRAMBLESの方です」

――作詞はネオさんです。

ネオ「これは曲をいただいた時期に思ってたことを、まんま書いたものなんですけど。私は人に自分のことを話すのが苦手で、たぶん言葉にすることが怖くて、気持ちを曝け出せる唯一の場所が歌詞なので、その当時の気持ちを、自分を助けるために書いた歌詞って感じです。こういう気持ちの人も他にいるかもしれないから、そういう人に少しでも刺さったらいいなっていう」

ティ部「〈歌詞のようには いかないのさ〉ってあるけど、確かに落ち込んでたらポジティヴな曲を聴いても無理に前は向けないし、ネオらしいなと思った。そんなネオが作詞したから、いちばん弱ってる人に寄り添ってくれる曲になりましたね」

トギー「前は意味がある歌詞を書いてても言わなかったじゃん? 〈ただ音にハメただけです〉って。だから、こんな直球で自分の気持ちを書いたネオは初めてだね」

ネオ「初めて。自分でもビックリした」

――人間味ですね。歌詞で〈僕は絶対弱くないから 大丈夫〉って言いつつ、曲名は〈maybe〉なのがいいなと思って。本当の気持ちは曲名になってるというか。

トギー「いま気付いた。ホントだ」

ネオ「しかも最初〈君は絶対弱くないから〉にしてたんですよ。けど、渡辺さんに〈僕〉に変えられて、バレてるって思いました。〈お前のことだろ?〉っていう感じで(笑)」

――バレてましたね(笑)。で、次の“どっきゅんばっきゅん”はトギーさんの作詞。

トギー「はい。これは聴いた時に攻撃的なメロディーだなって思って。〈何を書こう?〉って迷った時に、昔の自分が言ってほしかった言葉を詰め込んだ歌詞になりました。学生時代は学校がすべてで、逃げられないしマジ人生終わりみたいに重く捉えすぎていたんですけど、別に時間が経てば出られるし、動き出そうと思えばいつだって動き出せるってことを、昔の自分に伝えたいと思って。ちょっと攻撃的な歌詞ではあるんですけど、現状が嫌な人を救えたらいいなって気持ちで書きました」

モン「トギーが書くからいいんだろうなって凄い思います。いつも明るく〈トギーで~す〉って感じだけど、裏ではめちゃくちゃ考えてるのが凄い伝わるし、〈どっきゅん〉とか〈ばっきゅん〉とか、音にハマってて凄い好きです。歌ってても強い気持ちになれるっていうか、聴いてると無敵みたいな気分になれる」

トギー「おっ! やった。そうなってほしい」

ティ部「最初に聴いた時はブラック企業とかに勤めてる人に向けてるのかなって思いました。単純に(笑)。トギーの正義感に溢れてる曲だなってめっちゃ思う。トギーは最初のアルバムの“ナンデスカ?”の時から〈大人なんか信用しちゃいけない〉みたいに話してたし、〈ブレねえな〉って笑っちゃいました(笑)」

トギー「信用してますよ、いまは。信用していい人だけ信用してます」

――それでいいと思います。そしてラストが田仲圭太さん作曲のリード曲“つよがりさん”。ピアノがループする4つ打ちの今風なアレンジですね。

ネオ「渡辺さんは武道館のことを言ってるのかなって私は考えたんですけど。反感を持つ人たちへの気持ちとか、やってきたことが否定される状況に対する気持ちとか、そういう心情を書いたのかなと思って」

――歌詞がすべて平仮名っていうのが、逆に本音っぽいですよね。

ティ部「“HiDE iN SEW”も凄く渡辺さんの心の中の気持ちだなって思うし、この“つよがりさん”と、どっちも漢字まったく使ってないし、頭とケツにそれがくるのがおもしろいなって、シンプルに思っちゃいました」

トギー「音楽だからこそ表現できる言葉だし、〈それでも かまってほしくて さけんじゃうぼくは なんておろかなんだろう もしもおなじだったら てをあげてほしい〉とかさ、誰もわかってくれないけど、わかってほしいみたいな気持ち、絶対誰でもあるから、私は強がりじゃないんですけど、もう共感の嵐です」

モン「最後にバリ強がったね(笑)」

――わかりました(笑)。3月にかけてはWACKツアーを回られてる途中だと思いますが、現状を踏まえて2021年のBiSはどうしていきましょう?

トギー「無観客だった時間を取り戻しすぎる勢いで、いっぱいライヴがしたいですね。いまは毎回〈今日が最後かもしれない〉って思ってやってるんですけど、そのありがたみとか、嬉しさとか、いろんなものに改めて気付けたので」

ネオ「うん。ひとつひとつのライヴへの気持ちは上がったし、お客さんを大切にしたい気持ちがさらに増してるのが、自分の心の中で実感できているし」

トギー「状況に合わせて変えていかないといけないけど、それでも生のライヴで伝えたいから、それをたくさん、何回でもやりたい。音楽を届けることはやめたくないなって思ってます」

BiSの2020年の作品。
左から、セカンド・アルバム『LOOKiE』、ミニ・アルバム『ANTi CONFORMiST SUPERSTAR』、ライヴBD「"HEART-SHAPED BiS" IT'S TOO LATE EDiTiON NO AUDiENCE LiVE」(すべてRevolver)