気分が変われば、作る音楽も変わる
――5曲目の“Harder”以降はぐっと低音が前に出て、Cwondo流のダンス・トラックと形容できそうなベース・ミュージックですね。
「この曲は1年半前に作っていた曲で、当時のNo Busesのモードには合わないと思って、作りかけのままだったんですけど、ソロでも作品制作をしてみようと思って、かなり早い段階で完成させました。確かにこのアルバムではダンス・ミュージック色がいちばん強い曲ですよね。かつて自分は、ダンス・ミュージックに対してのっぺりした無機質な音楽という印象を持っていたんですけど、先日、BIMくんのライブでお会いしたSTUTSさんがYouTubeにアップしていたNYでのストリート・ライブの映像を観たとき、サンプラーを叩いて、ギターやドラムと同じような躍動感のあるグルーヴを生み出しているところがおもしろかったんです。
DTMやMIDIを用いて作った曲は、あまりに整えてしまうと、その整然とした部分に耳がいってしまうというか、そういう意味で僕は丁寧なだけの音楽が好きではなかったりするので、Cwondoの曲では揺れを持たせているんです。その揺れが自分にとって心地よかったりするし、No Busesと共通するグルーヴの考え方だと思いますね」
――6曲目の“Kochi”というのは〈高知〉のことですか?
「そう思いますよね。でも、そうではなく〈東風〉――春の季語でもある東から吹いてくる風のことなんですよ。曲が出来たとき、春っぽいなと思ってタイトルを付けました。楽器的なメロディーをなにより大切に考えていた曲だったので、その歌詞も言葉の響きを優先させていて、深い意味はないんです。それは続く7曲目の“Ginger”も同じ。この2曲は歌を楽器のひとつとして聴いて欲しいですね」
――“Kochi”はフォーキーでただただ心地良い曲であるのに対して、“Ginger”はトラップのリズム・パターンがドリルンベースに変化していく曲ですね。
「そうですね。サウンドの心地良さにフォーカスした曲は今まで作ってこなかったというか、、No Busesがやってるガレージ・ロックは落ち着くような音楽ではないですからね。だから、“Kochi”では耳触りのいいメロディーメイクを意識しましたし、“Ginger”はリズムこそ激しいんですけど、後半のギター・ソロがとにかく気に入っていて、ソロを聴いてもらえたらうれしいです」
――バンドというフォーマットから解き放たれた自由な音楽の作り方を多角的に形にした作品であると思うんですけど、同時代のアーティストで近藤さんがシンパシーを寄せるアーティスト、バンドはいらっしゃいますか?
「シンパシーというか形態の近い現行のアーティストなどで言うと、ヴィーガン(Vegyn)やヤング・リーン、ドミニク・ファイクなどが好きで聴いています。僕も今回はビートやシンセサイザーをフィーチャーした作品を作りましたけど、気分が変われば、ギターと歌だけで作品を作ることもあるかもしれませんし、そのときどきでバランスを取りながら、自分のなかにあるいろんな側面が出せたらいいなって思います」