tricotのボーカル&ギターとしての活動以外に、パフォーマーとしての側面に特化している印象のジェニーハイ、山本幹宗とのミニマムなプロジェクトでインディポップなサウンドを繰り出す好芻と、音楽だけでも複数のアウトプットを持つ中嶋イッキュウ。彼女がほぼ10年ごしに初のソロ作『DEAD』をリリースしたのが今年の5月末。早くも2ndアルバム『LOVE』が到着した。

山本の声掛けで集まった佐藤征史(くるり)、あらきゆうこ、ジェニーハイでもお馴染みの新垣隆らで作られた『DEAD』での包容力のあるオルタナティブロックから一転、今回はCwondo(近藤大彗/No Buses)や、中尾憲太郎+ビートさとし(skillkils)+Acidclank、tricotのキダ モティフォ、西野恵未という3組を迎え、アブストラクトですらある痛快な音像が実現した。意外な参加ミュージシャンとの出会いの経緯や、『DEAD』と『LOVE』の関係性などについて聞いた。

中嶋イッキュウ 『LOVE』 SHIRAFUJI(2024)

 

初ソロ作を経て新しい方に進みたくなった

――前作『DEAD』のタイトルは2016年頃に作っていた曲を蘇らせるという意味の〈デッドストック〉から付けたとおっしゃってましたが、今回の『LOVE』に関してはどうだったんでしょう。

「『LOVE』に関してはほとんど新曲で、『DEAD』が終わってから作ったものがほとんどですね。“あな”と“未成年”は昔作った曲で、“未成年”は10代で作ったものなんですけど」

――じゃあ『LOVE』の構想や気配は『DEAD』の制作時にはなかったんですか?

「いや、元々は昔のデッドストック的なものを一気にボンって出したかったんです。それが制作期間的に難しかったので『DEAD』で5曲出してみて、残った曲たちもすぐに出したいなって思ってたんですけど、『DEAD』を出しちゃったことによって新曲を作りたくなってしまったというか(笑)。

なので次作のリリースは決まってたんですけど、過去のものじゃなくて新しいものを作りたかったり、今まであんまり関わったことのないミュージシャンの方たちと関わってみたいなっていう気持ちもあったりとか、新しい方に進んでいってしまった感じでしたね」

――びっくりですよ。

「ははは!」