アンダーグラウンドでは引き続き熱気を保っているグライム・シーンだが、USヒップホップと同様にミックステープ中心のサイクルに移行している人が多いこともあって、タワレコで入手できるようなブツはほとんどない。そのせいか、コアなリスナー以外にはまるで実体が目に留まらないというものも多いだろう。もちろん特徴的なベース・サウンドという面でのグライムはリンスなどのミックス作品や、テラー・デンジャー主宰のハードライヴ音源など入手が容易なものも多い。ただ、そのテラーの仲間だったジャマーのように我が道を往く人はともかく、UKのグライムMCが正規盤を出せるような環境に移行すると、大仰なUKソウル・ポップの流れに乗ったり、US志向の音やEDMなどに足回りをガラリと変えて、単に〈ラッパー〉だと標榜するケースが多いようにも見える。そんな傾向を作ったのがディジー・ラスカルだというのも皮肉だが、共にトレ・ミッションとコラボ歴のあるドット・ロットンにしてもデヴリンにしても、メジャー移籍後はメインストリーム的な要請に対応するようなバランス取りが窺えたものだ。ただ、ディジーの影響下で速射ラップに開眼したダニー・ブラウンのように、外側からの波がグライムMCたちの在り方を変貌させる可能性はあるだろう。トレを獲得したビッグ・ダダの動きはラップ・ミュージックとしてのグライムを広く届ける契機になるかもしれない。
▼関連作品
左から、2013年のコンピ『Hardrive Presents Hardwired』(Hardrive)、ジャマーの2013年作『Living The Dream』(Jahmek The World)、ドット・ロットンの2013年作『Voices In My Head』(Mercury)、デヴリンの2013年作『A Moving Picture』(Island)、ダニー・ブラウンの2013年作『Old』(Fool's Gold)
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