田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。英ラジオ局〈Radio X〉が毎年行っているイギリス史上最高の楽曲を決める投票で、今年はオアシスの“Live Forever”が1位になりましたね!」

天野龍太郎「2021年、最高にどうでもいい情報……。そんなことよりも、ラッパーのDMXが大変なことになっています。米時間4月2日の夜、薬物の過剰摂取で病院に緊急搬送されて、現在も生命維持装置を付けた危険な状態にあると報じられています。90年代から活動しているヴェテランですが、新作にはベニー・ザ・ブッチャーやコンウェイ・ザ・マシーン、故ポップ・スモークなんかが参加しているらしくて、楽しみにしていたところなのに……。とにかくいまは、彼の回復を祈るばかりです」

田中「本当にそうですね。あと今週は、XL傘下でThe xxやFKA・ツイッグスらを輩出した名門レーベル、ヤング・タークスがレーベル名を〈ヤング(Young)〉に改名した、というのも話題でした」

天野「〈Young Turks〉というのは20世紀にアルメニア人を虐殺したトルコの活動家集団のことだそうで、レーベル創設者のカイアス・ポースン(Caius Pawson)がそうと知らずに名乗っていたことを謝罪。彼は、ユダヤ系アルメニア人の生活を助けるための文化的慈善団体に寄付を行ったそうですね。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

Icewear Vezzo feat. Lil Durk “Up The Sco”
Song Of The Week

天野「アイスウェア・ヴェゾがリル・ダークをフィーチャーした“Up The Sco”が〈SOTW〉! この曲を〈SOTW〉に選んだのは、自分で言うのもなんですが、なかなか攻めています(笑)。でも、ヴェゾのことはどこかで紹介したいと思っていたので、よかったです」

田中「攻めすぎでは……(笑)。アイスウェア・ヴェゾは、デトロイトのギャングスタ・ラッパーですね。アボかどさんが執筆されたコラム〈デトロイトのギャングスタ・ラップはなぜ西海岸サウンドを取り入れた?〉でも名前が挙がっていました」

天野「アイスウェア・ヴェゾは僕と同じ89年生まれの31歳で、ラッパーとしてのキャリアは10年近くある中堅。“Money Phone”(2013年)などのヒット・ソングで知られています。近年LAのドレイコ・ザ・ルーラーなどの新鋭と共演して気を吐いているのですが、そんな彼が若手のリル・ダークと共演したこの曲には興奮しました。デトロイトGらしいダークでダウナーなロケイン(Rocaine)によるビートも、2人のキャラクターが表れたラップもクール。ちなみに、〈sco〉は〈score〉の略です。“Up The Sco”はヴェゾの新作『Rich Off Pints』からのシングルと見られていますが、どこのプレイリストもこの曲を入れていなくて僕は〈なんで?〉と思っています(笑)」

 

Doja Cat feat. SZA “Kiss Me More”

田中「今週最大の話題曲と言えるでしょう! ドージャ・キャットとSZAがコラボした“Kiss Me More”です!!」

天野「昨年“Say So”が大ヒットしたドージャは、先日授賞式が行われたグラミー賞で〈最優秀新人賞〉にノミネートされるなど、いまをときめくポップ・スター。SZAは、高く評価された2017年のファースト・アルバム『Ctrl』以降、レーベルのTDEとの確執が報じられるなど、表立った活動は少ないのですが、次のアルバムが待ち望まれているアーティストの一人ですよね。ただ、昨年末にリリースした新曲“Good Days”が現在ヒット中で、2021年はノリにノっている印象です」

田中「そんな2組の共演ということで、聴く前からワクワクしていましたが、これは期待を裏切らない最高のポップ・チューン! キラキラとしたギターのカッティングとスムーズなディスコ・ビートがたまりません。アゲアゲではなく、メロウでスロウなダンス・ナンバー、というのもいいですよね。この曲は、ドージャが今夏にリリースする予定のニュー・アルバムに収録予定。新作にはウィークエンドやアリアナ・グランデの参加も噂されています。めちゃくちゃ豪華な作品になっていそう……」