Photo by Pak Bae

ジャパニーズ・ブレックファストの4年ぶりのアルバムにして4作目『For Melancholy Brunettes (& sad women)』が2025年3月21日(金)、ついにリリースされる。グラミー賞にノミネートされた傑作『Jubilee』以来となる待望の新作で、ブレイク・ミルズがプロデュースした本作。ベストセラーになった著書「Hマートで泣きながら」で文筆家としても才能を開花させたジャパニーズ・ブレックファストことミシェル・ザウナーが、音楽的にもテーマ的にも新境地を開いた作品だ。そんな新作について、ミシェル本人に語ってもらった。

なおアルバムについてはタワーレコード8店舗での先行リスニングパーティーTOWER VINYL SHIBUYAでのポップアップショップ、さらに来日ツアーの開催が予定されているので、記事末尾の情報もぜひチェックしてほしい。 *Mikiki編集部

JAPANESE BREAKFAST 『For Melancholy Brunettes (& sad women)』 Dead Oceans/BIG NOTHING(2025)

 

ブレイク・ミルズは家を建てる時にドアノブから作り始めるような人

――新作『For Melancholy Brunettes (& sad women)』はポップな前作『Jubilee』から方向性を変えて、ギターを中心にした内省的なサウンドになりましたね。

「最初に決めたのは『Jubilee』とはまったく違った作品にする、ということだった。いつも予想外のことをやりたいと思っているから。『Jubilee』の時もそうだった。当時、深い悲しみを歌うアーティストというイメージが定着していて、だったら喜びについての作品を作ろうと思って『Jubilee』が生まれた。今回のアルバムは、悲しみ、喜びときて次はどんな手でいこう?と考えているうちにメランコリックで自分の内側を深く掘り下げる作品になっていったの」

――プロデューサーにブレイク・ミルズを招いたのはどういう経緯で?

「ギターサウンドにフォーカスした作品にする、と決めた時点でギターに精通したプロデューサーとやりたいと思った。優れたギタリストと一緒に仕事をすることで、ギタリストとして成長できるからね。それに私はブレイクの作品や彼が手がけたパフューム・ジーニアスのアルバムも大好きだったし。

実際にブレイクと作業してみたら驚きの連続だった。彼と初めてスタジオに入った日に作った曲が“Mega Circuit”なんだけど、私は曲の特徴であるシャッフルのビートから、ドラムから録音すると思っていたの。でも、ブレイクがいちばん最初にしたのはピアノの弦の上にペーパークリップを置いて、その振動音を録音することだった。しかも、2時間かけて(笑)! 彼は家を建てる時にドアノブから作り始めるような人で、こっちは〈まず、家を完成させないと締め切りに間に合わない!〉と冷や汗ものだった。今思うと彼の頭の中には曲の全体像がしっかりあって、完成までの流れも把握していたからこそ、その時々に自分が興味があることを優先させたんだと思う」

――アルバムにはベテランのドラマー、ジム・ケルトナーや俳優のジェフ・ブリッジスなど多彩なゲストを迎えています。ケルトナーはミルズがプロデュースしたパフューム・ジーニアスのアルバム(『Set My Heart On Fire Immediately』)にも参加していましたね。

「ジム・ケルトナーはブレイクが連れてきてくれたの。ドリー・パートンの作品でも叩いていた超大物ドラマーよ! ブレイクはマット・チェンバレンも連れてきてくれた。ブレイクはセッションミュージシャンでもあるから顔が広いの。彼らのようなプロフェッショナルなミュージシャンとレコーディングするのは初めてだった。

ジェフ・ブリッジスを紹介してくれたのもブレイク。“Men in Bars”をデュエット曲として書いた時、相手は男性で低くてラフな声がいいと思ってた。でも、なかなか相手が見つからなくて。そんなある日、ブレイクが〈ジェフ・ブリッジスを知ってるから頼んでみよう〉ってスタジオから電話したら即OKだった。想定外のアルバムにしたいと思っていたけど、ジェフ・ブリッジスとのデュエットするなんてシュール過ぎる(笑)。ブレイクのおかけでアルバムは想像を超えた仕上がりになったわ」