NYで活躍してきたジャズ・ドラマー、 桃井裕範。彼の8年ぶりとなるソロ・アルバム『Flora and Fauna』が2021年8月18日(水)にリリースされる。フロントマンを務めていたPotomelliではドラムスを離れ、ギターを弾きながらメロディアスなインディー・ロックを歌っていたが、今回はふたたび流麗なジャズ・ドラミングを披露。全13曲の洒脱なソウル・ミュージックは、多くの人を魅了することだろう。
『Flora and Fauna』からは、ジャズ・ギタリストのNir Felder(ニア・フェルダー)を迎えた“Into the Stratosphere”、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやソロでも活躍するGotchが歌う“The Fog”の2曲がすでに公開中。そのほかの楽曲にも、音楽ファンならワクワクすること間違いなしの豪華アーティストが国内外から参加しており、新作への期待が高まる(詳細は記事の末尾をチェック)。
そんな『Flora and Fauna』のリリースに向けて、Mikikiでは桃井裕範による短期連載がスタート。リード曲が配信されたタイミングで、各曲への想いや制作エピソード、ゲスト・ミュージシャンについてなどを綴る。 *Mikiki編集部
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8月18日に前作から8年ぶりという、何だか8づくしのソロ・アルバム『Flora and Fauna』が発売されるわけだが、僕の周りはいつにも増して慌ただしい。というのも、それに合わせアルバムから先行シングルとして2週間毎に合計5曲を配信リリースしていくという企画もスタートしたからである。
奇しくも6月9日というロックの日に、日本を代表するロック・バンドであるASIAN KUNG-FU GENERATIONのヴォーカリスト・後藤正文/Gotch氏をフィーチャーした“Fog feat. Gotch”を第2弾シングルとしてリリースした。第1弾として先月リリース済みの“Into the Stratosphere feat. Nir Felder”と共にこの場を借りて少し曲を掘り下げてみたいと思う。
Into the Stratosphere feat. Nir Felder
アルバムの中ではかなり早くからできていた曲で、所謂〈鶏が先か、卵が先か〉然り〈できたその曲を弾いてもらうのは彼しか考えられなかった〉のか〈彼に弾いてもらうイメージで最初から曲を作った〉のか、今となっては確かな記憶はない。ただ気づけば曲はできていて、僕はNirに連絡していた。
Nir Felderと僕の出会いは10年ほど前、NYで共通の友人を介したセッションに遡る。当時既にNYで〈ファーストコールミュージシャン〉としてキャリアを築いていたNirの存在は当然知っていたが、実際に一緒に音を出したその時から彼のギターに心底惚れ込んだ。その後自分のファースト・アルバム『Liquid Knots』にも全曲参加してもらった。
今回のアルバムで全面参加をしてくれた渡辺翔太とZak Croxall(ザック・クロクサル)とで組んだリズム・セクションが作る、切れ目なくそれでいて強過ぎず、滑らかな推進力を感じさせるグルーヴ。それに乗せてどこまでも昇っていくようなサウンドにしたかった。タイトル通り、成層圏まで届くような。Nirの透き通るギターによってそれが表現できたと思っている。
アルバムの1曲目であり先行シングル第1弾でもあるこの曲は、まさに13曲の旅への出発進行の合図を柔らかに奏でてくれているのではないかと自負している。
タイトルに忍ばせておいたNirの愛機であるストラトキャスターを見つけて〈ああ、なんて洒落の効いたタイトル、きっとすごくお茶目な人なのね〉と思ってもらえるだろう、という根拠のない自負も合わせて。