(左から)井上司(fox capture plan)、桃井裕範(Potomelli)
 

ソリッドなギターとタイトなリズム隊が幾何学的なアンサンブルを奏で、その上でクセのあるハイトーン・ヴォイスが朗々とメロディーを歌う。ジャズ・ドラマーとしてNYで活躍していた桃井裕範が、6年半ぶりに帰国し始動したのは、みずからギター&ヴォーカルを務める3人組ロック・バンドだった。

〈Potomelli(ポトメリ)〉という、変わった響きを持つ名前(意味は「まったくない」そうだ)の彼らは、2017年からライヴ活動を開始。同年に発表された彼らの初音源“S.O.S”の美しいミュージック・ビデオは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がいち早く見つけ、SNS上で拡散させるなど、耳の早いクリエイターや音楽好きの間で徐々に話題を集めていく。また、新世代ジャズ・トリオ、fox capture planのドラマー・井上司も、そんなPotomelliに魅了された1人。Potomelliのファースト・アルバム『Potomelli』の収録曲“タイムマシン”をTwitterで絶賛し、彼らの躍進に一役買っている。

バークリー音楽大学出身で、桃井と同じくNYで活躍していたジャズ・ベーシストのザック・ クロクサルが在籍し、ドラマーがフロントマンなのにドラムレス。そんな異色のロック・バンドが、名だたるミュージシャン達に愛される理由とは一体何なのだろうか?

今回Mikikiでは、『Potomelli』が3月13日に全国流通盤として再リリースされた節目に、桃井と、先述のツイートをきっかけに知り合ったというfoxの井上による対談を実施。foxとしては、最新アルバム『CAPTURISM』(2018年)のほか、近々では劇半を担当した映画「コンフィデンスマン JP –ロマンス編-」と劇場アニメ「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の公開を控えるなど活躍の場を拡げながら、Every Little Thingや秦基博など、多数のアーティストへのサポートワークも行っている井上。そんな彼はnhhmbase(現在活動休止中)など、fox以前は主にロック・シーンで活動してきたドラマーだ。

対談ではPotomelliサウンドの魅力に迫りながら、共にロックをルーツとしながらジャズ・シーンで活躍するドラマー同士である両者のドラム談義、昨今の音楽シーンに対する見解など、さまざまなトピックで盛り上がった。

Potomelli Potomelli Sound Art Work(2018)

 

琴線に触れたのは、Potomelliの〈日本の良質な歌心〉(井上)

――お2人は初対面だそうですが、SNSでは何度かやり取りをされているそうですね。元々は井上さんのツイートがキッカケだったとか。

井上司(fox capture plan)「そうなんです(笑)。ある時Instagramを見ていたら、Potomelliさんの動画が流れてきたんですね。で、なんの気なしに聴いてみたらすごく良くて。すぐにApple Musicでちゃんと聴いて、その感想をTwitterに呟いたら、それに桃井さんがすぐ気づいてくれて」

桃井裕範(Potomelli「速攻でしたね。嬉しくて、すぐにリプライしました(笑)」

井上「〈あ、本人だ!〉と思って(笑)。それで相互フォローさせてもらったのが最初の出会いです。その後、何度かライヴのお誘いを頂いていたんですけど、あいにく自分のライヴと重なるなどで、なかなか会えずじまいだったんです」

――井上さんは、Potomelliのどんなところが気に入ったのでしょう。

井上「インスタで見かけた動画は“S.O.S”のミュージック・ビデオだったんですが、その映像が素晴らしかったんですよね。それでまず、音を聴いてみたくなった。Twitterには“タイムマシン”のことについて呟いたんですけど、なんていうかアルバム全体を通して耳馴染みが良く心にすっと入ってくるのに、各曲のカラーもちゃんとあって。フィンランドにサテライト・ストーリーズというバンドがいたんですけど(2018年に解散)、彼らと少し通じる部分も感じました。バンド・サウンドとエレクトロの融合具合もすごく気持ち良かったんです。

『Potomelli』収録曲“S.O.S”
 

他にもいろんな要素を感じるんですけど、それがちゃんとポップスのフォーマットに落とし込まれていて。〈日本の良質な歌心〉というか、それが自分の琴線に触れたんだと思います」

桃井「それはすごく嬉しいです。というのも、歌詞にはすごくこだわりがあって。例えば英語の単語を使っていても、わざとカタカナの発音にしているんです」

――それは何故ですか?

桃井「僕は、自分の楽曲を〈海外の人に聴いてもらう〉ということを目的に、英語で歌う必要はないと思っていて。というのも、NYに暮らしながら音楽活動をしていた時期が長かったのもあって、まず海外に対する憧れみたいなものがなくなってしまっているんですよね。

それと、どれだけ英語が話せるようになっても、ネイティヴの言語感覚には近づけないと僕は思っているんですよ。NYに滞在中、ある日本人シンガーと知り合ったんですけど、彼は英語も話せる人で、歌詞も英語で書いていて。僕が読んでも、特に違和感のある英語だとは思わなかったんですけど、ネイティヴの人たちにはやっぱり不自然に聞こえるみたいで。彼のいないところで〈ヘンだ〉って言ってるのを聞いてしまったんですよね(笑)。そこは結構、越えられない壁があるんだなと改めて思う出来事でした」

――以前インタヴューをしたSori Sawadaさんというシンガー・ソングライターも、海外に長く住んでいて同じような気持ちになったと言っていました。

桃井「例えば、僕が日本語の歌詞で変な言い回しをしても、それはそれで自分の中ではOKなんですけど、それをOKと思えるのは母国語だからだと思うんです。でも英語だとそこは判断できないなと思うんですよね。ネイティヴな人が聞いた時に感じる不自然さを、あえて戦略として用いるという方法は、もちろんあるとは思うし否定するつもりもないのですが、僕にはその選択肢はなかったというか」

――最近は、日本語の歌詞のまま海外で受け入れられるケースも沢山ありますしね。〈海外で聴かれること〉を目的として英語を用いる必要は、もはやなくなってきているのかも。

桃井「そう思います。最近はYouTubeでも簡単に古今東西の音楽に触れられるし、言語の壁はだいぶ取っ払われている気がしますね。抵抗がなくなってきているというか」

井上「あと、今日初めてお会いして思ったのは、声がすごくいいなと(笑)。歌っている時と全然違いますよね?」

桃井「よく言われます(笑)。歌っている時より低いですよね」

――最初からその声で歌っていたんですか?

桃井「そうですね。カラオケとか流行っていた小学生の頃はよく行ってたので、そこで確立しました(笑)。そういう意味では、ギターよりもドラムよりも先に夢中になっていたのは〈歌〉かも知れないですね。もちろん、特に習っていたわけでもなくてすべて自己流なんですけど」

――音楽的には、くるりの影響も受けているのかなと思ったのですが。

井上「ああ、僕もそれは感じました」

桃井「あ、ほんとですか? もちろん好きですけど、メチャメチャ聴いていたというほどではないので、もしかしたら岸田(繁)さんが聴いているものと、僕が聴いているものが結構近いのかもしれないです」

 

foxの滲み出てくるようなロック感が好き(桃井)

――桃井さんはfox capture planのことは以前から聴かれていましたか?

桃井「もちろんです。最新作『CAPTURISM』(2018年)も聴かせていただきました。相変わらず〈fox節〉全開という感じで(笑)、期待を裏切らないよなあと。そもそも〈〜節〉というものを持っていることが、すごいと思うんですよね。自分たちのオリジナリティーを確立していて、それが世にちゃんと伝わっているということですから。YouTubeとか観ると、海外のリスナーからもよくコメントが付いていますよね?」

井上「そうなんですよ、ありがたいことに」

fox capture planの2018年作『CAPTURISM』タイトル・トラック
 

――海外でライヴをした時の反応は、どんな感じなんですか?

井上「foxのツアーは主にアジアを回ることが多いんですが、日本よりもストレートに反応してくれるオーディエンスが多い印象ですね。最初は香港と中国をツアーで回ったんですけど、行ったことのない場所ばかりで。〈一体どんな反応が返ってくるんだろう〉〈そもそも俺たちのこと知ってるのかな〉という気持ちのまま行ったのですが、お客さんたちは思っていた以上に日本の音楽をよく知っていて。こっちのドラマもよく観ているみたいなんですよね」

桃井「へえ!」

井上「例えば、foxが担当したTVドラマ『カルテット』の劇中音楽でドラムから始まる曲があるんですけど、イントロを叩き始めた瞬間、それまでバーカウンターで飲んでいた人たちも〈おおっ、『カルテット』の音楽だ!〉みたいな感じでフロアに降りてきてくれて。メチャクチャ盛り上がったということもありました」

――タイムラグとかもほとんどないんですね。桃井さんは、井上さんのドラムに関してはどんな印象ですか?

桃井「僕、ドラマーはいつもフォームを見ちゃうんですよ。フォームのいい人ってハズレがないんですけど、井上さんのフォームはすごく好きですね(笑)。おこがましいですが、見ていてとても気持ちいい。……いきなりマニアックな話ですみません(笑)」

井上「(笑)。嬉しいです。実をいえば、僕自身ドラムは〈見た目〉から入ったというか。最初はニルヴァーナのデイヴ・グロールで、彼の見た目のインパクトに魅了されたんです。いまでこそ、いろんな音楽を〈音〉で判断して好きになることが多いですけど、最初はほぼすべて見た目から入っていましたね(笑)。佇まいとか、叩きっぷりとか。なので、自分自身も叩く時のスタイルはものすごく意識しています。

それに、僕もかつてそういうバンドに在籍していたんですが、ハードコアやハード・ロック、デスメタルとかの界隈のドラムって、変な動きをしていては叩けないんですよ。なるべく無駄な動きを排しながら、かつ派手なドラミングということを追求した結果、いまの自分のスタイルが出来上がったんだと思います」

――いまもご自身のドラミングに、ハード・ロックやグランジなどの要素があると思いますか?

井上「あると思います。最初にfoxに誘われた時は、ジャズをちゃんと学んだことがなかったんですよ。聴くのはものすごく好きだったのですが、よくわからないままピアノの岸本(亮)に呼ばれて、3人でセッションしたんです。その時に、僕がほかの2人に歩み寄ってジャズっぽいドラミングをしようとしたら、〈そんなこと、絶対やらなくていいから〉って言われたんですよね(笑)。〈ロックのままでやってよ。そのミスマッチ感がいいんだから〉って。

それ以来、〈ジャズだったらここでこうするよね?〉的なイディオムには囚われないようにはしています。なので、ライヴの時などは特に、自分の中の〈ロックっぽさ〉が出ている気がしますね」

桃井「僕もfoxを聴いていて、滲み出てくるロック感が好きなんですよね(笑)」

――foxのサウンドにある、ダンス・ミュージックやエレクトロの要素は誰が担っているんですか?

井上「もともとドラムンベースやエレクトロニカのような打ち込みが大好きでずっと聴いていたので、それが反映されている気がしますね。確かfoxで2度目のセッションをした時に、人力ドラムンベースみたいに叩いた瞬間があったんですよ。それにメンバーが手ごたえを感じたようで、僕のそういう要素を引き出す楽曲を持ってくるようになったんです。

自分で楽曲のプログラミングをやりはじめたのは、結構最近なんですよ。foxを始めたばかりの頃は、曲とか全然作ったことがなかったんですけど、ドラマの劇伴をやらせてもらうようになって、それで作りはじめたら楽しくなって。それからはどんどん作るようになっていきました」

fox capture planの2018年作『CAPTURISM』収録曲“We Are Confidence Man”
 

――桃井さんは、元々はドラムではなくギターから楽器を始めたそうですね。

桃井「そうなんです。でも、バンドってギター人口が圧倒的に多いじゃないですか。僕自身はバンドがやれれば何でも良かったので、最初はベースをあてがわれたんです。でも、スタジオでいざ練習してみたらドラムが下手くそで(笑)。カウントのテンポと入った時のテンポがまるで違う、みたいな。

それで、休憩中に遊びで僕がドラムを叩いて、ドラムの彼がベースを弾いてみたところ、そのほうがすんなりいったんですよ(笑)。ドラムって叩けば音が出るし、ある意味ではコンダクターというか、自分が音楽をコントロールできる楽しさみたいなものにも目覚めて。そこからずっとドラムをやっていますね。もし、その時のドラマーが普通に上手かったら、今頃は普通にベーシストだったかもしれないです(笑)」

――そう思うと不思議ですよね(笑)。桃井さんは当時、好きなドラマーなどいましたか?

桃井「元々〈バンドができれば何でもいい〉と思っていた人間ですし、本格的にドラムをやるようになったのもすごく遅かったんです。大学でジャズ研に入り、そこで打ちのめされたのがキッカケだったので、特に強く影響を受けたドラマーはいなくて。

ただ、当時はロックもよく聴いていたので、チャド・スミス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)は最初に〈すごいな〉と思ったドラマーですね。高校生の頃は、レッチリやエアロスミス、オアシスのようなバンドのコピーをしていました」

井上「僕もレッチリとかオアシスはやってましたね(笑)」

 

リヴォン・ヘルム(ザ・バンド)のドラムより、歌に惹かれた(桃井)

――お2人ともジャズ・シーンでドラマーとして活躍されていますけど、ルーツはロックという共通点もあったのですね。桃井さんがジャズ・ドラマーとして活動するようになった経緯はなんだったのでしょう?

桃井「高校の時にやっていたバンドでプロを目指していたんですけど、進路の問題などいろいろあって僕以外のメンバーが全員辞めてしまって。〈このままでは音楽ができなくなる〉と。〈ちゃんとドラマーにならなきゃマズイ〉と思って、そこから真剣に習いはじめたんですよね。そしたらジャズの沼にハマり、気づいたらアメリカに留学してたんです(笑)」

井上「その行動力がすごいですよね」

桃井「最初はもう、NYのコンテンポラリー・ジャズにどっぷり浸かっていました。〈これこそジャズの最高峰だ〉と信じてた時期もありましたね。その反動があって〈歌モノをやりたい〉という気持ちが徐々に芽生えてきて。ただ、その時は自分が歌うことは考えてなくて、ヴォーカリストのいるジャズ・バンドがやりたいと思っていたんですけど、日本に帰ってこなきゃいけなくなって頓挫しちゃったんです。

その後もシンガーに曲を書いたりディレクションしたり、シンガーのいるバンドのライヴを観たり、自分がシンガーの後ろで叩いたりしているうちに、〈自分だったらどう歌うか?〉みたいな気持ちがどんどん募ってきてしまって(笑)。だったら自分が歌いたい曲を書いて、自分で歌おうと。誰かに歌ってもらうよりは、自分で歌ってすべての責任を持とう、と。そう思って始めたのがPotomelliなんです」

――Potomelliは、ドラムレスという編成もユニークなんですよね。

桃井「おそらく僕は、バンドにドラマーがいたらいろいろと口を出したくなっちゃうと思うんですよ(笑)。バンドはやっぱり、ある程度平等なほうがいいと思うし。そのバランスが崩れないためにもドラムレスがいいのかなと。ライヴではサポート・ドラマーが入りますし、リハーサルでサポート・ドラマーが提案してくれたドラムパターンを採用させてもらうこともあるので、決して独裁的にやっているわけじゃないんですけど(笑)」

――ドラムを叩きながら歌う、という選択肢はなかったんですか?

桃井「実は、帰国してすぐやってみたことがあるんです。僕はザ・バンドのリヴォン・ヘルムが大好きなんですけど、彼のドラムよりもまず歌に惹かれたほどで。以前、ルーツ・ミュージック的な曲で、ヴォーカル&ドラムを担当するライヴをやったこともあって、その時は〈ヴォーカル&ドラム〉は〈アリ〉と思ったんですけど、Potomelliのような音楽だとさすがにちょっと違うのかなと」

――確かに似合わないかも(笑)。Potomelliでは、桃井さんの中の〈ジャズ的な要素〉も意識的に排除しているのかなと思ったのですが。

桃井「ジャズだけじゃなく、ブラック・ミュージック、ひいてはUS色を結構出さないようにしています。ジャズとヒップホップやR&Bというのはパルスが同じ方向性で、親和性もあると思うし、最近のジャズ・ミュージシャンは好む好まざるに関わらずヒップホップやR&Bを大抵通っていますけど、自分はあえてそこに行きたくなかった。

そのためにドラムもすごくシンプルにしたり、コード進行も4コードにしたり。もしかしたらそれも、自分が一度そこにどっぷり浸かったからこそ〈いまはやる必要ないな〉と判断したのかなと思います」

『Potomelli』収録曲“タイムマシン”
 

――でも、最初のうちはNYへの対抗心もあったとか。

桃井「そうなんです。というのも、さっき話したように日本に一時帰国して、戻ろうとしたらVビザが下りなくてアメリカへは入れなくなったんですよ」

井上「ええ(笑)!」

桃井「荷物を全部NYの部屋に置きっぱなしで。だから、しばらくはNYに対する憎しみがありました。突然彼女にフラれて、最初は憎んでいたけど時間をかけて許せるようになっていった……みたいな感じ(笑)。〈自分も至らないところがあったよな〉みたいな。

もうだいぶ立ち直りましたけど、例えば向こうで活躍している友だちを見るのも辛くて。しばらくジャズを聴けない時期もありました。そのタイミングと、自分がまた歌モノのバンドをやりたいと思ったタイミングが重なったのもあって、いわゆるNYサウンドから離れた気がします」

 

好きな音楽をジャンルではなく、アーティストや楽曲で答える人が多くなった(井上)

――ところで、昨今の音楽シーンについてお2人はどんなふうに感じていますか?

桃井「NYでは難しい変拍子、例えば15拍子とかが極まっていった反動で、一時期ポップになった瞬間があって。それこそロバート・グラスパーやエスペランサや、最近だとスナーキー・パピーとか、インストをやっている人たちもポップな方向へシフトしていきましたよね。それでいてチージーではない……ダサくないというか。その塩梅が素晴らしいんですけど、そのへんは僕も間近で見ていて影響を受けました。実験的で難解な要素と、キャッチーな要素がせめぎ合うような音楽は、いまも惹かれます。

ただ、最近は自分から進んでそのへんの音楽を掘ることはしなくなってきていますね。NYはまだ友人が何人も住んでいるので、たまに〈誰かおもしろい人いた?〉みたいに訊くことはありますけど。そもそもアメリカの音楽を聴く比重は減って、いまはUKのものとか、K-Popをよく聴いているんですよ。自分の好みが変わってきているんでしょうね」

井上「日本でもそうですが、最近はジャンルとかあまり関係なく〈いい〉と思う音楽を積極的に取り入れていく人たちがすごく増えた気がしますね。サブスクやYouTubeの普及も関係していると思うんですけど、〈何が好きなの?〉という話になった時に、ジャンルではなくアーティストや楽曲で答える人が多くなった気がする。それは、カルチャー全体ではいい方向へと発展していると僕は思いますね。

ちょっと前からサポートしているアーティストは、もともとロック・バンドのギター&ヴォーカルだったのが、EDMのトラックメイカーとして活動を始めたんです。僕はそこにライヴのサポート・ドラマーとして入っているのですが、バキバキのEDMとロックな要素を融合させて、キャッチーかつポップな楽曲に落とし込んでいるんですよ。それが、いままでEDMを聴いてなかった人にも聴かれている。おそらく日本だけじゃなく、世界中でそういう動きが起きているんでしょうね」

――そんな中で、特に気になっているアーティストはいますか?

井上「そうですね……ここ何年か注目しているのだと、ダニー・マッキャスリン。今年も2月に来日していましたが、去年の頭くらいにもBlue Note Tokyoでライヴをやっていて。その時はドラムがマーク・ジュリアナで、すごく良かった。それもあって、気づくと彼のアルバムを聴いていましたね。あと、ケンドリック・スコットも最近はよく聴いています。間もなく出る新譜(ケンドリック・スコット・オラクル名義の『A Wall Becomes A Bridge』)も楽しみですね。

そういえば松任谷由実さんも聴き直しています。もちろん昔から知ってたんですけど、最近彼女のバックバンドに知り合いの同世代のミュージシャンが何人か参加していて。それでライヴを観にいく機会があったんですけど、楽曲と演出の凄さに圧倒されました。その時代、その時代を象徴する曲もたくさんあって、なおかつ古びないのはすごいなと。しかも、彼女のアルバムを聴けば、相当なジャンルを網羅できるじゃないですか。改めてその偉大さを感じています」

桃井「僕は、音楽というより活動の仕方やアティテュードという面で、アンダーソン・パークはつねに気になっていますね。ドラマーであり、ヴォーカリストでもあり。Tiny Desk Concertでのライヴ映像も本当に素晴らしくて、ああいうのを観ると悔しくなりますね(笑)。なんだかんだ言って、ドラム&ヴォーカルをやっている人は意識してしまいますよ、デイヴ・グロールもしかり、フィル・コリンズしかり」

――じゃあいつかPotomelliでも、ドラムを叩きながら歌う桃井さんの姿を観られるかもしれないですね(笑)。

桃井「その可能性は、なきにしもあらずです(笑)」

 


Information

■Potomelli

Poto-mellow #1
4月23日(火)東京・下北沢GARAGE
共演:Mime、オーニソロジー
開場/開演:18:00/18:30
前売り/当日:2.500円/3,000円
http://www.garage.or.jp/15872


■fox capture plan

PLANNING TOUR 2019
6月1日(土)大阪・246ライブハウスGABU
fox capture plan × NEIGHBORS COMPLAIN

6月2日(日)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
fox capture plan × the band apart

6月8日(土)宮城県 仙台HOOK
fox capture plan × toconoma

6月9日(日)埼玉県 北浦和KYARA
fox capture plan × toconoma

6月28日(金)広島県 CLUB QUATTRO
fox capture plan × グッドラックヘイワ

6月30日(日)福岡県 the voodoo lounge
fox capture plan × グッドラックヘイワ

7月13日(土)東京都 キネマ倶楽部
fox capture plan × フレンズ

『PLANNING TOUR 2019』コメント動画