NYで活躍してきたジャズ・ドラマー、 桃井裕範。彼の8年ぶりとなるソロ・アルバム『Flora and Fauna』が2021年8月18日(水)にリリースされる。フロントマンを務めていたPotomelliではドラムスを離れ、ギターを弾きながらメロディアスなインディー・ロックを歌っていたが、今回はふたたび流麗なジャズ・ドラミングを披露。全13曲の洒脱なソウル・ミュージックは、多くの人を魅了することだろう。
『Flora and Fauna』は、すでに参加曲“Fog”が公開されているGotchをはじめとして、音楽ファンならワクワクすること間違いなしのアーティストが国内外からフィーチャーされている(詳細は記事の末尾をチェック)。リード曲第4弾として発表された“Tail of a Comet”には、NYのギタリスト、Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)が参加。色鮮やかなギター・サウンドが、聴き手の意識を〈ここではないどこか〉へと運んでくれる。
桃井が『Flora and Fauna』からのリード・ソングをリリース毎に解説する短期連載〈桃井裕範の『Flora and Fauna』図鑑〉。第3回は、“Tail of a Comet”の制作エピソード、さらにギラッド・ヘクセルマンの素晴らしきプロフェッショナリズムについて綴ってくれた。 *Mikiki編集部
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Tail of a Comet feat. Gilad Hekselman
この曲をジャズと定義するかどうかはリスナーによって分かれると思うが(そしてそんなことはどうでもよい)、参加してくれたアーティストは紛れもないジャズ・ミュージシャンである。“Tail of a Comet”(彗星の尾、の意)というタイトルに相応しい、宇宙に広がるサウンドを曲に与えてくれたのが今回フィーチャリングしたギタリスト、Gilad Hekselmanだ。
Giladとは幸運にもNYで何度も共演する機会に恵まれたのだが、僕が彼が最初に出会ったときの経緯は、僕のバンドのライブに参加してくれるはずだったNir Felderが急遽出演できなくなり、代役を探していたところ紹介された、というものだった。NirのトラでGiladを捕まえるというなんともNYらしい贅沢な人事だったわけだ。そのライブは映像として残っているので久しぶりに観てみたが、彼のプレイはいま聴いても本当に素晴らしかった。以下に貼っておく。
話を今回の曲に戻そう。ゆったりと大きく呼吸するドラムのグルーヴに乗せて、今回は渡辺翔太くんにキーボードではなくシンセベースを弾いてもらい、そのほかの音はすべて僕が自分で入れた。そしてGiladのギター。つまりこの曲は実質トリオということになる。当初、僕からのリクエストはソロを弾いてほしいということだけだったのだが、彼の提案でギターのバッキングも重ねることにした。その結果、宇宙船は太陽系をとうに抜けて遥か遠くの銀河まで旅することができたのだから、彼には感謝しかない。
Giladとのやり取りで印象に残っていることがある。僕がまだNYに住んでいた頃、お互いに連絡を取り合うときはいつも、彼からの返信がとても早く助かっていた。ミュージシャンといってもやはり千差万別、殊にファースト・コールのアーティストにおいてはGiladのように連絡がマメな人はむしろ少数派だった記憶さえある。
彼のプロフェッショナリズムにいつも感銘を受けていたので、あるときそのことを本人に伝えると〈これが俺のスタイルなんだ。こうしてNYでやってきたんだ〉と言われたのをいまでも覚えている。彼ほどの実力を持ったアーティストが、自分のミュージシャンシップを最大限にする努力をさらにしていたという事実。それは僕の音楽に対するアティテュードに、以後大きな影響を与えることとなった。そして今回〈アルバムに参加してほしい〉とGiladに久々に連絡をしたときにも、快諾の返事がすぐに来たことは言うまでもない。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2021年8月18日(水)
品番:GTXC-177
価格:2,750円(税込)
配信リンク:https://fanlink.to/FloraandFauna
TRACKLIST
1. Into the Stratosphere feat. Nir Felder(New York)
2. Skin Deep feat. 佐瀬悠輔
3. Fog feat. Gotch
4. Tail of a Comet feat. Gilad Hekselman(New York)
5. Gray Rhino feat. 角田隆太(from モノンクル)
6. Touches feat. なみちえ and Potomelli
7. IHDS
8. Bury the Hatchet feat. 松丸契
9. Gemini feat. Alan Kwan(香港)
10. Water Temple feat. Gold Mountain(香港)
11. Regression feat. MELRAW
12. Through the Seasons
13. Hands feat.ミゾベリョウ(from odol)