(左から)田中そい光、堀胃あげは、みと
 

東京でのライブハウスや路上を中心に活動してきた、一風変わった名前の3ピース・バンド、黒子首(ほくろっくび)。無駄を極限まで廃したシンプルかつクールな演奏に、ヴォーカル・堀胃あげはの、時に透き通り、時にハスキーに濁る歌声と歌詞が、聴く者の心をサクッと刺してくる。2021年7月27日(火)にリリースされる初の全国流通盤『骨格』について、堀胃あげは(ギター/ヴォーカル)、みと(ベース)、田中そい光(ドラムス)に話を訊く。

黒子首 『骨格』 チーム子ども(2021)


 

メンバー全員に首にほくろがあったので

――個性的なバンド名の由来から教えてください。

堀胃あげは「このバンドを組んだ時に、海外展開を視野に入れて活動しようということになり、海外の方が興味のあるものってなんだろう?って考えた時に〈日本の妖怪って面白いよな〉という話になり。そこから〈ろくろっ首〉を選んで、メンバー全員に首にほくろがあったので黒子首(ほくろっくび)という名前になりました」

――3人のメンバーのお名前も個性的ですけど、それぞれメンバー2人が残る1人のことを他己紹介してもらってもいいでしょうか? ではまず、みとさんと田中さんが堀胃さんを紹介してください。

田中そい光「ヴォーカルとギターを担当している堀胃さんは、全曲の作詞作曲を担当していて、バンドの発起人であり中心人物です。性格は暗い人だと思います(笑)」

みと「彼女の声に惹かれて一緒にやってみようと思いました。私は結構声に好き嫌いがあるんですけど、好きな声だったので」

堀胃「そんな話知らなかった(笑)」

田中「私は彼女の曲に惹かれました。ソロで活動していた頃から存在は知っていて、この人ヤバいなってずっと思っていて。あんまり聴いたことがないような音楽をする人だったんですよ。ジャンルを訊かれてもちょっと答えられないような」

堀胃「ありがとう(笑)。メンバーなのにファンの方とあまり変わらない感想なんだなって思いました(笑)」

――ファンもメンバーもそう思うってことはやっぱりそれが魅力なんでしょうね。じゃあ次は堀胃さんと田中さんがみとさんを紹介してください。

堀胃「面倒臭いことが嫌いな人で基本何も考えてないんですけど(笑)、意外と繊細なところもある人です」

田中「一番バンドを客観的に見てくれている存在ですね。結構ここ(堀胃と田中)がモメるんですけど、そういう時も見守ってくれたり」

みと「見学してます(笑)。さすがに長いなと思う時はアドバイスをして終わりにさせます」

堀胃「演奏も、バランスを取るのが上手で、誰かが下手こいても調整できる力があると思います。例えばテンポが速くなった時とか遅くなった時、聴いてる人にはそう感じさせなくするようなバランスメーカーです」

みと「そうなんだ(笑)」

――じゃあ堀胃さんとみとさん、田中さんはどういう人ですか?

堀胃「曲に感情の起伏を付けてくれるドラマーだと思います。それによって私の歌も持ち上がったりします。彼のドラムを聴くと、曲に感情移入しやすくなるんですよね」

みと「賑やかな人なので、明るい気持ちにはなります」

堀胃「スタジオでも1人でしゃべってますね」

田中「それは2人が話を聞いてくれなくなっただけでしょ」

――じゃあインタビューされるのに向いてるかもしれないですね。

堀胃「でもずっと支離滅裂なことをしゃべってるので、別に向いているわけではないかと」

一同「(笑)」

 

ポップであれ

――黒子首はライブハウスでのライブ以外に、路上でもライブをやっていたそうですね。

堀胃「今はコロナでできないんですけど以前はよくやっていました。お客さんが100人くらい集まる日もあれば0人の日もたくさんあって。でも基本は0人でしたね」

――そういう時は何をモチヴェーションに頑張ってきたんですか?

堀胃「〈とにかく聴いてくれ〉という思いだけでやれました。やっぱりやってる理由は誰かにちょっとでも届けたいからであって。ライブハウスでのライブもやってたんですけど、そのチケットを売るためにも路上でライブをしていました。そうしているうちに、たまたま見てくれていた方がSNSに動画を投稿して、それがちょいバズを起こす奇跡があったりました」

――黒子首というバンドに活動方針はありますか?

堀胃「その時々によって迷うこともたくさんあるんですけど、今回のアルバム『骨格』をリリースするにあたっては、〈ポップス〉を意識して作りました。〈ポップであれ〉、老若男女広く大衆に向けてということですね。元々は、自分の内側を掘り進めたような内向的な音楽だったんですけど、それじゃあ届くものも届かないなと薄々感じていて。そい(田中)からもポップスに昇華したら面白そうと言われてて、いろいろ勉強しているうちにちゃんとポップスが好きになれたので、今回はそういうアルバムを作ろうという気になりました」

――具体的に何を変えました?

堀胃「自分だけが歌えていたものをみんなが歌えるようにしたっていうのが大きいかもしれないですね。分かりやすいメロディー、かつ自分の好きなメロディーで」

――黒子首が他のバンドに比べて抜きん出ているところって何だと思いますか?

田中「今回の『骨格』はサポートの方にも入っていただいて、いろんな楽器も入ってるんですけど、これまでの作品は3人だけ、ベースとドラムとアコギとヴォーカルしか入れてなかったんです。その時期があるからこそ、無駄を少なくして〈ヴォーカルを立たせる〉ということを軸としていて。〈バンドだけど引き算できちんと考えられる〉というのは、このバンドの一番強いところなのかもなって思います」

――その軸にはいつも堀胃さんの歌があるからですか?

田中「そうですね。ヴォーカルが堀胃さんだからできる事です」

堀胃「嬉しいですね(笑)」

田中「よくみとと〈このバンドのヴォーカルってすごく良いよね〉って言われることは、我々リズム隊への褒め言葉でもあるなって話をします」

みと「そうですね。あくまでメインはヴォーカルだと思ってます」

――では3人としてはどういうところを聴いてもらいたいですか?

堀胃「個人的には歌詞を聴いてもらいたいです。それから、以前から黒子首を知ってくださっている方には、前からどう変わったかっていうのも聴いてほしいです」