私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。
そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 ＊Mikiki編集部
【アーティストと音楽関係者が選ぶ〈コロナ時代の1曲〉】記事一覧はこちら
鈴木慶一
日本語によるロックの先駆的な活動を展開した〈はちみつぱい〉を経て、〈ムーンライダーズ〉を結成、76年にアルバム『火の玉ボーイ』でデビュー。バンド活動の傍ら多数のCM音楽、『MOTHER』『MOTHER 2』等のゲーム音楽、楽曲提供、プロデュースに関わり人々に大きな影響を与えてきた。ソロ・アルバム『ヘイト船長とラヴ航海士』でレコード大賞アルバム賞を受賞。映画音楽では北野武監督の「アウトレイジ〜最終章」等で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。2021年、ムーンライダーズはデビュー45周年を迎えた。
コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?
Lo’Jo “Black Bird”（2020年作『Transe De Papier』収録）
REAL WORLDからのメールマガジンで〈Songlines Music Awards 2021 - The Nominees〉ってところを押したら、この曲が流れてきた。Lo’Joは全く知らなかったけれど、アルバムもサブスクリプションで調べていくうちに、この曲の入ってる新譜を購入するにいたる。『Transe De Papier』だ。
サブスクの使い方は最近は発見用、それは流しっぱなしにして、いい曲やミュージシャンを見つけるというもの。そして購入。去年からずっとそうだ。1曲から繋がってラジオのようにプレイリストがずっと流れる。それはともすると一期一会、気になった曲はお気に入りにするか、間に合わないときはShazamる。結果、あちこちのアプリケーションに気に入った曲が点在する。
圧倒的に2020年春から、聴く音楽の量が増えた。外で飲めないし、サッカーも出来ない。居職、蟄居、在宅ゆえの好展開だ。サブスクリプションには意外な、まさかな曲があったりする。手に入らない音楽とか。例えば驚いたのは、Congress-Woman Malinda Jackson Parkerがあった。『Songs In The Key Of Z』（2000年）というアウトサイダー・ミュージックとでも言おうか、変わった曲ばかりのコンピレーションで2000年を過ぎた頃に知った。
で、“Black Bird”だが、ミニマルなピアノ、哀愁に満ちたコード進行に、ラップのような語りのようなフランス語でLo’Joの声が乗る。私はラップの新たな地点と感じた。
アルバムの他の曲は、いろんな国のサウンドが入り交じり、女性コーラスが効果的に使われている。初期のルイス・フューレイのようだ。
そして私の最新のブームは、小さなスピーカーを階段に置いて、マックス・リヒターの“SLEEP 8時間ヴァージョン”を流し、各フロアにかすかに流れるそれを聴きながらうろうろしたり片付けたりを繰り返す事だ。〈流して〉が今の私の流行である。
鈴木慶一萬円札
RELEASE INFORMATION
THE BEATNIKS 『THE SHOW YOHJI YAMAMOTO 1996 S/S COLLECTION MUSIC BY THE BEATNIKS』 Columbia（2021）
90年代中期、世界的ブランドYohji Yamamotoのパリ・コレクションのために、THE BEATNIKS（高橋幸宏 × 鈴木慶一）が書き下ろしたショー音楽を収録した作品が、CD盤ならびにアナログ盤で復刻。
リリース日：2021年6月23日
フォーマット：CD／LP
■CD
品番：COCB-54332
価格：3,300円（税込）
■LP
品番：COJA-9421
価格：4,180円（税込）
TRACKLIST
1. QU,ATTENDS-TU?
2. yyyt.@ks.-001
3. yyyt.@ks.-005
4. yyyt.@ks.-003
5. yyyt.@ks.-002
6. yyyt.@ks.-007
7. yyyt.@ks.-006
8. yyyt.@ks.-009
9. yyyt.@ks.-0010
10. yyyt.@ks.-008
11. TU NE SALIT PAS LES MAINS.
