インタビュー

鈴木慶一 × ゴンドウトモヒコ 対談――破壊的創造を2人で実現させた「MOTHER」サントラのセルフ・カヴァー

鈴木慶一『MOTHER MUSIC REVISITED』

セルフ・カヴァーのテーマは、なんと〈破壊〉! いったいどうなる?

運命の導きにより重要な意味合いを増す「MOTHER」の音楽

鈴木「21世紀になってから、いつかはやりたいなと……。死ぬまでにやりたいプランのひとつだったんですけどね(笑)」

 鈴木慶一がそう語るのは、自身のミュージシャン生活50周年を記念してリリースされる新作『MOTHER MUSIC REVISITED』――今も伝説的に語り継がれるゲーム「MOTHER」の音楽をセルフ・カヴァーしたアルバムである。

鈴木慶一 『MOTHER MUSIC REVISITED』 コロムビア(2021)

 89年7月に任天堂からファミリーコンピュータ用ゲームとして発売された「MOTHER」は、糸井重里が企画・設定・全シナリオを手掛け、当時の〈ゲームのお約束〉をひっくり返したことで話題を呼んだ名作シリーズ。鈴木慶一と田中宏和による音楽を含め、今も熱狂的な支持者が多いことで知られている。

鈴木「数年前にはアメリカから十数人のファンが、うちの事務所に押しかけたことがありました。作った頃はそんなに実感はなかったんですけど、21世紀になってから若いバンドと対バンした際、大体皆さん80年代生まれで、私と話すときに、まずムーンライダーズ聴いてました! ……ではなく『MOTHER』やってました!って最初に言われるんです(笑)。それで再認識したところはありますね。更には今、YouTubeを検索すると『MOTHER』の曲を世界中の人がカヴァーしてくれている。ありがたいことです」

 なぜ、これほどまでに「MOTHER」の音楽は愛されるのか? その秘密は、通常の劇伴とは異なる意識で作られたからかもしれない。

鈴木「映画は内容によって観客がある程度限定されますが、ゲーム音楽の方はコマーシャルの音楽を作るのに似ていて、誰もが見たり聞いたりするものだと思うんです。子どもが家でやっていれば、親の耳にも入りますし。そういう音楽を非常に大真面目に作りたいと思って取り組みました。もちろん、他の音楽が不真面目というわけではありませんが(笑)」

 

 実際のゲーム内ではファミコンの限られた同時発音数(3音!)で鳴り響いた鈴木の音楽だが、制作後に採算度外視で海外のミュージシャンも起用したロンドンの有名スタジオでサウンドトラックをレコーディング。ゲーム発売の翌月に『MOTHER オリジナル・サウンド・トラック』としてリリースされた。このアルバムは、鈴木の人生のおいても大切な1枚となっているという。

鈴木「86年からムーンライダーズが休止してたんですね。でも、みんなソロ・アルバムが出来たら、また一緒にやろうかなと漠然と考えていたのに、私だけ出来なかったんです。でも『MOTHER オリジナル・サウンド・トラック』を聴いた岡田徹君が、〈これは、はっきり言ってソロ・アルバムだよ!〉って言ってくれて。それがムーンライダーズを再開するきっかけなんです」

 こうした偶然――いや運命の導きにより、「MOTHER」の音楽は鈴木自身にとって重要な意味合いをもつようになった。そう捉えるほどに今回の『MOTHER MUSIC REVISITED』の存在意義が際立つ。

鈴木「タイトルは色んな候補がありましたけれども、〈MOTHER〉だけだとゲームだと勘違いされてしまうのでMUSICを付けました。REVISITEDと付けたのはボブ・ディランの『Highway 61 Revisited』(邦題:追憶のハイウェイ 61)をイメージしたんですよ。選曲ですが、89年のロンドン・レコーディング版と全く同じ曲順で、同じ曲をカヴァーしました。今になってあのアルバムを聴き直してみると、完成度が高いなと……。あの時はバブル期だったんですね。自分も若かったし予算もあったわけです。そうではない今、さあやるぞ!と言ったはいいものの足取りは重かった。世界中にファンやマニアがいることを考えすぎちゃったのもありますね。でもある時、誰かミュージシャンの本を読んでいたら、熱狂なるファンのためではなく、自分のために作ればいいんだと書いてあって、そこから気持ちが切り替わったね」

 録音は共同プロデューサーを務めたゴンドウトモヒコのスタジオで行われた。鈴木とゴンドウは、No Lie-Senceやビートニクス、NHK Eテレの人気番組「ムジカ・ピッコリーノ」での共演でも知られる仲だ。

鈴木「ムーンライダーズの時はデモテープを作りますけど、ソロとかNo Lie-Sense(KERAとのユニット)のレコーディングでは青写真を持っていかないんですね。ゴンドウ君のスタジオのマジックがあって、楽器が沢山あるので、今日はこのウクレレ触ってみようかなって弾いていると曲が出来たりする(笑)」

ゴンドウ「慶一さんが楽器を持ち出したら、いつでも録れるようにマイクを用意してジャックに繋ぐ。はたまた歌いだしたら、あとで何だっけ?とならないように、とりあえずiPhoneで録音しておくのが結構重要で(笑)。物を作るっていうのは、やっぱりそういうことなんだなと僕も学ばせていただきました」

鈴木「いま作っている曲とは別の曲の間奏を思いついたから、これだけ録っておいてとかね(笑)」

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