「自由とは大変なものなんです」――こだわりのインプロが生む緊張感とワクワク
ムーンライダーズの新作『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』は、昨年6月に2日間で録音した10時間の音源を編集した6曲を収録した、50年近い活動歴で初のインプロビゼイションによる作品。自らを「インプロ初心者」という鈴木慶一、白井良明、佐藤優介の3氏に新作について伺った。
「予兆はあった。前作『it’s the moooonriders』の最後の曲とか、最近のライヴとか」(鈴木)
「この人(鈴木)がここ何年かインプロが好きなんですよ。ムーンライダーズでも徐々にやろうとしてるのがよくわかった」(白井)
「はちみつぱい(ムーンライダーズの前身バンド)もそういうところがあったけど、あれはジャムなんだね。どっかコードやリズムが決まっていく。今回のはそれと違う。フリーなの」(鈴木)
録音スタジオにある楽器をありったけ用意し、2月に急逝した岡田徹(キーボード)も含む全員で何の準備もせず演奏に向かった。様々な楽器の音が自由に飛び回る、その緊張感とワクワク感が楽曲から伝わってくるのが新作の醍醐味だ。
「岡田くん、前作ではあまり参加できなかったけど、このアルバムは本当にいいプレイをしている。後で聴いて〈誰が弾いてんの?〉って思うと岡田くんなんだ。譜面を追わなくていいってことで解放されたんだろうね」(鈴木)
「譜面がないしデモ音源があるわけじゃないから自由なんですけど、決して楽じゃないんです。岡田さんは本当に自由で、それが突破口になった瞬間もある」(佐藤)
岡田との最後の制作は鈴木たちにとって忘れがたいことだろう。ファンにとっても同様だ。当初は全曲インストだったが鈴木博文(ベース/ヴォーカル)の提案で何曲か歌詞をつけた。だがその言葉も散文的だったり意味不明だったりと、作品の意図を裏打ちしている。
「こういうインプロビゼイションは自己満足的に終わる場合もあるんで、これをファンの方がどう思うかは多少考える。それを聴いてもらってというところがあるから、ミックスすることによって、違うことになって行く」(鈴木)
ミックスは鈴木、白井、佐藤、夏秋文尚(ドラムス)に、エンジニアのDub Master Xで分担。仕上がりに多様性を加えている。
「ミックスが創造ですよね。違うもの作れるから」(白井)
「完成形がない。何を作ってもいい。自由ってそういうもの。自由って大変なんです(笑)」(鈴木)
自由について再考させる問題作でもある本作は、ムーンライダーズの新たな真骨頂と言えるだろう。
LIVE INFORMATION
moonliders LIVE
2023年6月25日(日)東京・恵比寿 ザ・ガーデンホール
開演:17:00
https://gardenplace.jp/culture/hall.php
TOWER RECORDS NFORMATION
【CD購入者対象】
『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』発売記念トークイベント&上映会 in 福岡
2023年5月19日(金)福岡・ESPエンタテインメント福岡 ライブホールEMY
開演:19:00
出演:ムーンライダーズ
MC:栗田善太郎
※先着で計80名様、詳細はHPより
https://columbia.jp/artist-info/moonriders/live/82889.html