ジェイク・バグが4年ぶりのニュー・アルバム『Saturday Night, Sunday Morning』をリリースした。その類まれなるソングライティングの才とブルージーな節回し、市井の人々の息吹を掬い取った歌詞からボブ・ディランやラーズのリー・メイヴァースらを引き合いに出され、賞賛を受けてきたジェイク。そんな彼が今作では、これまでのオーセンティックなロック・サウンドを離れ、現代的なプロダクションのもとでダンサブルなサウンドに挑戦している。いったいジェイク・バグに何が起こったのか。驚くべき変化の背景を探る。 *Mikiki編集部
JAKE BUGG 『Saturday Night, Sunday Morning』 RCA(2021)
ロックのヴェテランから寵愛された神童
いまから9年前、19歳でレコード・デビューを飾ったジェイク・バグに対しては、かつての大物アーティストたちとの比較や、彼らの再来じゃないかという歎美、絶賛で溢れ返っていた。実際ジェイクはビートルズやオアシス、ボブ・ディランといった先輩アーティストたちからの影響を認めていたし、時代を超えたヴィンテージなサウンド、地に足のついた音楽に対する姿勢など、どこを取っても若さに似合わぬ老成ぶりが印象的だった。
もちろんあの端正なルックスやロックスター然とした佇まいに心をときめかせる女子は少なくなかったし、労働者階級の若者らしい日常を歌い上げた楽曲は、同世代のリスナーから大いに共感を得ていたが、同時に、年配のおじさま方から多大な評価を勝ち取っていたのも事実だろう。オアシスのノエル・ギャラガーから寵愛を受け、彼やストーン・ローゼズのツアーに帯同するなど、音楽業界内での評価も当初から高かったし、2013年のセカンド・アルバム『Shangri La』に至っては、あの御大リック・ルービンがプロデュース。レッチリのチャド・スミスがゲストで参加するなど、ヴェテラン勢から愛を注がれまくって音楽活動をスタートさせ、そうしたビッグ・ネームに反応する年季の入った音楽ファンからの支持を勝ち取っていた。という流れを思うにつけ、彼のニュー・アルバムには、誰もが〈えっ、マジで?〉と驚くのではないだろうか。