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大型フェスティヴァル〈FUJI ROCK FESTIVAL〉と〈SUMMER SONIC〉が、すぐそこまで近付いてきている。ただ野外で楽しむために、あるいはヘッドライナーを観るためにフェスに参加する人も多いだろう。しかし、もしあなたが新しい音楽との出会いを求めているタイプであれば、ここでもっとも話題となっている注目アーティストやニューフェイスたちを少しばかり紹介しよう。ぜひ参考にしていただきたい。
〈FUJI ROCK FESTIVAL〉の注目アーティスト
コン・ブリオ
サンフランシスコを拠点に活動するR&Bバンド。マイケル・ジャクソンの聴かせどころのあるポップさと、スライ・ストーンの多民族的でホーンが効いたファンクの両方からインスピレーションを受けている。これまでにEPしかリリースしていないが、すでにヨーロッパ・ツアーを経験しており、腰を軸にお尻をフリフリ、ソウルフルに歌うヴォーカルのジーク・マッカーターが中心となって活力に満ちたライヴを披露し、一躍有名になった。
デフヘヴン
同じくサンフランシスコ出身のデフへヴンは、メタルの世界で話題になっている。もともとはライズ・オブ・カリギュラというグラインドコア・バンドのメンバー2人が結成したバンドで、ブラック・メタルに影響を受けながらも、ポスト・ロックやシューゲイザーの要素も併せ持って変化を遂げた(ベーシストのニック・バセットは人気シューゲイザー・バンド、ワーのメンバーでもある)。2015年作『New Bermuda』は、基本的にはあまりメタル推しではないウェブサイトであるStereogumやPitchfork、Consequence Of Soundをはじめ、多数のメディアで取り上げられた。
ジェイク・バグ
イギリス出身のシンガー・ソングライターである彼も高く評価されており、ボブ・ディランやジョニー・キャッシュ、ドノヴァン、 ドン・マクリーンとよく比較される。2013年に弱冠18歳にして“Lightning Bolt”がUKチャート1位を獲得し、有名になった。しかしUSでは彼のデビュー・アルバム『Jake Bugg』はチャート75位に留まることに。グルーヴを生み出す大御所、リック・ルービン(ビースティ・ボーイスやレッチリなど多数のビッグ・アーティストを手掛けたことで有名)がプロデュースしたセカンド・アルバム『Shangri-La』は、またもやUKではヒットしたが(チャート3位)、USではトップ40に喰い込むことはできなかった。サード・アルバム『On My Own』は、6月17日にリリースされる。
コートニー・バーネット
オーストラリア出身のDIYシンガー・ソングライター。どんなサウンドかというと……うーん、引き合いに出せるアーティストが思い浮かばない。ちょっぴりフォーキーで、時にサイケデリック。歌詞がウィットに富んでいて風変わりで、死んだアザラシやエレヴェーター係、折り紙、剥製術、住宅ローン、有機野菜、そして愛などが登場する。2015年にリリースされたアルバム『Sometimes I Sit And Think, and Sometimes I Just Sit』は世界的に高く評価され、グラミー賞〈最優秀新人賞〉にノミネートされた。
ロバート・グラスパー
ジャズ界の重要人物であり、ポップの世界でもヒットする、稀で貴重なジャズ・アーティストだ。クリスチャン・マクブライド、ロイ・ハーグローヴといった若きジャズ・ジャイアンツのバンド・メンバーとして演奏を始め、ブルー・ノートと契約してからはリーダー作を制作している。多才なピアニストであるグラスパーは、他のジャズ偉人たちと同様にゴスペルやヒップホップ、R&B、デューク・エリントン、レディオヘッドが融合したような独自のジャズ・フレイヴァーを生み出す。ロバート・グラスパー・エクスペリメント名義での2012年作『Black Radio』で大ブレイクし、グラミー賞〈最優秀R&Bアルバム〉を受賞した。先日マイルス・デイヴィス&ロバート・グラスパー名義でアルバム『Everything’s Beautiful』をリリース。マイルスの楽曲をベースにした作品で、エリカ・バドゥやビラル、スティーヴィー・ワンダー、キング、ハイエイタス・カイヨーテ、ローラ・マヴーラ、ジョン・スコフィールドほか多数のアーティストをフィーチャーしている。
Homecomings
京都出身の3人の女子+1人の男子から成るこのロック・バンドには、ある種のインディー・ロックのヴァイブと、少し80年代っぽさがあり、良い感じのヴォーカルが魅力的な雰囲気を醸し出している。ちょっとベスト・コーストのような感じかな。HALFBYと同じレーベル(SECOND ROYAL)に所属しており、新作『SALE OF BROKEN DREAMS』をリリースしたばかりだ。Homecomingsのことはそんなに詳しく知らないけど、とにかく彼らのサウンドが好き。それだけでも十分だよね?
〈SUMMER SONIC〉の注目アーティスト
エル・キング
2015年のデビュー・アルバム『Love Stuff』は大評判だった。ブルースを中心に扱うレーベルであるファット・ポッサムよりリリースされ、ポップ、ロック、フォーク、ブルース、ソウルが融合している。彼女の音楽を〈アメリカーナ〉とカテゴライズする人もいるが、ブロンディやドナスからも影響を受けている。全体的なサウンドは多様で、かなりポップだ。オブ・モンスターズ・アンド・メンやトレイン系のサウンドで、実際に彼らと一緒にツアーを回った。一方でインディー/オルタナティヴ・ロック・バンドのモデスト・マウスや、カントリー・グループのディキシー・チックスともツアーを行っている。シングル“Ex’s & Oh’s”は、USでチャート10位を記録する大ヒットに。父親はアメリカの有名なコメディアンだが、その父親の名前を借りることなく、16歳からクラブで演奏を続けながら独力で地位を築き上げた。
ナッシング・バット・シーヴス
ソニーと契約したイギリスの新人バンドで、2015年10月にリリースされたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムはUKチャート7位を記録。ややヘヴィーなサウンドを鳴らし、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ風だが、ソングライティングにはポップな雰囲気もある。もっともユニークな点は、歌い上げながらも時折ファルセットを聴かせるコナー・メイソンのヴォーカルだ。その感情的な雰囲気から、彼はジェフ・バックリーとも比較される。シングル“Itch”はBBCラジオで取り上げられ、そのおかげでミューズとツアーを回ることになった。
ジェイムズ・ベイ
彼は日本でようやく話題になってきたところだが、ここ数年でもっとも話題のアーティストだ。このイギリスのシンガー・ソングライターによるフォーキーな“Let It Go”と “Hold Back The River”は立て続けに世界的にヒットした。デビュー・アルバム『Chaos And The Calm』はトップでUKチャート入りし、多数の最優秀新人賞を受賞。USではチャート15位を記録し、2015年度のグラミー賞で3部門にノミネートされた。
The 1975
このイギリスのオルタナ・ロック・バンドはメンバーが10代の頃に結成され、名前をさまざまに変えながらずっと活動を続けてきている。2013年、EP『Music For Cars』の収録曲“Chocolate”がラジオでエアプレイされると大ヒット。ハイド・パークで行われたローリング・ストーンズのライヴで前座を務め、大型フェスティヴァルにも出演するようになった。2013年9月にリリースされたデビュー・アルバム『The 1975』は、UKチャートで1位を記録したが、USチャートでは28位に留まる。しかし2016年初めに発表した突飛なタイトルのセカンド・アルバム『I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It』(君が寝てる姿が好きなんだ、なぜなら君はとても美しいのにそれにまったく気がついていないから)は、UK/US共にチャート1位を獲得。プリンスとマイケル・ジャクソンから影響を受けたとメンバーみずから語っているものの、アルバムはよりファンクのフレイヴァーを増しており、デヴィッド・ボウイやピーター・ガブリエル、デュラン・デュランの影響も垣間見られる。派手でタトゥーだらけのハンサムなヴォーカル、マット・ヒーリーはバンドで一番の人気メンバーだが、楽器を演奏するメンバーたちもさまざまなスタイルで秀逸な演奏を見せる。
それでは、夏フェスを楽しんで!