コラム

伊左治直&伶楽舎『黛敏郎の雅楽 昭和天平楽』47年振りの再演となった〈幻の雅楽作品〉がついに音源化!

黛敏郎

初演から47年の歳月を経て舞台蘇演された黛敏郎“昭和天平楽”初CD化!

 黛敏郎のファンとしては正に〈待ちに待った。待ちくたびれた〉とまで言えるだろう。47年振りの再演となった2017年の蘇演を収録した〈幻の演奏〉が遂に! 音源化される時が来た!!

伊左治直, 伶楽舎 『黛敏郎の雅楽 昭和天平楽』 Salida(2021)

 国立劇場のライフワークでもある〈雅楽の復興〉の取り組みとして、現代の作曲家に新たな雅楽の形を委嘱し始めたのは60年代後半の話。この依頼からは、武満徹の“秋庭歌一具”をはじめとした傑作群が生まれて行く事となる。当然のように当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった(映画「天地創造」や「東京オリンピック」などの傑作もこの頃の作品といえば、当時の彼がいかに凄かったかお分かりいただけるだろう)黛敏郎にも依頼の声がかかる事となったのだが……そこは稀代の捻くれ者、もとい曲者、ただの雅楽なんぞ用意はしなかった。

 話は変わるが、世界最古のオーケストラとも評される雅楽には平安時代の完成期に至るまで徐々に編纂を重ねてきた経緯がある。“秋庭歌一具”は正式な構成をした上で武満徹色を加味した平安時代からの正式な後継者と言える作品だ。しかし、黛敏郎にとって後継などどうでも良かったのではないか。寧ろ彼が興味を示したのは雅楽の〈根源〉だった。天平~奈良時代に使われていた古楽器〈大篳篥(おおひちりき)〉〈大箏(だいそう)〉〈雅琴(がきん)〉などを編成に加え、中国、ベトナム、朝鮮半島の音楽が混在していく。雅な音から溢れるのは切れば血が出るような生々しさであった。

 それは黛氏が当時感じていた戦後復興の虚しさに対する反抗そのものではなかったのか? 物理的な豊かさに比例する生命力の欠如。現代にも通ずる病床にも斬り込み、人間が本来持っていた生命力の凄さを見せつけてくる。間違いなく黛敏郎を語る上で必須の音源となるだろう。

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