『平成』(2018年)がCDショップ大賞を受賞し、宇多田ヒカルや後藤正文からも称賛されたシンガー・ソングライターの3作目。奔放なヴォーカルの個性はこれまで以上で、浪曲や口上のような語りで始まる“こころ”がその極み。歌声はクセもアクも強いが、一度ハマると病みつきになること必至だ。音楽性はフォーク・ロックから河内音頭、サンバ、ノーウェイヴ調までを呑み込みながらも、結果として〈折坂悠太というジャンル〉の音楽になっている。当人は〈簡単な物語に消化されることを拒んでいます〉とコメントしているが、前2作での経験が物を言ってか、ブレなく芯の強いサウンドが全編を貫いている。尖った部分がますます研ぎ澄まされることで、切れ味の鋭さが3割増しになった。そんな作品だ。韓国からイ・ランも参加。