コロナ禍のなかで制作・発表された『心理』から2年8か月を経て到着した4枚目のフル・アルバム。前作でひとつの極みに達した感もある、音作りの面での雑食的でアクを立たせたアプローチを今回は抑制。ライヴでのバンド・メンバー中心に穏やかなサウンドスケープを描き、歌と言葉に照準を絞った間口の広い作品となった。日々の生活に寄り添うサウンドと言葉はシンプルなようで深淵な奥行きがあり、それゆえに日々の生活が持つかけがえのない価値を切実に照射している。ニュー・ソウル調の流麗なアンサンブルを展開するクロージング・ナンバー“ハチス”で表出される直球の思いが、痛みと共に胸を打つ。