2年ぶりのアルバム『FREEDOM ONLY』が遂にリリースされる。アルバムの楽曲から透けて見えた、この時代だからこそ生まれた楽曲の魅力を紐解いてみよう。

多くの音楽家たちが、時代と自身の音楽と改めて向き合いながら、ライブや音源などでその想いを発信し続けている昨今。2019年に、令和を迎えた混沌のなかで『NO DEMOCRACY』というアルバムで自身のステイトメントを示したGLAYもまた、2020年のコロナ禍以降は配信や無観客でのライブ、メンバーがそれぞれ楽曲を持ち寄った『G4 2020』をリリースするなど、混迷する時代と向き合ってきた。そうした2020年から2021年と季節を重ねるなかでリリースされたのが本作2年ぶりのオリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』である。

GLAY 『FREEDOM ONLY』 LSG(2021)

本作でまず注目すべき点は、アルバム全曲の詞曲をTAKUROが手がけていること。アルバム全曲をTAKUROが手がけるのは、なんと1999年発表の傑作『HEAVY GAUGE』以来となる。またその楽曲たちは彼が90年代の頃からあったマテリアルをあらたにブラッシュアップしたものから、近年制作してきたものまでと幅広く収録されている。TAKUROがこれまで生きてきた時代のなかで生まれたものを〈自由〉に表現している。言い換えれば平成~令和と時代を象徴してきたGLAYが今だからこそ鳴らすべき音楽というものを詰め込んだ、そんなスケールの大きさも窺える仕上がりとなっている。

そんな『FEEDOM ONLY』の幕開けは、7月に先行配信された、Awesome City ClubのPORINをゲストに迎えた“BETTY BLUE”。この冒頭のTERUの穏やかな歌声とともに聴かれるメロディー。それはまるで今を生きる我々に優しく寄り添うような温かさをもって耳に届いていく。かと思えば、続くニューウェイヴィなイントロから始まるロッキンな“Hypersonic”では、〈Yes, Summerdays〉〈Just One More Kiss〉などニヤリとさせるワードから、サビでの〈小橋の夢〉などTERUをイジるようなTAKUROのユーモア溢れるリリックなど、こちらも自由な遊び心が盛り込まれている。そこから初期のサウンドを思わせるようなファストなビートも登場する“Winter Moon Winter Stars”、王道のTAKURO節が聴かれる90年代テイストの“FRIED GREEN TOMATOES”と、長きにわたるバンドのキャリアをさまざまな角度から照らし、今のバンドで鳴らすというような構成も興味深い。

北海道の冬を思わせるキラキラとしたサウンドも美しい“永遠を名乗る一秒”、ピアノやギターの鳴りが優しい“漂えど沈まず”とバラードが続いたあとのアルバム後半は、季節が移ろうようにアルバムの色も変化していく。先行シングルでリリースされた、石崎ひゅーいやaikoなどを手がけるTomi Yoをアレンジに迎えての“BAD APPLE”から、昨年6月のライブでも披露された“Tiny Soldier”、女性コーラスやストリングスが
加わるシリアスな世界観の“Holy Knight”と、エレクトロニックなテイストが加わった楽曲が並ぶ。

そんな、まるで現実と正面から向き合うようなシリアスさを通過したあとは、アルバムは終盤へ。HISASHIのマイケル・ジャクソン“Black Or White”的なギターリフも聴かれるポップな“青春は残酷だ”でノスタルジックな感傷を受け取ったあとは、勇ましく壮大に、そして優しい人間賛歌“祝祭”へと続く。そして最後には、これまでの数々の想いを振り返りながら今を生きる人々へ優しく語りかけるような、アコースティカルな“桜めぐり”でもって『FREEDOM ONLY』は幕を閉じる。

本作は30年以上のキャリアのなかで、多くの人々が愛したそれぞれの時代のGLAYを感じさせる要素が数々聴かれる。またいくつかの楽曲にも登場する〈北国〉や〈都会〉といったノスタルジーや現実など、それぞれの時代で感じ取った感情もまた目にすることができる。いわばGLAYの魅力を網羅した、改めて彼らの存在の大きさを知ることができる一枚となっている。そしてそれが、今この時代に鳴らされるということの意味はまた大きい。何か重たいものを抱えて生きる今に、GLAYという音楽が必要だと強く感じさせる。そして喜びをもってあらたな季節を迎えたときにも我々にとって大切な、喜びの作品となるはずだ。