宮古島という土地の磁場の影響をモロに受けた強力なジャズ・ファンクを奏でる4人組、BLACK WAXの3作目『Vudu-Eee』が届いた。そこはかとなくミステリアスなムードを放つ良い表題だなぁと思いながらアルバムの封を開くと、そのイメージに符合するように入り口ではシリアスな表情を浮かべたスピリチュアル・ジャズ・タッチの《Confusion》が出迎えてくれる。一聴して彼らがよりディープな領域に向かっていることが分かる素晴らしい演奏だ。こういう音が育まれることになった理由として、レコーディングの日程が延びて、考える期間がたっぷりあったことが影響していると思う、と、Marino Ikemura(sax)が話す。
「セッションして遊んで録った《Confusion》は最初30分ぐらいあったんですよ。とにかく時間が結構あって、いろんなことを試すことができた」(Marino)
多様なアイディアを採り込んでグツグツ煮込みながら楽曲を育んでいったに違いないと思える形跡は、確かに随所で窺える。そんな制作スタイルが影響したのだろう、従来以上に多面的な魅力を放つ作品として完成することとなり、「シチュエーションが違ったりするとまったく聴こえ方が異なるような不思議な作品だと思う」(Ayano Ikemura/key)なんて印象をみずからに抱かせる結果を生むことにもなったのであった。
「聴く人によっては、これが宮古のリズムだと感じてくれる人もいるけど、私たちは周りから言われて気づかされることが実際に多くて。それに(所属レーベルMyahk Recordsの主宰者)P-Booさんや(プロデューサーの)久保田麻琴さんら大の音楽好きで、遊びながら様々なものを吸収している良いお手本が周りにいるし、素晴らしい彼らに育ててもらってるというか、いろんな世界をみせてもらえる環境にある」(Marino)
「久保田さんは遊びを教えてくれる先輩というか、良い先生なんですよ」(Tetsuya 88 Ogino/b、B-hp)
BLACK WAXらしい土着的なグルーヴが堪能できるMikio Okuhira(ds)作の《Loose Groove》をはじめ、メンバー4人それぞれオリジナル曲が持ち寄られ、各自のカラーが打ち出されていることも多彩さを招き入れる結果につながったと言えるだろう。そして数あるカヴァー曲のなかでは、かつて久保田麻琴がプロデュースを務めたチャンプルーDKIでも採り上げていた《Moliendo Cafe》(コーヒー・ルンバ)がピカイチ。極上のユルさが魅力の、最高にイイ顔した仕上がりとなっている。ところで〈ヴドゥ・イー〉とは宮古の言葉で〈ダンスする〉という意味だが、お風呂とかゆったりリラックスできる場所でゆらゆら揺れながら聴くとめちゃくちゃ気持ち良いのでオススメしたい。
LIVE INFORMATION
したまちコメディ映画祭in台東
【西田敏行リスペクトライブ】
○9/15(月・祝) 会場:浅草公会堂
秋の豆月祭「Myahk Funk & Bossa Chichibu presented by Makoto Kubota」
○9/16(火)20:00開演 会場:代官山“晴れたら空に豆まいて”
スペシャル・ゲスト:梅津和時/Opening : Taxi Saudade
Peter Barakan's LIVE MAGIC!
○10/25(土) 14:30開演 会場:恵比寿 ザ・ガーデンホール / ザ・ガーデンルーム