(左から)六角精児、北爪啓之

タワーレコード新宿店~渋谷店の洋楽ロック/ポップス担当として、長年にわたり数々の企画やバイイングを行ってきた北爪啓之さん。マスメディアやweb媒体などにも登場し、洋楽から邦楽、歌謡曲からオルタナティブ、オールディーズからアニソンまで横断する幅広い知識と独自の目線で語られるアイテムの紹介にファンも多い。退社後も実家稼業のかたわら音楽に接点のある仕事を続け、時折タワーレコードとも関わる真のミュージックラヴァ―でもあります。

つねにリスナー視点を大切にした語り口とユーモラスな発想をもっと多くの人に知ってもらいたい、読んでもらいたい! ということで始まったのが、連載〈パノラマ音楽奇談〉です。第13回は、Mikiki 10周年の特別企画として、北爪さんと関わりが深い六角精児さんへのインタビューの後編となります。 *Mikiki編集部

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今回は前回に引きつづきMikiki 10周年を記念した特別企画として、俳優の六角精児さんが選ぶ〈ロックアルバムベスト10〉の後編をお送りします。旅先で酒を呑みながら進めた対談(というか雑談)なので、その辺りをふんわりと汲みつつお読み頂ければ幸いです。

 

六角「(焼酎をコップに足しつつ)ジョニー・ウィンターの『Nothin’ But The Blues』ってアルバムあるじゃん。ドブロギターでスライドしててさ、あれはカッコいいなって思った」

JOHNNY WINTER 『Nothin’ But The Blues』 Blue Sky(1977)

北爪「さっき(前回参照)言ってたジョニー・ウィンター・アンドの『Live』じゃなくて?」

六角「俺のルーツって意味では『Live』なんだけど、でもベスト10に入れるんだったら『Nothin’ But The Blues』かな。だって今でも聴いてるもん。最近もマイク・ブルームフィールドとジョニー・ウィンターを2枚ずつ聴き直したんだけど、ブルームフィールドは大人だけどジョニー・ウィンターは子供だねぇ(笑)」

北爪「子供?」

六角「ギターのフレーズの作り方とかさ。でもそれが熟成されて本当にブルース化したのが『Nothin’ But The Blues』だと思うんだよな。あのアコースティックのボトル(ネック)プレイが最高ですね」

北爪「渋いセレクトだけど(ベスト10に入るのは)面白いかも」

六角「あとはやっぱりニール・ヤングかな。最近でも買うのが追いつかないくらいアルバムを出してるけど、一枚選ぶなら『American Stars ’N Bars』だな。スカートの中が見えてるジャケットの」

NEIL YOUNG 『American Stars ’N Bars』 Reprise(1977)

北爪「でもいま『Zuma』(ニール・ヤングのアルバム)のTシャツ着てるじゃないですか(笑)」

六角「そうなんだけどさ(笑)。『American Stars ’N Bars』はなんてったって“Like A Hurricane”が入ってるじゃないか。アコースティックじゃないロックなニール・ヤングならクレイジー・ホースとやってるあの曲が一番だよ」

北爪「たしかにエモーショナルな名曲ですよねぇ」

六角「じつは最初リアルタイムで聴いたときはよくわからなかった。でも金が無かったから買ってしまったレコードは何度も何度も聴き返すわけだよ。それで飽きてしまうものもあるんだけど、その噛みに耐えて好きになったアルバムの一枚だな」

北爪「音楽として繰り返せる耐久度が高いってことか」

六角「うん。ステイタス・クォーとかフォガットは聴いてすぐにわかったけど、そのぶん耐久度が低かった(笑)。だから俺がいま選んでいるべスト10は、スルメイカのように何度もしゃぶってもそれでもなお味がするものが多いかもしれないな」

北爪「“Like A Hurricane”もそうだけど、ニール・ヤングってなんとも個性的なエレキギターを弾くじゃないですか。あれはプレイヤー視点だと上手いんですか?」

六角「あんなギターが弾けたら上手いとか下手とか関係ないよ。あの音にニール・ヤングの人間味がダダ漏れしてるわけだから、テクニック云々ではない凄みがあるんだよ」