クニモンド瀧口が選曲・監修する人気コンピレーションシリーズ『CITY MUSIC TOKYO』。このたび同シリーズの最新作『CITY MUSIC TOKYO Second Definition』が日本コロムビアからリリースされた。2025年発売の第1弾に続き日本産の〈ジャズファンク〉をテーマにした本作について、クニモンド瀧口に話を訊いた。 *Mikiki編集部
カッコいい日本のジャズファンクを世界に向けて発信したい
――『CITY MUSIC TOKYO Second Definition』はジャズファンクという切り口で選曲されたそうですね。
「〈CITY POP〉という言葉も今では広く使われるようになりましたが、それが最近自分の考えているものとはちょっと違う感じになってきたんです。それで〈CITY MUSIC〉という言葉で自分なりの切り口でいろいろな音楽を紹介してきたんですけど、最近、海外では日本のジャズやフュージョンがすごく再評価されているじゃないですか。僕がRYUSENKEIで作ったサントラ『Talio』のインスト曲も海外でよく聴かれていることもあって、それでジャズファンクという切り口が面白いんじゃないかと思ったんです。
あと、ジャズファンクって実は子供の頃にテレビや映画のサントラを通じて聴いていたんですよ。もちろん、当時はそれがジャズファンクという音楽だとは意識していなかったけど、子供ながらにそういう音楽が好きだったんですよね」
――僕も瀧口さんと同世代なのでよくわかります。アクション映画とかでよく流れていましたね。
「そうそう。アクションシーンになるとファンキーなビートでギターがワカチャカしてた(笑)。そういうのを子供の頃に聴いて育ったんです。あと、90年代にタワーレコードで働いていた時にジャズファンクが流行ったんですよ。プレスティッジやブルーノートからたくさんの作品が再発されたりして。僕はその頃ジャズは全然聴いていなかったんですけど、改めてジャズファンクを聴いて〈やっぱりカッコいいなあ〉と思って。そして、ジャズバイヤーになったことで本格的にそういう音楽を聴くようになったんです」
――90年代はアシッドジャズの影響で〈踊るジャズ〉が流行りましたよね。
「90年代に踊る場所がディスコからクラブに変わっていったじゃないですか。当時、クラブでかかっていたのもジャズファンクが多かったんですよ。それに、ノーマン・ジェイとかジャイルス・ピーターソンとか、DJたちが選曲したコンピレーションがたくさん出ましたよね。日本では橋本徹さんの『Free Soul』シリーズとかね。
そうしたコンピレーションで知った曲も多かったです。だから、『CITY MUSIC TOKYO』もそういったコンピレーションと同じように、僕の切り口で日本のカッコいい音楽を紹介したいと思っていて。なので、今そういうコンピを世界に向けてやるんだったら、和ジャズとかJフュージョンのよさを広げていきたいと思ったんです」
――今回、選曲する際に何か意識されたことはありますか?
「僕は70年代後半から80年代頭ぐらいの作品が好きなんです。フュージョンになりすぎず、ちょっとクロスオーバー感が残っている洗練されたジャズ。そこがポイントになっているのかな、と思います。自分が好きなものを集めているので、ミッキー吉野グループの曲が2曲も入っていたりするんですけど……あ、ちあきなおみさんの“想影”もバックバンドはミッキー吉野グループでしたね。この頃のミッキー吉野さんが大好きで、フェンダーローズとかムーグとかキーボードの使い方がいいんですよ」
――音色がメロウな感じがしますね。ほどよくポップだし。
「1978年の第1回の『24時間テレビ』にCharさんが出て“Shinin’ You, Shinin’ Day”を歌ったんですけど、ゴダイゴがバックを務めていたんですよ。それをリアルタイムで観て〈カッコいい!〉と思ったんです。自分はそれからずっと好きなんだなって今回思いました。特にゴダイゴになる直前くらいのミッキー吉野グループがいいんですよ」
松田優作になりきって聴いていた“野獣死すべし”
――本作にはアニメ関連の音源が入っているのも面白いですね。例えばアニメ「ムーの白鯨」のサントラからは“ムーの勇者達”が収録されています。これはリアルタイムで聴かれていたんですか?
「はい。子供の頃に聴いて好きだったんです。サントラも持ってました。曲を書いた羽田健太郎さんはテレビにも出ていたので当時は芸能人的なイメージを抱いていたんですけど、その後、久保田早紀やオフコースの作品のクレジットでも名前を見かけて覚えました。アニメのBGMってカッコいい曲が結構あるんですよね。大野雄二さんの『ルパン三世』とか『キャプテン・フューチャー』は昔から大好きでした」
――大野雄二さんもアニメのサントラを数多く手がけていましたね。子供達にジャズのカッコよさを伝えた重要人物です。
「ほかにも『宇宙戦艦ヤマト』とか『機動戦士ガンダム』のサントラなんかも買ってました。『宇宙戦艦ヤマト』のサントラはクレジットに石川晶さんの名前を見つけて驚きました。やっぱり、子供の頃にカッコいいと思った音楽は記憶に残りますね」
――記憶に残る曲といえば、荒川バンドの“野獣死すべし”もそうですよね。松田優作主演の角川映画のサントラということで当時よく流れていましたが、大人の世界を感じさせました。
「『野獣死すべし』は暴力的なシーンがあるので映画館には行けなくてテレビで観たんですけど、この曲を聴いて〈うわ、カッコいいな〉と思ってシングルを買ったんです。自分の部屋でモデルガンを触りながら聴いてたんですよ、松田優作になりきって(笑)。今回収録したのは再録バージョンで、オリジナル版よりグルーヴがあるんです」
――この曲を聴くと夜明けの新宿の風景が浮かんできます。まさに〈CITY MUSIC〉という感じですね。
「10年前に鵠沼海岸でDJをしたことがあって、夕方にこの曲を流したら若い子が〈何て曲ですか?〉と訊きにきたんですよ。彼らは映画を観ていないから、曲だけを聴いてまた違うハマり方をしたみたいですね。トランペットの音色とかが夕暮れ時の海岸に合っていたんじゃないかなと思います」
久石譲、山屋清などDJ界隈でも人気なライブラリーミュージック
――服部克久さんが手がけられた映画「幸福号出帆」のサントラ曲“Cool Storm”もメロウな感じがいいですね。
「服部さんの劇伴って意外と攻めてる曲が多いんですよ。あと、時代劇の劇伴がめちゃくちゃジャズファンクだったりして。『幸福号出帆』はDJ MUROさんが昔から推してるサントラなんです。今回のアルバムはDJ的な視点というのも大きくて、DJ界隈で人気の曲もいろいろ入っているんです。例えば久石譲さんが作曲したコロムビア・オーケストラの“さっそうと行く”とか」
――この曲は運動会とかにかけるライブラリーミュージックとして制作されたそうですね。よく見つけたな、と思いました。
「海外のDJがこの曲をかけていて、そこで初めて知ったんです。海外のDJは本当に熱心で、いろんなところから曲を見つけてくるんです。今回の収録曲ではコロムビア・オーケストラの“Standard Daytime”もそう。これは漫画『PALM』のイメージアルバムの曲なんですけど、海外で人気があって最近レコードの値段が上がっているそうで。今回、アルバムのクレジットを見て〈こんな豪華なメンバーでやっていたんだ!〉って驚きました」
――腕利きのミュージシャンがサントラやバックバンドをやっていたというのも、この時代の面白さですね。だから掘りがいがある。
「昨日、須永辰緒さんのお店(moderno)でレコードをかけたんです。僕が好きな昭和の曲が中心だったんですけど、〈サウンドだけ聴いてると歌謡曲じゃないよね〉ってみんな言ってました。“ムーの勇者達”だってサウンドだけ聴いたらアニメのサントラの曲だとは思わないだろうし」
――子供の頃、知らない間にハイレベルな音楽を聴いていたんですね。だから記憶に残るのかもしれません。一方、王道のジャズでは渡辺香津美さんがジミー・ホップスと共演した“Lonesome Cat”が収録されています。
「“Lonesome Cat”は有名な曲ですけど、この1976年の『ムダリ』に収録されたバージョンはあまり知られていないんじゃないかと思います。昨年リリースした『CITY MUSIC TOKYO First Suspicion』には日野皓正さんとか渡辺貞夫さんの曲が入っているんですけど、そういう大物と言われる方々の曲って昔は避けてたんですよ。でも、今聴くとやっぱりすごいなって思います」
――ジャズと邦楽をミックスした山屋清さんの“古都(四)”も面白かったです。昔、こういう企画性が強い作品はイロモノ扱いされたりしましたが、今聴くとカッコいい。
「これもDJの間で人気なんです。この曲は京都をイメージしたものですが、山屋さんは沖縄とかいろんな土地を題材にアルバムを作っていて、ライブラリーミュージックみたいな感じもあるんです。僕の親がレコードと車にお金をかける人だったので、女性の裸がジャケットになっているようなムードミュージックとかライブラリーミュージックのアルバムをいろいろ持っていたんですけど、そのなかにこういう曲もありました」
昭和の豊かな大衆音楽のよさが伝わってほしい
――こういう作品も瀧口さんの音楽の原風景としてあったんですね。本作にはボーカルナンバーが3曲収録されていますが、アルバムのいいアクセントになっていますね。弘田三枝子さんの“In My Feeling”なんて和ジャズの魅力に満ちています。
「“In My Feeling”は大好きな曲です。歌もいいけど、とにかく演奏が素晴らしい。マリーナ・ショウの“Who Is This Bitch, Anyway?”もそうですけど、歌と同じくらい演奏にも注目してほしい曲です」
――個人的にはちあきなおみさんの“想影”に痺れました。ジャズやR&Bとは違うこぶしの回しとミッキー吉野グループの演奏が出会うことで、ジャンルレスな曲になっている。
「〈なんでちあきなおみが入ってるの?〉と思う方もいるかもしれませんが、曲を聴けば納得してくれるんじゃないかと思います。曲を書いているのは河島英五さんなんですけど、ミッキー吉野グループが演奏することでめちゃめちゃ洗練されたものになっているんですよ」
――こういう曲が入っているのが本作の面白さだと思いました。
「今回、選曲をしていて思ったのは、最近はジャンルや世代によって聴く音楽が分かれてしまっているけど、この時代は大衆音楽というものがまだ成立していたんですよね。だからアニメの音楽も子供だけじゃなくて大人も聴ける。当時の大衆音楽がいろんなジャンルをクロスオーバーさせた豊かな音楽だったことに、今回改めて気づかされました。だからジャズファンクを切り口にしながら、“想影”みたいな曲が入ってきたりもする。昭和という時代のよさも本作からは伝わってくるんじゃないかと思います」
――かつての『Free Soul』がそうだったように、『CITY MUSIC TOKYO』には今の視線で過去を再発見する楽しさがありますね。
「僕は懐古趣味で古い音楽を紹介している気持ちはまったくなくて、時代とは関係なく自分の琴線に触れた音楽をプッシュしている。さっきの“野獣死すべし”の話じゃないけど、当時のことを知らない若い人たちが本作を聴いて、新しい感覚で〈あ、なんかいい感じだな〉と思ってくれたら嬉しいですね」
RELEASE INFORMATION
リリース日:2026年3月4日(水)
選曲・監修・解説:クニモンド瀧口(RYUSENKEI)
■CD
品番:COCB-42626
価格:2,530円(税込)
■LP(2枚組)
品番:COJY-9576~7
価格:6,160円(税込)
TRACKLIST
1. Standard Daytime/コロムビア・オーケストラ
2. In My Feeling/弘田三枝子
3. ビーバー/古澤良治郎
4. Skyfire/大野えり
5. ムーの勇者達/羽田健太郎、ケン&ラムー・オーケストラ
6. さっそうと行く/コロムビア・オーケストラ
7. サスペンスタッチ 1/猪俣猛とサウンド・リミテッド
8. Cool Storm/服部克久
9. 海(釧路まで)/ミッキー吉野グループ
10. Moon Stone/益田幹夫
11. 野獣死すべし/荒川バンド
12. Monster/猪俣猛とサウンド・リミテッド
13. Breeze/稲垣次郎とソウル・メディア
14. クインシー・ハーカーのテーマ/横山菁児、トランシルバニア・バロック・アンサンブル
15. 想影/ちあきなおみ
16. Lonesome Cat/Jimmy Hopps=渡辺香津美
17. 古都(四)/山屋清
18. 輪廻/ミッキー吉野グループ
※LPはSide A:M1~M4、Side B:M5~M9、Side C:M10~M14、Side D:M15~M18
LIVE INFORMATION
RYUSENKEI
25th Anniversary Billboard Live Tour
2026年4月18日(土)ビルボードライブ大阪
2026年4月23日(木)ビルボードライブ東京
チケット:https://eplus.jp/sf/word/0000038090
PROFILE: クニモンド瀧口(RYUSENKEI/CMT Production)
RYUSENKEI(ex.流線形)としてレコード制作、ライブ活動のほか、音楽プロデューサー、作詞・作編曲家としても活躍。また自身が運営するCMTプロダクションでは、楽曲提供、音楽制作に加え、ジャケットや広告のアートディレクション&グラフィックデザインなどを手掛ける。日本のシティ・ミュージックをコンパイルした『CITY MUSIC TOKYO』シリーズを各社から発売。また、DJとしても精力的に活動中。
https://linktr.ee/cmtpro
