©Robb Klassen

LAから届いたジャズとビートミュージックを繋ぐ親密なバンドサウンド

 キーファーは、先鋭が集うLAシーンのビートメイカーらのバンドサポートをしながら、独自のソロ作品を着実に作り上げてきた20代のピアニストだ。幼少期から名門大学UCLAのジャズプログラムを経て培ったジャズのスキルを、LAビートシーン伝説のイヴェント、〈Low End Theory〉のクリエイティビティと人脈を経て昇華し、温かく親しみやすいメロディやハーモニーに重きを置いたトラックで支持を得ている。低音をキープしたビートは心地よい揺らぎがあり、心の琴線に触れるフレーズ、時折見え隠れする憂いや煙たさも感情豊かだ。彼のプロデュース曲は、昨年グラミー賞を受賞したアンダーソン・パークのアルバム『Ventura』に収録され、その実力も証明されたばかり。本作はこれまでのソロ作品から一新、初のフルバンドによる録音で、ヒップホップの裾野を広げるレーベル、〈Stones Throw〉からの彼の二枚目のフルアルバムとなる。

KIEFER 『When There’s Love Around』 Stones Throw(2021)

 ザ・クルセイダーズの1974年作をカヴァーしたタイトル曲について「この曲を演奏するとタイトルの通りオーディエンスとミュージシャンの間に愛のオーラが漂うのがわかるんだ。この曲のフィーリングを表すには一人ではなくバンドで演奏するしかないと思った。ずっと前から大切な仲間とレコーディングした作品を作りたいと思っていたんだ」

 本作は、メンバーが異なる3種類のセッションから成り、気心知れたドラムのウィル・ローガン、ベースのアンディ・マコーリーを始め、近年注目のベーシスト、サム・ウィルクスや、シーンの重鎮であるパーカッショニストのカルロス・ニーニョ、そして昨年のメジャーデビューも記憶に新しいブッチャー・ブラウンのメンバーも参加している。

 「4年前からブッチャー・ブラウンのDJハリソンと連絡を取り合っていてDJジャジー・ジェフの自宅で彼と演奏するようになった。ジェフは音楽コミュニティ向上のために、毎年100人くらいのミュージシャンを自宅に呼ぶんだ。この作品のレコーディングの一部は、ジェフのスタジオを使わせてもらった」

 今回のミックスはディアンジェロの名作『Voodoo』の仕事で知られるエンジニア、ラッセル・エレヴァドが担当。またテープループのエフェクトを取り入れるなど、サウンドの質感を操るクリエイターたちもミュージシャンと有機的に繋がり合い、丁寧に音をまとめ上げている。本作には彼のこれまでの活動に対する「人と人とのつながりを大切にしたい」という気持ちが溢れている。

 「連帯感、友情、家族、アイデンティティーがテーマになっている作品なんだ。このアルバムは、ここ3、4年間の自分の人生を超越した内容なんだよ」