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©2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.
ドキュメンタリー作品「ザ・ビートルズ:Get Back」
ディズニープラスにて全3話見放題で独占配信中
 

ビートルズの曲を守るためポールは解散を選んだ

ビートルズ解散への伏線がどんどん出てきます。ヨーコさんが嬉しそうに「アラン・クレインが来た」と言うんです。のちにビートルズのマネジャーになろうとする男です。

ポールはアラン・クレインが悪い奴ということはよくわかっていて、アラン・クレインがマネジャーになるとビートルズの権利を全部奪われてしまう、ビートルズの権利を守る唯一の方法は自分が脱退してビートルズを解散させることだ、と考えたわけです。彼らは解散したけど、ドキュメタリーのなかでジョンがポールに〈離婚(解散)はいいけど、僕らの子(楽曲)はどうする〉と言っていましたが、彼らの子供は守られたわけです。

このいちばんの問題はローリング・ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズなんですよね。ストーンズはアラン・クレインから酷い目にあわされているのに、ミックもキースも彼らに「アランは悪い奴だよ」と言わなかったのです。この二人が「アラン・クレインは絶対やめたほうがいい」と強く言ってたら、ビートルズの解散はなかったと思うのです。

ドキュメタリーのなかでも、プロデューサーなんかエンジニアなんかわからない微妙な立場で大変な仕事をさせられていたグリン・ジョンズはジョンに「あいつはあかん奴や」と言っているのですが、グリン・ジョンズの意見なんかジョンは聞かないですよね。

 

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ビートルズは残業しない

観ている人はなぜヨーコさんがいつも一緒にいるのかと疑問に思っていると思いますが、フェミニズムと言いますか、壮大な夫婦の実験なのです。ジョンはこう言ってます。「君たちは家に帰って、奥さんに今日どんなことやったかを話すだろ。でも僕たちはずっと一緒にいて同じ経験をしてるから、家に帰ってもそんなことする必要ないんだ」。アートと言えばアートですけど、周りの人には大迷惑です。でも、みんなヒッピーなんで、他人がやることを否定するのはクールじゃないという思想にハマっていて、何も言わないわけです。

この思想がビートルズ解散のいちばんの原因かな。

あと、みなさん気づいているかわからないですが、締め切りが迫ってるのに、彼らは残業もなし、土日も出勤しないですよ。最後だけ日曜日に来ましたが。ちゃんと19時を過ぎたら家に帰るのです。11時から19時まで。日本人がこれ見たらびっくりしますよね。でも長くやっても耳がバカになるだけだから彼らが正しいのです。

ポールの後の奥さん、リンダの連れ子のヘザーがスタジオに来ても全然うるさそうにしてないのを観て、けっこう小さめの音でやっているのだなと思いました。耳が痛くならないくらいの気持ちいい音量でやっているのでしょう。これも大事だよなと思いました。屋上ライブのときは近所から五月蝿いって大苦情でしたが。

観てて辛かったけど、その最後の瞬間(=芸術そのもの)に立ち会えたような感覚を与えたくれた監督のピーター・ジャクソンには感謝です。

みなさんも心して観てください。