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インタビュー

TENDOUJI『Smoke!!』はぐれものでいい、でも正直でいたい――モリタナオヒコを動かすパンク魂

TENDOUJI『Smoke!!』はぐれものでいい、でも正直でいたい――モリタナオヒコを動かすパンク魂

今年の4月にニューアルバム『MONSTER』を発表したTENDOUJI。同作のリリースがアナウンスされた際に、さらなる新作を2021年中に出すことも告知されていたが、その予告どおりに10曲入りのアルバム『Smoke!!』が到着した。

この『Smoke!!』で、4人組は〈パンク〉を鳴らしている。70年代終盤のオリジナルパンクやクラッシュ直系のスカパンク、90年代から2000年代前半にかけてユースカルチャーを席捲したメロディックパンク~ポップパンク……。本作に聴こえるのは、そんな王道のパンクを彼らなりに昇華したサウンドだ。もちろんTENDOUJIがパンキッシュであることは、いまにはじまったわけではない。シンガロングしやすいキャッチーなコーラス、ノイジーで勢いに溢れたギターサウンドは、デビュー時から彼らの十八番だった。

そのうえで、『Smoke!!』をこれまで以上に〈パンク〉たらしめているのは、聴き手に向けて〈お前の好きに楽しめよ〉と呼びかける、そのアティテュードだろう。出会った人の人生や価値観を変えてしまう怪物的な『MONSTER』と対比すると、このアルバムは、何かに夢中になるあまり既存のレールから逸脱してしまったものたち=パンクスたちのためのサウンドトラックと言えるのではないか。フロントマン、モリタナオヒコのパンク精神、その在りようを掘り下げた。

TENDOUJIのライブは、TENDOUJIが主役じゃない

――新型コロナウイルスの感染者数も日本ではそこそこ落ち着いていて、オミクロン株が怖いなと思いつつ、コロナ禍以前の生活が少しずつ戻ってきている印象はあります。ナオさんとしてはどうですか?

「ライブをやっていても、前に比べたらお客さんの感覚が回復している気がしますね。〈早く解放してくれ!〉みたいな空気を感じるし、もう騒ぎたくてしょうがないんだろうなと思います。ポジティヴになってきている印象ですね」

――いまが最後の我慢のときであってほしいですね。やっぱり制限がある状態でのライブには、やりづらさ感じていました?

「正直そうっすね……」

――そうですよね(笑)。

「バンドのタイプ的に無理ですよね。やりづらくないと言ったら嘘になっちゃう。それまでお酒を飲んではしゃいでた人たちが、おとなしくしなきゃいけないのは、やっぱり寂しかったです。

しかも、そのなかでたまに騒いでしまう人たちもいるじゃないですか。そのとき、ほかのお客さんからは〈なんだ、あいつ〉って目がいきますよね。フジロックのMCで(アサノ)ケンジが『ルールをやぶるのはダサいから』と言っていて、俺も本当に同じ気持ちなんだけど、そういう馬鹿をしちゃった奴らが標的になってしまうのは、結構つらくて。そいつらは間違ったことしちゃってるし、そのせいで楽しめない人がいるのも最悪なんだけど、だからといって槍玉にあげられちゃうのはすごく嫌だった。だから、俺はなるべく言わないようにしていたし。

やっぱり平等っていうか、もともと〈どんな人でも楽しんでほしい〉というスタンスだったから。仮に暴れる奴がいて、周りに迷惑をかけたとしても、『お前、やめなさい。次から気をつけろよ』ですませたいんです。多くの人が、他人に対して過敏になってるのはつらいっすね」

――TENDOUJIのライブは、お客さんが好き勝手に楽しんでいる感じが魅力でしたからね。

「まさにそうですね。主役は俺たちじゃないんで。俺ら、バレンタインにワンマンライブをやっても、チョコを全くもらえないバンドですからね(笑)。でもね、俺もお客さんとしてライブに行っていたとき、〈ここでは自分が主役なんだ〉と思ってたんですよ。そういう気持ちにさせてくれるミュージシャンを好きだった。〈手をあげろ~!〉とか苦手だったし(笑)。TENDOUJIのライブでは、好きに楽しんでくれたらいいなと思うし、そういう場が理想ではありますね」

TENDOUJIのライブ映像

 

俺らみたいな奴らは嗜好品でいい

――新作の『Smoke!!』というタイトルは、このアルバムがはぐれものや社会にうまく適合できない人たちに向けた音楽であることを表しているように感じました。いま喫煙者は眉をひそめられる存在じゃないですか。

「『Smoke!!』ってタイトルは響きもいいし、パンクっぽい。そういう理由も含めて付けました。俺は実際に喫煙者だし。とにかくね、煙草吸ってる人生のなかで、この1、2年はいっそう居心地が悪かったんですよ。もはや喫煙者というだけで非国民みたいな扱いをされますよね。以前、住んでる町の人がほとんど通らないようなところで、携帯灰皿をもって煙草吸ってたんですよ。そうしたら、じいさんに『お前、こんなところで煙草吸ってんじゃねえ!』とすっごい剣幕で怒られて。結構その体験がショックだったんです。こんなに疎まれちゃうのか……と。

でも、俺みたいな奴はそんなもんでいいよなって、ちょっと振り切れたというのもあった。正直、『MONSTER』の制作時は、いろんな人に聴いてほしいとか、もっと認められたいという欲望が強かったんです。だけど、なんかもう諦めたっすね」

――そうなんですね。

「いい意味で諦められた。別にそういう音楽を好きじゃなかったですからね。だから『Smoke!!』ってタイトルには、〈嗜好品でいい〉という意味も込めてます。俺は自分の好きなもんを作ったから、好きな奴が聴いてくれたらいいなと思う。別にディスりたければディスればいい。親戚とかに〈あの曲、いいね〉とか褒められる作品も作りたいですけど、まーそういうタイプじゃないですからね。しょうがねえなと」

――前作の『MONSTER』と今回の『Smoke!!』は、ほぼ同時進行で制作されてたんですよね。〈より多くの人に聴いてもらいたい〉という側面と〈いや、俺たちはアウトサイダーでいいじゃないか〉という側面に、自然と分かれていったんでしょうか?

「そんな感じです。『MONSTER』はパワフルなアルバムだったけど、実は〈もしかしたら聴きづらいかもな〉とも思っていたんです。自分たちとしても結構チャレンジしたし、いったいどれくらいの人がこれを理解してくれるのかな、これが理解されたらすごいな、と考えていた。以前から俺たちを知ってくれてる人たちにとって『MONSTER』は意外に思える作品だったかもしれない。むしろ今回のほうが〈TENDOUJIっぽい〉となるんじゃないかな。このアルバムは、余計なものが削がれて、シンプルですしね。ある意味、原点回帰的なところもあると思う」

――『MONSTER』が理解されるかどうかわからなかったと言われましたけど、リリースから半年以上経って、少しは理解してもらえたという感触はあります?

「いや……全然ないです。なんとも言えないな。でも、いつか……というか、消費されて使い回しですぐ消えてくみたいな作品ではなくて、ちゃんと残ってくれればいいと思ってる。だから、長く残って、いろんな人に聴かれたらいいなとは思いますね」

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