Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第88回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyプレイリスト

 


【鈴木英之介】

downy “17月”

2018年に逝去したメンバー青木裕と親交の深かった、ベルリン在住の電子音楽家mergrimとの共作曲。青木が弾いたギターの音源がサンプリングされ、使われている。ノイジーなギターの断片を緻密に組み合わせることによって生み出された音像は、フェネスやティム・ヘッカーといった叙情的なノイズ・ミュージックの作り手たちを彷彿させる。そのままノンビートの電子音響作品として進むのかと思いきや、ドラムスが入ってくることで突如、人力ビート・ミュージックへと変貌する。さらには呪術的な歌もそこに重なり、曲はいよいよ不穏な祝祭の様相を呈してくる。そして気付けば、覚めない夢のような“17月”の世界から抜け出せなくなっている……。

 

松木美定 “おぼろの向こう”

TOWER DOORSの〈6つの質問〉でも取り上げられた新鋭シンガー・ソングライターによる、待望の新曲。ジャズ(特にハード・バップ、ビバップ)を基調としたゴージャスで洒脱なアレンジに、流麗かつ親しみやすいメロディー、そしてハイトーンでシルキーな歌声。その絶妙な絡み合いから成るこの曲を聴き進めていくと、耳だけでなく全身がよろこびの声をあげだすのが感じられるはず。松木本人の手掛けるイラストによるアートワークも、相変わらず良い。

 

Kei Matsumaru “it say, no sé”

2020年11月25日(水)より配信開始、12月9日(水)にCDリリースされる、サックス奏者・松丸契の新作『Nothing Unspoken Under The Sun』からの先行公開曲。切迫したような雰囲気を醸すドラムスと太く乾いたウッド・ベース、そしてスピリチュアルなサックスによる、あまりにも無骨で不穏な導入に、冒頭からブッ飛ばされる。やがて松丸のサックスが主旋律を奏でだすと、曲に端正さが加わり、全体が一層キリっと引き締まる。まるで混沌と秩序の境目を行き来するような、緊張感に満ちた演奏を聴いていると、60年代にジャズ界を席巻したブルーノートの〈新主流派〉を思い出す。

 

【小峯崇嗣】

スウ “忘れる日”

〈⽇々に融ける⾳楽を〉という言葉を掲げて活動するSSW、スウの3曲入りのファースト・シングル『いつもの話』からご紹介。思わず身を委ねたくなるほど流麗でノスタルジックなピアノの旋律が鳴り響き、聴き手を温かく包み込むような詞を優美な歌声がじっくりと融和していく一曲。折坂悠太や王舟を好きなリスナーにぜひおすすめしたいアーティストです。

彼には、TOWER DOORSからのメール・インタビュー〈6つの質問〉に答えてもらっています。スウの人柄や、この曲がどのような想いで制作されたのかがわかる記事となっているので、ぜひ併せて読んでみてください。

 

Babi “桃色の砂漠”

最近「ピクミン3」のゲーム内音楽の作曲などを手掛けた作曲家/編曲家/効果音作家として活動するBabi最新シングルからご紹介。今作は、異世界の情景が思い浮かぶような幻想的で摩訶不思議なポップ・サウンドと、蜜のように甘い歌声によって紡がれる愉快で軽快な一曲。

 

CUB “あなた”

茨城で活動する3人組のエレクトロ・ユニット、CUBが最新シングル “あなた”をリリースしました。シングルでは初の日本語詞となる楽曲で、すれ違う2人の気持ちを描いたとのこと。ベース・ミュージック的なアプローチをしたチル・トラップのリズムに、カラフルに彩られたエレ・ポップ・サウンド。そこに凛とした優美な歌声が静かに寄り添うように夢心地の世界へ誘われるような一曲です。

気になった方は以前CUBにはメール・インタビューを行っておりますので併せてぜひチェックしてみてください。

 

TOSH “Ashes”

沖縄を拠点に活動するSSW、TOSHが11月27日にシングル“Ashes”を発表。その最新曲の彼自身が手掛けたリリック・ビデオが公開されています。スロウ・テンポと甘酸っぱいメロウなメロディーが掛け合わさり、彼の色っぽい爽やかな歌声に酔いしれる、少し悲しく切ない楽曲に仕上がっています。

 

ジオラマラジオ “SUPER SAD SONG“

東京を拠点に活動するデュオ、ジオラマラジオが、セカンドEP 『txt』から “SUPER SAD SONG“のMVを本日公開しました。今回の監督・制作はベースを担当しているスティーブン・ビチャルバーグ。淡い青春時代の2組の男女の恋模様が描かれた映像になっており、鮮やかなジオラマラジオのポップ・サウンドがそれを明るく照らすようなテイストに仕上がっています。