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時代はチルからパンクへ

――『MONSTER』がリリースされた時点では、この『Smoke!!』は何割くらい出来ていたんですか?

「7割くらいかな。曲はほぼ出来ていたけど、そのあとに何曲か作ったり録ったりしました。なので、若干当初の構想とは変わってます」

――前作のあとに作った曲といえば……。

「1、2曲目っすね」

――そうなんですね。それら“Boys”と”Stupid!!”は、作品のなかでもパンク度が強い楽曲だし、冒頭に据えられていて『Smoke!!』をパンクアルバムだと印象付ける2曲です。

「このふたつは、メロコアとかに影響を受けた曲ですね。実はジャンルとして、そんなに通ってなかったんですけど、最近になってハマったんです」

『Smoke!!』収録曲“Boys”
 

――10代のときに聴いていたものが再燃したのではなく、いまメロコアの魅力に気づいたんですね。

「TENDOUJI自体は『メロコアっぽいね』とよく言われてきたんだけど、俺はちゃんと聴いたことなくて。今年はじめてサム41とかを聴いて、痛快だなー!って思いました(笑)。なんかね、ちょっとチルいものに飽きたのかも。最近、マシン・ガン・ケリーとかヤングブラッドとかあの界隈の人たちがしっくりくるんだよね。そこで、ブリンク182のトラヴィス・バーカーが立役者となっているのもおもしろくて。

前にw.o.d.のKen(Mackay)から『これ、めっちゃTENDOUJIっぽいんで真似したほうがいいいですよ』ってブリンク182の映像が送られてきたんですよ。で、観てみると確かにカッコよかった。ファッションとかもいいし。そういう2000年代初頭のポップパンクをすごく聴いてた時期だったし、バンドの音楽にも自然と取り入れられていって。その結果、出来たのが“Boys”と”Stupid!!”だったんです」

『Smoke!!』収録曲”Stupid!!”
 

――海外のポップシーンの潮流として、メロディックパンクやポップパンクが再評価されていますけど、TENDOUJIがそことシンクロしたのはおもしろいですね。

「なんか音楽シーンも一周したんじゃないですかね。ここ数年流行ってきたもの――ベッドルームポップとかに飽きてきて、違うものを求めはじめたというか。でも、キッズたちこそ、そういう退屈さに誰よりも敏感じゃないですか」

――メロディーや演奏はパンキッシュですが、『Smoke!!』の音作り自体はかなり趣向を凝らしたものになっています。随所で使われている打ち込みの音も効果的だし、なによりハイファイな音が気持ち良い。本作は『MONSTER』以上にプロダクションに力を入れているレコードでもあると感じました。そのあたりは、プロデューサーの片寄明人さん(GREAT3)やアレンジを手掛けたGuruConnectさんと綿密にやりとりしたんじゃないですか?

「そうっすね、すごくいいチームで2年くらいやれているんですけど、各々得意分野はあって。片寄さんだったらエバーグリーンっていうか、アコースティックなものやサイケデリックな音を扱うのが上手い。例えば今回のアルバムだったらケンジの“HELLO”とかミディアムテンポの曲で、能力を発揮してくれている。

逆にパンクっぽいものに関しては、スグルさん(GuruConnect)と俺でかなり研究しました。その作業がいちばんおもしろかったかな。ヤング・サグとかマシン・ガン・ケリーとかの映像を一緒に観まくったし、ブリンクのトラヴィスがいまプロデューサーとしてキーマンになっていることも、スグルさんが教えてくれたんです。この現象は相当おもろいと思ったし、なんか自分にバチってあったんですよね。なるほど、こういうのやりましょか、と」

――いまトラヴィス・バーカーが作っている音楽も、単に90年代や2000年代の焼き直しではなく、いまの音として更新されたものですしね。

「今年、ウィローとやっている曲(“t r a n s p a r e n t s o u l”)が最高でした。最初はウィローをウィル・スミスの娘だと知らなくて。〈何こいつ、超天才じゃん〉って」

――彼女もそれまではオルタナティブR&Bみたいな音楽をやってたんですけど。

「そうなんですよね(笑)。俺、ちょっとわかったんですよ。こいつも飽きたんだろうなって。彼女も〈あ、もうそっちいいわ。こっちのほうがイケてるわ〉と感じたんでしょうね」

――“Boys”は、Aメロの部分をサイケデリックな音像にしているじゃないですか。あそこにはデイヴ・フリッドマン的な鳴りを感じたし、おもしろいサウンドでした。

「それ、片寄さんも言ってたかも。彼はフレーミング・リップスをすごく好きだから、リップスみたいにしようよ、と提案してくれたんです。そういう音作りにおける遊び心は今回も健在ですね」

――3曲目の“Feelin’”もパンク曲だと言えそうですけど、これは70年代終盤のオリジナルパンク色が強い。“Bankrobber”と“Tommy Gun”を掛け合わせたような曲で、めちゃくちゃクラッシュを感じました(笑)。

「なるほど。俺のなかでは、これは完全にランシドですね。俺、めっちゃランシドを好きなんですよ。ああいうシンプルっていうか、しょぼいパンクが好きなんです。だから、ブリンクとかメロコアにはあんまり触手が伸びずにいた。バンドを始めたときから、ランシドみたいになりたいと思っていましたね。特にライブのやりかたはすごく影響されています。うん、ランシドとリバティーンズはデカいですね。どっちもツインヴォーカルだし」

『Smoke!!』収録曲“Feelin’”
 

――そっか、ランシドなんですね。まぁランシドもリバティーンズもクラッシュに強く影響を受けているバンドですからね(笑)。

「俺もピストルズ派じゃなくてクラッシュ派です」

――クラッシュやランシドと同様に、今回はレゲエっぽい曲をやっているのもいいなと思いました。スカを採り入れた“VITAMIN”は、スティールパンも鳴っていてトロピカルなバイブスが出ていて。

「スカはおもろいっすね。いま流行っている音楽ではないのかもしれないけど、俺はそういうものをカッコいいと思っちゃうんだよな。天邪鬼なんだと思います」