「ただいま」と帰ってきたはずが、いつの間にかとても遠くに来ていた。でも、たしかに知っている場所に帰りついている

2020年12月21日、君島大空合奏形態(君島大空、新井和輝、石若駿、西田修大)が、東京・新木場STUDIO COASTにてワンマンライブを開催した。〈光を剥がして纏うこと vol.2〉と題された、この日の公演。何故〈vol.2〉なのかと言えば、このライブは、今年1月に高円寺のライブスペースU-haにて2部制(各定員20名)にて行われた独演会〈光を剥がして纏うこと〉の続編という位置付けが、君島本人の中ではなされていたからのようだ。

年始に定員20名で開催されたミニマムな独奏形態のライブと、年末に開催された、現時点で君島大空史上最大規模(しかも、ソールドアウトとなった)のSTUDIO COASTでの合奏形態のライブ。一見まったく違うもののように見えるそれらに同じ名前が付けられたのは、君島が見出す〈つながり〉がこの2本のライブの間にあったからだろう。

もちろんそのつながりの奥を覗き込めば、細部にはこの2021年という時代を、あるいはもっと前からの彼の人生を歩くなかで君島が経験し、感じ、生み出した、様々な接触と微細な変化、その連鎖があるのだろう。受け手からしてみれば思いもよらない音や言葉のつながりが、その連鎖が、激しく混濁しながらも美しい音楽を生んでいる――君島大空の音楽とはそういうものだし、彼の音楽家としての本質のひとつは、そうやって様々な場所に別々に点在している事象(日々の中に転がっている音や、宙を漂う言葉や、出会う人や、あるいは失われたものも含めて)の間につながりを見出し、そこに〈物語〉を創造できるというところにある。その、いわば〈ストーリーテリング〉の巧みさがあるからこそ、彼の音楽は虚実の境をまたぐ魅惑的な響きを持ち得ているのではないか。

そして、君島大空が紡ぐ物語において、この2021年という年の記憶はこの先、灯台のような役目を果たすのではないか、と私は勝手に思っている。3月にリリースされたEP『袖の汀』について、彼はインタビューで〈戻ってきた感覚がある〉と語っていたが、初の全国流通盤となった2019年の『午後の反射光』よりも以前に作っていた自主制作盤に質感が近いという、ガットギターの弾き語りを主軸としたその作品世界は、彼にとって循環しながら進んでいく命の運動のひとつの帰結点であり、新たな出発点ともいえるものだっただろう。今年、君島は『袖の汀』をリリースし、独奏でのワンマンライブやツアー、さらに合奏形態での〈FUJI ROCK FESTIVAL '21〉などのフェス出演を経て、12月21日、STUDIO COASTでのワンマンへとたどり着いた。ちなみに、開催日の12月21日は、去年、恵比寿LIQUIDROOMで合奏形態での配信ライブ〈層に電送〉が開催されてからちょうど1年の日となる。

「ただいま」と帰ってきたはずが、いつの間にかとても遠くに来ていた。でも、たしかに知っている場所に帰りついている――この2021年の暮れ、君島大空はそんな気分でいるんじゃないかと、これもまた勝手に推測している。