僕はアメリカ黒人音楽のディアスポラ
――そんな『Still Rising』はいろんな角度からあなたがやってきたことを見直した現況報告になっています。あなたの名刺がわりの1枚になっていると思いますし、これはあなたの中でも大切な1枚になったんじゃないかと思います。
「そうですね。50歳になった(71年11月4日生まれ)ということに意味がありますし、また兄が亡くなってしまいすべてが変わってしまったことも大きいです。それはとても辛い経験だったのですが、それを経てここで大きな形で伝えることができたと思います。
かつ、これから何を伝えていきたいかということも明確にしたアルバムだと思います。『Still Rising』というこのアルバムタイトルですが、まだまだ僕には伝えたいことがたくさんあるんだという意味が込められていますね」
――そうですか。『Still Rising』が出た今、これからあなたがどんなことをし、語っていくのかということに興味が湧いてきて仕方がありません。
「僕こそ、これから何をしていくのか、非常に興味を持っていますよ。まだ、この1年半で僕が得た感情や心持ちを自分の中で整理していかなければと思っていますが、今はその過程をあまり急ぎたくないんですね。現在はじっくりと事に当たりたいというのが、正直なところなんです。
とはいえ、悲しい出来事がすべての引き金になっているわけではなくて、今の僕には4ヶ月になる赤ん坊(男の子)がいて、新しい命が生まれた喜びもあるんです。それがどういう意味を持っているのかも考えたいですし、他にも地球の温暖化など、僕はもっと広い事象についても考えていきたい。自分のことだけではなく、自分の子供にも意味のあることを伝えていけたらと思っています」
――アート・アンサンブル・オブ・シカゴのトランペッターであったレスター・ボウイは自らの音楽を〈グレイト・アフリカン・アメリカン・ミュージック〉と称しました。あなたの音楽の場合はどう呼ぶのがいいでしょうか。
「僕はジャズシンガーであると自分では思っていますが、それとともにアフリカン・アメリカン・ミュージックのディアスポラであると思っています。つまり、ジャズの従兄弟であるゴスペルやブルースやソウルなどを組み合わせたり、咀嚼して取り入れたりすることができると思っているんです。実際僕はジャズ歌手でありながら、それをやっています。
また、僕がやっている音楽は皆のもの、共通の財産であるとも思っています。ジャズはアフリカン・アメリカンの人間的なステイトメントであり、人類に対する贈り物だと思います。それをふまえて、世界中で自分の曲を歌っていきたいですね」
RELEASE INFORMATION

GREGORY PORTER 『Still Rising - The Collection(スティル・ライジング~ベスト・オブ・グレゴリー・ポーター)』 Blue Note/ユニバーサル(2021)
リリース日:2021年11月5日
品番:UCCQ-1151/2
フォーマット:2 CD
価格:3,300円(税込)
配信リンク:https://gregoryporter.lnk.to/StillRising_TheCollectionPR
TRACKLIST
CD 1
1. Hey Laura(ヘイ・ローラ)
2. Liquid Spirit(リキッド・スピリット)
3. Revival(リヴァイヴァル)
4. Illusion(イリュージョン)
5. 1960 What?(1960 ホワット?)
6. L-O-V-E
7. Holding On(ホールディング・オン)
8. Concorde(コンコード)
9. If Love Is Overrated(イフ・ラヴ・イズ・オーヴァーレイテッド)
10. I Will(アイ・ウィル) *新曲
11. Real Good Hands(リアル・グッド・ハンズ) *新アレンジ
12. My Babe(マイ・ベイブ) *新曲
13. Bad Girl Love(バッド・ガール・ラヴ)*新曲
14. No Love Dying(ノー・ラヴ・ダイイング) *新アレンジ
15. Why Does My Heart Feel So Bad?(ホワイ・ダズ・マイ・ハート・フィール・ソー・バッド) *モービー カバー曲
16. Dry Bone(ドライ・ボーンズ) *新曲
17. Love Runs Deeper(ラヴ・ランズ・ディーパー) *新曲
18. It’s Probably Me(イッツ・プロバブリー・ミー) *スティング カバー曲
CD 2
1. Natural Blues (With Moby & Amythyst Kiah)(ナチュラル・ブルーズ w/ モービー&アメジスト・キア)
2. Don’t Let Me Be Misunderstood (With Jamie Cullum)(悲しき願い w/ ジェイミー・カラム))
3. Raining In My Heart (With Buddy Holly)(レイニング・イン・マイ・ハート w/ バディ・ホリー)
4. People Will Say We’re In Love (With Ella Fitzgerald)(粋な噂をたてられて w/ エラ・フィッツジェラルド)
5. GrandMa‘s Hands (With Ben L’Oncle Soul)(グランマズ・ハンズ w/ ベン・ロンクル・ソウル)
6. Christmas Prayer (With Paloma Faith)(クリスマス・プレイヤー w/ パロマ・フェイス)
7. Insanity (With Lalah Hathaway)(インサニティ w/ レイラ・ハサウェイ)
8. Make Someone Happy (With Jeff Goldblum)(メイク・サムワン・ハッピー w/ ジェフ・ゴールドブラム)
9. Fly Me To The Moon (With Julie London)(フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン w/ ジュリー・ロンドン)
10. Satiated (With Dianne Reeves)(セイティエイテッド w/ ダイアン・リーヴス)
11. Have Yourself A Merry Little Christmas (With Renée Fleming)(ハヴ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス w/ ルネ・フレミング)
12. The Girl From Ipanema (With Nat King Cole)(イパネマの娘 w/ ナット・キング・コール)
13. Water Under Bridges (With Laura Mvula)(ウォーター・アンダー・ブリッジズ w/ ローラ・マヴ―ラ)
14. Right Where you are (With Lizz Wright)(ライト・ホエア・ユー・アー w/ リズ・ライト)
15. Heart and Soul (With Yo-Yo Ma & The Silkroad Ensemble, Lisa Fischer)(ハート・アンド・ソウル w/ ヨー・ヨー・マ&ザ・シルクロード・アンサンブル、リサ・フィッシャー)
16. Making Love (With Trijntje Oosterhuis)(メイキング・ラヴ w/ トレインチャ・オーステルハウス)
PROFILE: グレゴリー・ポーター(Gregory Porter)
米カリフォルニア生まれ、NY・ブルックリンを拠点に活動。ナット・キング・コール、ダニー・ハサウェイ、マーヴィン・ゲイ他、数々のシンガーから影響を受けて個性を確立。ウィントン・マルサリス、ヒューバート・ロウズ、ニコラ・コンテ等と共演する一方で、ミュージカルやTVにも活動の場を広げた。インディーズよりリリースされた2010年のデビューアルバム『Water』は2011年グラミー賞ベスト・ジャズ・ボーカル・アルバムにノミネート。続く2012年にリリースのセカンドアルバム『Be Good』収録曲“Real Good Hands”もグラミー賞ベスト・トラディショナルR&Bパフォーマンスにノミネートされた。アメリカ、イギリスで数々の〈ベスト・オブ2012〉に名を連ねており、NPR〈ベスト・ミュージック・オブ2012〉、〈100フェイヴァリット・ソングス・オブ2012〉、iTunes〈ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー〉、Soul Train〈Top 10 Albums Of 2012〉、Soul Tracks〈Album Of The Year〉に選ばれる。2013年のブルーノートへの移籍第1弾となるメジャーデビューアルバム『Liquid Spirit』は、リリース直後から世界的大ヒットとなり、ミリオンセールスを達成。ストリーミング再生回数も2,000万回を超え、世界で最もストリーミングされたジャズアルバムという記録を打ち立てた。イギリス、ドイツではプラチナ、フランス、オランダ、オーストリアではゴールドに認定され、地元アメリカでは「ザ・トゥナイト・ショー」や「ジミー・キンメル・ライブ!」で自身初の全国ネットのテレビ出演も果たし、エスクワイア誌とNPR Musicでは〈次にブレイクするアメリカの素晴らしいジャズシンガー〉と紹介された。そして、2014年にはその『Liquid Spirit』で初のグラミー賞ベスト・ジャズ・ボーカル・アルバムを受賞。情熱的なバラード“Hey Laura”は、ベスト・トラディショナルR&Bパフォーマンス部門にノミネートされた。その後も世界中をツアーで廻るなど勢力的にライブ活動も行いつつ、ジャンルを超えたさまざまなアーティストとの共演も果たす。2015年にはエレクトロ・ダンス・ユニットのディスクロージャーと共作し、フィーチャリング・ボーカリストとして参加した楽曲“"Holding On”が、彼らのリリースしたアルバム『Caracal』のリードシングルとしてリリースされ、大ヒット。2016年にブルーノートでの2作目『Take Me To The Alley(希望へのアレイ)』をリリース、この作品でも2017年グラミー賞ベスト・ジャズ・ボーカル・アルバムを受賞、その実力、人気共にNo. 1を確立させた。2017年にナット・キング・コールのトリビュート作品『Nat King Cole & Me』をリリース、コールのソングブックを通じて自身の人生を語った名カバーアルバムとの評を各国で得た。英国女王の前で演奏したり、BBCで彼自身のTVシリーズ「Gregory Porter’s Popular Voices」という番組を持つなど、活動の幅も広げ続けている。