彼女の生き方に賛同するアーティストたちによる記念すべきトリビュート・アルバム

 自分が生きている時代、今起こっていることを自分の作品に反映させなけれなばいけない。それが私の使命だと思っている――『グローリー 明日への行進』の主題歌(コモンとのコラボレーション)がアカデミー主題歌賞を受賞した際のスピーチで、ジョン・レジェンドは、こんなニーナ・シモンの発言を引用していた。同時代のジャズやソウル系のミュージシャンの中でも、もっとも現実と向き合い、公民権運動に関わり、社会正義を訴えかけ、黒人女性としての尊厳を歌い上げたニーナ・シモン(1933-2003)。彼女が、やっと母国でも再び脚光を浴びつつある。

 近年リリースされたニーナのトリビュート・アルバムとしては、ミシェル・ンデゲオチェロの『Pour une Ame Souveraine:A Dedication to Nina Simone』と、メロディ・ガルドーグレゴリー・ポーターらが参加した『Round Nina:Tribute To Nina Simone』がある。この2枚は、ニーナが晩年を過ごしたフランスのレコード会社が制作したもの。

VARIOUS ARTISTS Nina Revisited... A Tribute To Nina Simone RCA(2015)

 一方、今年6月にアメリカで公開されたドキュメンタリー映画『What Happened, Miss Simone?』と連動する形でリリースされた『Nina Revisited』は、米国のレコード会社の制作だ。プロデューサーは、ロバート・グラスパーと5曲で歌声を披露しているMs.ローリン・ヒルの2組。声がやや掠れて粗くなったローリンにニーナの影を見出すのはたやすいが、その分、新鮮味に乏しい。

 新しい解釈という点では、レゲエ調に調理されたジャズミン・サリヴァンの 《Baltimore》やメロウ・グルーヴに貫かれたアッシャーの《My Baby Just Cares For Me》、ラップにニーナの曲名が引用されたコモン&レイラ・ハサウェイの《We Are Young Gifted & Black》を推す。そして極め付きは、天にまで届きそうなヴォーカル&コーラスが印象的なアリス・スミスの《I Put A Spell On You》。終盤に聞こえてくるグラスパーのピアノも、この祈りのような歌にふさわしく、何度も繰り返して聴きたくなる名唱&名演だ。

   

LIVE INFORMATION
Ms.ローリン・ヒル来日公演
○都市型フェス〈MTVpresents SOUL CAMP 2015〉
9/23(水・祝) 会場:TOYOSU PIT + MAGIC BEACH
soul-camp.jp/
○Ms.ローリン・ヒル単独公演
9/25(金)、27(日) 会場:Billboard Live TOKYO
9/29(火) 会場: Billboard Live OSAKA
www.billboard-live.com/