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どこを切り取っても〈楽しい〉サウンドはTikTokにぴったり

しかしデビュー直後のメーガンに対して、批評家たちの評価は分かれた。〈ノスタルジア〉を刺激するサウンド作りは好評を集めたものの、彼女のソングライターとしての実力には〈楽しいけれど単調で深みがない〉と留保がついたのだ。

確かにメーガンは生の苦しみを深く掘り下げるわけでもなく、複雑でドラマチックな曲作りをするわけでもない。だがどの曲も聴いて無条件で楽しいと感じられる、そんなポップスとしての優秀さは、もっと高く評価されてもよかったのではないか?

TikTokでの6年越しのバイラルヒットは、その魅力にリスナーたちが敏感に反応した結果だろう。プラットフォームの特性上短尺でわかりやすくインパクトを残すことが求められるTikTokに、どこを切り取っても〈楽しい〉と感じさせる彼女の音楽はぴったりハマった。Y2Kファッションの再隆盛、シティポップやポップパンクの流行など、〈ノスタルジア〉を感じさせるものが好まれるいまのムードも、彼女にとっては追い風だ。“Title“だけではなく、他の曲も伸びているあたり、ユーザー側から彼女の音楽の〈再発見〉が進んでいることが感じられる。

※TikTokヒット曲と音楽チャートヒット曲の違いをAIで分析した結果。Music Ally Japan内の記事〈TikTok発ヒット曲に共通する歌詞、ムード、曲調とは?〉に詳しい

 

TikTok時代に聴くべきメーガン・トレイナーの6曲

ここではいまTikTokで話題になっているものも含め、メーガンの数あるヒットソングのなかから厳選した6曲を紹介する。ポップでキャッチー、懐かしく楽しい、メーガンの世界観を感じてほしい。

 

“NO”(2016年作『Thank You』収録)

早すぎたY2Kリバイバルソング。ブリトニー・スピアーズ“Overprotected”(2001年)を彷彿とさせるビジュアルに、ネプチューンズを意識した軽快なビートは、2000年代ポップスそのものだ。過去のポップカルチャーへの愛を感じさせる一曲。

 

“Holidays feat. Earth,Wind & Fire”(2020年作『A Very Trainor Christmas』収録)

なんとアース・ウィンド&ファイアーをゲストに迎えたクリスマスソング。メーガンが大ファンであることから実現したそう。リッチでゴージャスなディスコ/ファンクサウンドを展開しつつ3分以内に収める手腕が見事。

 

“Me Too”(2016年作『Thank You』収録)

ミニマルなビートにダーティーなベース、ファンキーなメロディーが絡み合う、クラブ仕様な一曲。〈もし私があなただったら/私になりたいって思うはず〉と繰り返されるサビのフレーズは抜群の中毒性。ダンスチャレンジ〈#metoodancechallenge〉が昨年TikTokでヒットし、現在の快進撃へとつながるきっかけになった。

 

“Lips Are Movin”(2015年作『Title』収録)

“All About That Bass“の大ヒット後に出たセカンドシングル。冒頭から〈ベース(お尻)だけが目当てじゃないって言って?〉と強気な態度を隠さないメーガンの堂々たる歌唱と、キャッチーなコーラスが強烈に耳に残る一曲だ。NHKで放送されたドラマ版「スクール・オブ・ロック」で使用されたということもあり、聴いたことがある!という若い世代も多いそう。“Title”後にまず聴きたい一曲として、いま注目が集まっている。

 

“Dear Future Husband”(2015年作『Title』収録)

〈未来の旦那さまへ〉というタイトルが示す通り、将来の夫に向かって自分が求めることを並べていく、というコンセプトの一曲。ドゥーワップ的な甘いコーラスはもちろん、思わず踊りだしたくなるようなファンキーなブラスの存在感が心地よい。こちらもダンスチャレンジやファンカムなどに使われ、再生数を伸ばしている。西野カナ“トリセツ”(2015年)と通じるコンセプトだと、一部のリスナーからは共感を集めている模様。

 

“Title”(2015年作『Title』収録)

シンプルで明るいメロディーをカリビアンなドラムが彩る、風通しの良いポップソング。〈早く私に「彼女」という称号(タイトル)を与えて〉とリフレインする可愛らしいフックが魅力的。メーガン自身も大のお気に入りだそう。前述の通り、昨年12月にダンスチャレンジで使われ、世界的に人気が爆発。日本でも数多くのインフルエンサーがチャレンジ動画を投稿した。