アンビエントやトラップを咀嚼して未来派R&Bを志向した本作は、歌詞の面でも挑戦的。ミスコンや整形への苦言も込めて女性の美について言及したり、ナイジェリア出身の女流作家によるスピーチを引用したり。フェミニスト視点で男女平等を訴える曲も多い『Currency Of Man』ですが、こちらも負けていません。
ユーモアたっぷりに社会へ毒を吐くリリー。性差別に異を唱えるメロディ“She Don't Know”に共感したら、同じテーマを扱いながらあえて〈ビッチ〉と連呼した“Hard Out Here”を、拝金主義を批判した“Same To You”が気に入ったら、セレブの名を挙げて別の角度からそれをこき下ろす“Insincerely Yours”をぜひ聴いてみて!
チリ人ラッパーによるこの最新作は、ドレイク以降の空気を纏った過去2作に比べてチャランゴやケーナを用いるなど南米色を強め、行きすぎた資本主義からの脱却と、自分たちのルーツへの回帰を促した一枚。格差社会を通じて政治の腐敗を炙り出す『Currency Of Man』収録曲“It Gonna Come”と、めざす場所は同じ!?
DVを題材にした“Ultraviolence”をはじめ、ドロッドロのトーチ・ソングを介して現代人の傷をえぐる技はラナ嬢の大きな武器。そうしたテクニックをメロディも“No Man's Prize”で披露しています。だめんずとの別れ際を歌っているようで、これは女性を軽視する男どもへの最終警告だと私は感じました。
メロディの憧れる歌手のひとりがビリー・ホリデイ。ハードなギターとは対照的に静かに激情を込めた歌い口の“Preacherman”は、“Strange Fruit”へのオマージュとも取れるわけで……。いまだになくならない人種差別への怒りや悲しみは、カサンドラもこのレディ・デイのカヴァー集にしたためています。
ジャマイカ国内の貧困を女性目線で綴った大ヒット曲“Trigger”ほか、しなやかなワン・ドロップを敷いたこの王道ルーツ・レゲエ盤で、産後も第一線で活躍するわよ!という意志を示したエターナ。ただただ現状を嘆くだけじゃなく、そこから光を見い出して前へ進まんとする本作の力強さは、メロディの“Morning Sun”とも通じるところ。
ニッキー・ミナージュ“Anaconda”やJ.Lo“Booty”など、昨年はスリム体型を良しとする風潮へのアンチ曲が人気を集めましたが、その最大ヒットが本作収録の“All About That Bass”。ほかにも、一貫して〈自分らしくあれ〉といったメッセージを放つメーガンの歌は、メロディ“Don't Talk”と共に女性たちを勇気付けます。
30年以上も前から〈自分らしくあれ〉と訴えてきた女帝。この最新作でも、愛(とエロス)でもって偏見や差別社会に立ち向かう姿勢を見せています。2003年の『American Life』ぶりとなるコンシャス路線も展開しつつ、EDMや電気ダンスホールを呑み込みながら、それを重苦しさゼロでキャッチーに聴かせるところが凄い!