Page 2 / 3 1ページ目から読む

『Blue Note Re:imagined』でボビー・ハッチャーソン“Montara”をカバーした理由

――2021年からブルーノートに在籍するあなたたちですが、その前にブルーノートの名曲を再構築した『Blue Note Re:imagined』(2020年)でボビー・ハッチャーソンの“Montara”(75年)をカバーしています。日本ではKan Sanoによるドナルド・バード“Think Twice”のカバーとのカップリングでスプリット7インチも出されましたが、このカバーが契約のキッカケになったのでしょうか?

NK-OK「契約に関しては、あのカバーが出来上がった直後にブルーノートのフランスから話をもらったんだ。そうしたら新型コロナウイルスが蔓延し始めて、やりとりは全てオンライン。メールで何十往復もして、契約書にマウスでサインしたよ(笑)。ブルーノートは自分たちが影響を受けたアーティストが多くて、あのコンピレーションでカバーのオファーがあっただけでも嬉しかった」

2020年のコンピレーションアルバム『Blue Note Re:imagined』収録曲“Montara”

Mr DM「ボビー・ハッチャーソンの“Montara”はふたりとも大好きな曲で、自分は10代の頃から聴いていた。コードが3つか4つしかないと思うんだけど、ハーモニーも含めたシンプルさに惹かれたんだ。シンプルとは言っても演奏するのは簡単じゃないけどね。

あと、この曲を選んだ理由としては、マッドリブが『Shades Of Blue』(2003年)でリメイクしていたことに刺激を受けていたっていうのもあるね」

マッドリブの2003年作『Shades Of Blue』収録曲“Montara”。『Shades Of Blue』はブルーノートのアーカイブをリミックスしたアルバム

NK-OK「メロディーが素晴らしい。カバーしやすいメロディーというか。このコンピレーションを作る際に誰もこの曲を選ばなかったのが不思議なくらい。ただ、カバーしやすそうでも実際にやってみると難しい。凄く時間がかかったな」

 

コラボが自分たちの最大の特長

――曲作りのプロセスはどんな感じなのでしょう?

NK-OK「自分はドラムス(ビートメイク)をやるけど、まずどんなスウィングにしようか考えて、リファレンスになるようなものを引っ張ってきてインスピレーションを受ける。その間にデヴィッドがメロディーやハーモニーを考えて、ベースやキーボードで音を作る。それから音響的な部分やアレンジといった外堀を考えて曲の方向性を決める。

だいたいの構成が決まったところでビジネスモードに入って、インストゥルメンタリストやボーカリストを探し始めるんだ。これまでの作品を聴いてもらえばわかると思うけど、自分たちはコラボレーションが本当に好きで、これがブルー・ラブ・ビーツ最大の特長だと言ってもいい」

――ブルーノートからはアルバムに先駆けてEP『We Will Rise』を出し、同じ2021年にはNK-OKとカイディ・アキンニビ(UKのサックス奏者)の共同名義で、マヌ・ディバンゴ“Soul Makossa”(72年)のリメイクを含むコラボアルバム『The Sounds Of Afrotronica』も出しています。今回のアルバム『Motherland Journey』は、これらの延長線上にある作品と考えてよいでしょうか?

NK-OK「『The Sound Of Afrotronica』に関しては、Mr DMも参加しているから、トラックなどはブルー・ラブ・ビーツを思わせる部分もある。ただこれは、カイディをゲストに迎えた僕のソロ作っぽい実験的なプロジェクト。昔、ヒップホップをやる前の自分はグライムに影響を受けていて、ああいうハードヒッティングなドラムスが鳴るようなエネルギッシュな音楽をもう一度やりたいと思ったんだ。

でも、やっているうちにブルー・ラブ・ビーツの音楽と合体させてみようと思って。今回のアルバムだと、“Blow You Away (Delilah)”にその影響が出たと思う」

カイディ・アキンニビ & NK-OKの2021年作『The Sound Of Afrotronica』収録曲“Soul Makosa”

――EP『We Will Rise』にも今回のアルバムにも入っている、ゲットー・ボーイを迎えたアフロビーツ的な曲ですよね。

NK-OK「アフロビーツに関しては、ナイジェリアやガーナに行って現地の音楽を聴いていて、ウィズキッドの曲をガンガンにかけていた。それで出来たのがEPの『We Will Rise』なんだ」

――アルバムでは“Blow You Away (Delilah)”に加えて“Sensual Loving”にもゲットー・ボーイが客演しています。さらに、あなたたちとゲットー・ボーイは、アンジェリーク・キジョーのニューアルバム『Mother Nature』(2021年)に収録された“Fired Up”に客演してしますが、これらは同じ時期に制作されたのでしょうか?

NK-OK「ゲットー・ボーイはマネージャーが繋いでくれたんだ。それで“Blow You Away (Delilah)”のラフなデモを送ったら、数時間後にボーカルのトラックが返ってきて、〈こいつは本気だ!〉と。スタジオでの仕事も凄く早かった。それで彼とは2曲やったんだ。

『Motherland Journey』収録曲“Blow You Away (Delilah) Feat. Ghetto Boy”

そしたら、“Blow You Away (Delilah)”のデモを聴いて〈こういう音が欲しい〉って連絡をくれたのがアンジェリーク・キジョーだった。彼女はレーベルがデッカなので親会社でブルーノートとも繋がっているからね。Zoomで打ち合わせを始めたんだけど、こんな音を作りたいという明確なビジョンがあって、彼女のほうが音楽監督みたいな立場だった。曲を作る前からアーティストが情熱を持ってやってくれるのは嬉しい。

しかも、この曲を含めた彼女のアルバムがグラミー賞にノミネートされて、自分たちも〈グラミー・ノミネート・プロデューサー〉という肩書きをもらった。クレイジーだよ」

アンジェリーク・キジョーの2021年作『Mother Nature』収録曲“Fired Up”