心と心の繋がり方

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『プラネットフォークス』 キューン(2022)

 そんな『プラネットフォークス』のオープニングを飾るのは、近年後藤と交流を深めていたROTH BART BARONをフィーチャーした“You To You”。現代の〈フォークス〉を体現する存在であるROTH BART BARONの参加は非常に象徴的であると同時に、この曲タイトルからは〈君繋〉を連想せずにはいられない。ポエトリー・リーディングからビッグなコーラスへと展開する2曲目の“解放区”は“You To You”以上にROTH BART BARONに近い音楽性であり、この冒頭2曲がアルバムのカラーを決定づけている。また、この2曲の作曲クレジットは山田貴洋(ベース/ヴォーカル)と後藤の連名で、他の曲も含めて山田が本作のソングライティングに大きく貢献しているのも見逃せない。

 アルバムに先立ってシングルで発表されていた“Dororo”や“エンパシー”は、ロック・バンドとしてのアジカンの現在地を伝える楽曲。ダークでエッジの効いた“Dororo”は“リライト”の延長線上にあると感じられる一方、伊地知潔(ドラムス)によるドラムンベース風のリズムやシンセ・サウンドを組み合わせた“エンパシー”は新たなアンセムだ。〈シンパシー〉を更新する〈エンパシー〉は、現代における重要な心と心の繋がり方であり、〈きっと憐れみも悲しみも/煎じ詰めればエンパシーで/僕らの魂の在処かも〉というラインにグッとくる。

 ロンドンでレコーディングが行われ、ソフト・サイケなサウンドで〈対話〉の重要性を歌う“ダイアローグ”、顔の見えないSNS上のコミュニケーションの難しさを歌ったような“De Arriba”に続き、アルバム前半のクライマックスを飾るのが荘厳なストリングスを配したバラード“フラワーズ”。〈綺麗に忘れても/未だ/どこかで笑っていて〉という歌詞は、無数の〈君という花〉との消えることない繋がりを歌っているかのようだ。