84年結成、グランジムーブメントの到来に先駆けてシーンで轟音を響かせ、オルタナティブロックの黄金時代を象徴する存在になった伝説的バンド、ダイナソーJr.。97年の解散までに数々の名曲、名盤を残した彼らは、2005年にJ・マスキス(ギター/ボーカル)、ルー・バーロウ(ベース)、マーフ(ドラムス)というオリジナルメンバーで再結成。以降、2021年に12作目のアルバム『Sweep It Into Space』をリリースして高い評価を得るなど、現在に至るまで独立独歩の活動を続けている。
そんなダイナソーJr.についての初の公式ドキュメンタリー映画「ダイナソーJr./フリークシーン」が、2022年3月25日に公開された。音楽だけで結ばれた3人の率直な証言や貴重なフッテージを交えて、フィリップ・ロッケンハイム監督が愛情あふれる視点で描くのは、バンドの崩壊と再生だ。ここでは、本作についてルー・バーロウが語った、貴重なインタビューをお届けする。 *Mikiki編集部
俺たちについてのドキュメンタリーが作られるのは驚かなかった
――映画の企画が持ち上がった経緯、どのように始まったかを教えてください。またバンドの皆さんはドキュメンタリー映画の企画について当初はどのように捉えていましたか?
「映画の企画がスタートしたのは相当前のことだ、たしか2005年に(バンドが)再始動した直後くらいかな。監督はJの義理の兄弟で、Jの妻の弟だ。俺たちのバンドについてのドキュメンタリーが作られることに特に驚きはなかった。俺ら世代で少しでも成功した感じのあるバンドは皆ドキュメンタリーが作られているからね」
――音楽ドキュメンタリーにもいろんなかたちがあります。歴史を追うものや、ある事象を描くもの、人間関係を描くものや、音楽・ライブにフォーカスしたものなどなど。どんな音楽ドキュメンタリーが好きですか?
「バンドの昔のフッテージが多く使われているドキュメンタリーが好きだ。音楽評論家やあまり関係ないミュージシャンたちが出てきてバンドについて語っているのは嫌いだな。題材となるバンドメンバーの証言が好きなんだ。ほとんどの音楽ドキュメンタリーは好きじゃない、俺が求めているものを与えてくれないから」
――昔の映像など、過去のものはメンバーの皆さんが持っていたものなのでしょうか? それとも監督やプロデューサーが集めたものなのでしょうか。
「バンドのアーカイブ映像はそんなに多くはない。フィリップは何でもいいからと昔の素材を探し回っていた。リー・ラナルドはソニック・ユースの初期のツアーをビデオで撮っていて、我々も2週間のツアーを一緒にやったから、その素材はとてもよかったな」
――バンドから映画(監督)に対してのリクエストや修正などどの程度ありましたか? それとも監督の思うように作ってもらったものなのでしょうか。
「フィリップの好きなようにやってもらい、すべて任せていた。このプロジェクトはとても長い年月をかけて完成したんだ」
――完成した映画を初めて観たのはどういう状況だったのでしょうか? メンバー3人一緒にですか? その時の状況やメンバーの反応や感想を教えてください。
「メンバーは皆別々に観たんだ。マーフの証言が多く使われていたのが良かったよ。企画の進行があまりに長い時間をかけたものだったから、最終的には俺は忘れていたよ。自分の言ったこと、自分の姿を観るのは嫌いだが、まあいいだろう」
日本へ行くのは毎回面白いよ
――日本のバンドで知っているバンドはいますか? もしくはいいなと思えるバンドはいますでしょうか?
「凄いと思った日本のバンドはたくさんあるよ。TEENGENERATE、BOREDOMS、RUINSなど。日本のミュージシャンは大抵の場合、信じられないようなスタイルで優れていると思う」
――来日した際のエピソードなど憶えていることがあれば教えてください。今後来日する可能性はありますか?
「毎回日本へ行くのは面白いよ。最高のツアーは自分のバンド、フォーク・インプロージョンがディアフーフの前座で5か所くらいのライブで回ったときだ。大阪の電車のトンネルみたいなところでライブをやったりね。また北海道でマイク・ワットのオープニングをやったときは、小さな村でのライブで素晴らしかった」
――映画を観に来る日本のオーディエンスに向けてのメッセージをお願いします。
「なるべく早いうちにまた行くよ! 日本は最高だ!」
FILM INFORMATION
ダイナソーJr./フリークシーン
原題:Freakscene: The Story Of Dinosaur Jr.
監督:フィリップ・ロッケンハイム
製作:ステファン・ホール/アントワネット・コスター/フィリップ・ロッケンハイム
共同製作:ダイナソーJr./J・マスキス
出演:ダイナソーJr.(J・マスキス/ルー・バーロウ/マーフ)/キム・ゴードン(ソニック・ユース)/ヘンリー・ロリンズ(ブラック・フラッグ)/ボブ・モールド(ハスカー・ドゥ)/サーストン・ムーア(ソニック・ユース)/フランク・ブラック(ピクシーズ)/ケヴィン・シールズ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)/ソニック・ブーム(スペースメン3)/マット・ディロン
提供:キングレコード
配給:ビーズインターナショナル
(2020年|82分|ドイツ=アメリカ合作)
© 2020 by Rapid Eye Movies / Virus Films / Dinosaur Jr. Inc.
2022年3月25日(金)よりシネマート新宿・シネマート心斎橋にて、ほか全国順次公開