幾何学模様――バンド名からして既に不穏で一筋縄ではいかないが、実際、その音楽性もひとことで形容するのが難しい。そして、これまで辿ってきた道のりも、長く曲がりくねったものだった。2012年の路上セッションをきっかけに、楽器初心者を含む5人で結成。シタール奏者を含む5人編成で、東京のライブハウスに出演するようになる。
その後、サイケデリックで面妖なサウンドが海外でも支持されるように。クルアンビンやコナン・モカシンとツアーを周ったり、〈ボナルー〉、〈ロスキルド〉といった海外の大型フェスに出演したりと、徐々に知名度をあげていった。そして、逆輸入という形で日本でも広く知られるようになってゆくのだった。
そんなタイミングで届けられたのが『クモヨ島(Kumoyo Island))』なるアルバム。独自のサイケデリック路線を歩んできた彼らの〈今、ここ〉が凝縮されている。現在はアムステルダムと東京に分かれて生活している5人だが、夏には〈フジロックフェスティバル ’22〉に出演が決まっている。そして、年内のツアーをもって活動休止に入るとのことだ。DIY精神に溢れる活動形態や音楽的なルーツなどについて、ドラム/ボーカルでリーダーのGo Kurosawaに話を訊いた。
※このインタビューは2022年4月20日発行の「intoxicate vol.157」に掲載された記事の拡大版です
高田馬場の路上でスタートした〈素人にしかできない音楽〉
――資料によると、2012年に高田馬場の路上で活動をスタートされたそうですね。
「高田馬場で僕とギターのTomo(Katsurada)が出会ったのが始まりですね。駅前のロータリーで、ギターとパーカッションで音を鳴らしていたんです。僕は地元が高田馬場なんですけど、Tomoが早稲田の学生でスケートボードをやってたんですよ。そういう、スケボーのシーンみたいなのが当時、高田馬場にあって。高田馬場って音楽スタジオもたくさんあるし、ライブハウスに出る人も多かったんですけど、お金がかかるのが嫌で。路上で活動するとスタジオ代を払わなくていいし、もしかしたら投げ銭ももらえるかもしれないって(笑)。段ボールに空き缶をつけた自作の楽器を使ったり、キーボードとかピアニカとかリコーダーを持ってくる人もいて」
――幾何学模様はライブでも曲順をほとんど決めずに、セッション的に演奏することが多いそうですが、それってその当時から続いているんですね。
「そうですね。ツアーを始めてから、同じ曲を40回とか50回とかやるのが嫌だったんですよ。絶対に飽きるので。で、どうやったら飽きないかを工夫していたら、曲順を決めないでやろうってなって。その時々の会場の雰囲気でそこに合うストーリーを考えて、毎日セットリストを変えていました」
――そこからどうやって現在の編成に?
「僕は27歳になるまでドラムをやったことがなかったので、ほぼ楽器未経験だったんです。だから、〈素人にしかできない音楽は何か?〉ということを追求しようと思って結成しました。ギターのDaoud(Akira)は、Tomoが大学の喫煙所で出会ってスカウトしました。なんか一緒にやろうよって誘って。あと、僕の弟のRyu(Kurosawa)がインドに留学していてシタールが弾けたので、帰国したころに〈一緒にスタジオ入らない?〉って軽いノリでお願いしました」