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Photo by Kana Tarumi

周りの影響を受けなかった結果、独自の音楽に発展した

──兄弟間で試行錯誤しながら、一方で外部との繋がりはいかがですか? ヒップホップもダンスミュージックも現場ありきの音楽というか、ヒップホップはシーンやフッドの繋がりがそのまま音楽になっていたりもしますよね。

Kobamuta「それが全くなかったんですよ。自分たちの周りに音楽をやってるやつもいなかったし、それを聴いてくれる人もいなかったので、周りの影響を受けてこなかった結果がRoss Moody独自の音楽に発展していったんです」

慧多「渋谷のクラブにお願いしに行ったり、SNSで声をかけられた時にDJをやらせてもらったりしたんですけど、自分たちの空気感と上手く合わないことが多すぎて、萎えてしまったんです。それで〈やっぱり家が最高!〉ということになり、今に至るという」

──なるほど。その後、Ross Moodyとしては、活動を始めた2019年にファーストアルバム『What Murdered Me』、2020年に『Without Schools・The Mixtape』を配信でリリースされていますが、今は配信が取り下げられて、聴けなくなっていますよね。

Kobamuta「どちらのアルバムも今聴くといい曲もあれば、極端にクソだなと思う曲もあって、それをレーベルの方に相談したら、一度取り下げて、その中からセレクトして、改めて発表し直そうということにしたんです。

でも、何故、極端にクソな曲が生まれたかというと、僕たちはもともと楽器をやってなかったこともあって、コードを弾いて、メロディーを歌ってみても、普通にハズれたりしていて、そのことに気づいてなかったんですよ。それが経験を重ね、善し悪しが判断出来るようになって、これはマズいと初めて気づいたという」

慧多「それは2人のなかだけで完結していた弊害ですよね。常に新しいことをやろうとぐいぐい前に進んではいるんですけど、その過渡期の曲まで表に出てしまっていたんですよね。

過去2作というのは、今振り返ると、もっとヒップホップ然としたトラックだったというか、ただ、よくある曲にはしたくなくて、そこからはみ出そうとしていた感じですね。でも、今回のアルバムはそういうことよりも自分が今作りたいサウンドをより深く掘り下げていくようになりましたね」

 

ermhoi、石若駿、マーティ・ホロベックらと作り上げた『A Farewell to Nostalgia』

──今回のアルバムは、ヒップホップ的なワンループで押し通した曲は少なくて、パターンを細かく変えたり、展開を付けるリズムアプローチになっていますよね。

Kobamuta「そうですね。最初にラップを乗せる時のトラックはシンプルなループがベースになっているんですけど、そこにラップを乗せて送り返すと、ドラムを抜いたり、リズムパターンを変えたトラックがまた返ってくるっていう」

『A Farewell to Nostalgia』収録曲“Off The Wall (feat. ermhoi)”

──では、2人の間でトラックを行き来させることで、曲をどんどん変化させていくRoss Moody独自の手法が確立されたと。なおかつ、今回は、外との繋がりが希薄だった2人がermhoiさんをフィーチャーした“Off The Wall”や石若駿、マーティ・ホロベックからなるリズム隊を招いた“Marty Said”だったり、ゲストが多数フィーチャーされていますよね。

Kobamuta「代官山にDTC(代官山ティーンズ・クリエイティブ)という施設があって、基本的には児童館みたいなところなんですけど、そこはスタジオも併設されていて、毎週末に音楽のワークショップをやっていて、僕らは選曲家の桑原茂一さんの講座に通っていたんですけど、そこで知り合ったのが、“End of Nostalgia”に参加しているRem Eguraや“In The Forest”に参加しているJames Alexander Harukiなんですよ。彼らとはバンドを組んで、渋谷PARCOでライブをやったんですけど、その時にいいパフォーマンスが出来た曲を今回そのまま音源にしたのが“End of Nostalgia”や“In The Forest”だったりするんです。

そのDTCでは、クリエイターと若者をコラボさせる企画が毎年あって、そこで僕たちとermhoiさんが曲を作って、ライブをやることになったんですけど、コロナの影響でライブが出来なくなったので、作った曲を発表しようということになって、2020年に共作EP『We Only Met Once』をリリースしたんです。そして、その曲をマーティが気に入って、彼が駿さんとやってるバンド、SMTKの曲にフィーチャーしてくれたんです。そういう流れもあって、今回、ermhoiさん、駿さん、マーティに加わっていただいた次第です」

Ross Moody × ermhoiの2020年のEP『We Only Met Once』収録曲“How Can You”