(左から)本村拓磨、永井秀和、内村イタル、伊藤里文、砂井慧
Photo by 草野庸子

2020年6月にリリースされ、各方面で絶賛されたファーストアルバム『MY GENERATION』からほぼ2年。5人組ロックバンド、ゆうらん船のセカンドアルバム『MY REVOLUTION』がリリースされた。

年輩のリスナーだと〈ザ・フーから渡辺美里かよ〉とツッコミを入れたくなるかもしれない。だが、これは単なるこじつけではない。その2つのタイトルを〈自分の時代の言葉〉から〈変わってゆく自分〉と読み解けば、表現者としての彼らの真摯な姿が見えてくる。実際、この新作『MY REVOLUTION』は、次のチャレンジに向かうバンドをしっかりと記録したアルバムになった。

また、その〈MY〉は、ソングライターで、シンガーとしてバンドのフロントに立つ内村イタルだけのためのワードではなく、このバンドが5人それぞれの〈MY〉によって成り立っていることを表していることを取材を通じて強く感じた。5人それぞれが自分自身のなすべきことを考え続けているからこそできた音楽が鳴っている。

〈サイケ〉や〈フォーキー〉と呼ばれることの多かった彼ら。コロナ禍で時間をしっかりとかけて制作された新作で無意識に向かっていたのは〈踊れる〉サウンドだった。単に身体的にダンサブルということではなく、外側からまとわりついてくるイメージやレッテルを取り払って自由に動き出すための方法でもあったとも思える。

今までよりもさらに外海に漕ぎ出そうとしているゆうらん船の現在地を記録した『MY REVOLUTION』について、メンバー5人に訊いた。

ゆうらん船 『MY REVOLUTION』 O.O.C(2022)

 

時間をかけて、みんなで曲を作りあげていった

──セカンドアルバムのレコーディングがスタートしたのは、いつ頃ですか?

本村拓磨(ベース)「制作のスタートは去年の6月なんですけど、全体像は今年に入ってようやく見え始めました。録音作業と内村くんの作曲がわりと並行して進んでいたので、途中までは全然先が見えてない感じでした」

──結構長くレコーディングしていたんですね。

本村「そうですね。ファーストは伊豆で合宿して一気に録ったんですが、今作では月に一回くらいのペースでレコーディングスタジオに集まったりしてました。今回は何でこういう作りになったんだろう?」

砂井慧(ドラムス)「個人的には前までの合宿でまとめて録る方法よりは、今回みたいに集まってベーシックを録るけど、それを各自が持ち帰って考えて、1ヶ月後にあらためて上物を録るという時間を置いた録り方のほうが単純にいいものになる気はしていました」

内村イタル(ボーカル/ギター)「ファーストのときはバンド用のアレンジをある程度固めて合宿に持っていった曲も数曲はあったんですけど、今回はレコーディングと曲作りが並行していたこともあり、わりと弾き語りの状態で曲を持っていってましたね。半年以上かけてレコーディング途中でどんどん新しい曲を足してゆく、みたいなペースでした」

『MY REVOLUTION』収録曲“Flag”

──作曲者としての内村さんからすると、その変化は大きかった?

内村「最終的にどうなるかを特に想定せずに作った傾向が今までより強いかなと思います。曲もわりとコードが少ないループ系が多くて、アレンジの余地があるみたいな曲作りをしていたかな。みんなで曲を作りあげていったところはすごくあります」

──コロナ禍でもあったからこそ、あまり頻繁に集まらないという方法だったということもありますよね。歌詞はどうですか? このコロナ禍の2年を経験したことで変わりました? それとも基本的な意識は変わらない?

内村「結構変わったかな。今までとは大きく身の回りの環境も変わったし、歌詞はちょっと暗くなったかも(笑)」

──暗くなったというか、言いたいこと、願っていることを感じ取りやすくなっているように聴こえました。

内村「そういう気持ちの部分での切実な感じはありますね。気持ちの変化は大きかった」