なんだか知らず知らずのうちに二か月も空いてしまった。
書くことがないのと書く気がないのとのダブルパンチだったのでしょうがないか、というかしょうがないかと思ってほしい。この連載は、なんというか僕が力強く爽やかなモチベーションを携えて日常を掬いあげてやらないと記事にならないのだ。
それなのに僕という人間は「いやだから」という理由でもうすぐ27歳になるのにずっと家にいるような生きものなので、ときどき力強さ?爽やか?モチベーション?日常?掬う?お釈迦様?みたいな感じ(モンスターファームで忠誠度のひくいモンスターが戦闘中「意味不明」になって技が出せなくなったときのあれとまったくおなじやつ)になって、能動的になにかをするということが不可能になってしまうのだ。初代モンスターファームのアプリ移植、けっこう楽しみだな。
とにかく、なにが言いたいかというと「この連載はけっこうしんどいのでゆっくりやりましょうや」ということだ。僕もゆっくりするから、みんなもゆっくりすればいいと思う。まあ月二回更新とか勝手に言いはじめたのは僕なんだけど。
8月11日
バーンキューのワンマンライブを観に下北沢ガレージにいった。
バーンキューというのは僕のバンドSo Sorry,Hoboでギターを弾いている岩井正義がギターボーカルを務めている(もし区別をつけるとするならこっちが本業ということになる)バンドで、詳しくはこのあいだ公開されたこの記事を読んでほしい(宣伝がうますぎる)。
記事にもあるようにバーンキューは2日に1回かそれ以上のペースで路上ライブをやっていて、はっきり言ってそんなの異常だと思う。頭のネジがメンバー3人全員吹き飛んでいないとできない芸当だ。
「毎日演奏すればカッコいいバンドになると思うんだよな」というのは高校生のころの岩井がよく口にしていた言葉で(僕たちは高校生のころからいっしょにバンドをやっている)、8年ぐらい越しに岩井はその言葉を実現したということになる。えらい。
そうやって路上ライブを重ねた結果、彼らは現在すごくいいサイクルにはいっているのだけど、そのへんについても記事には詳しく書かれている(宣伝が、うますぎる)。
この日のワンマンはお客さんもほぼ満員で、本当の本当に誰も観に来ていなかった時代を(しかも長いこと)見ていた側からするとグッとくるものがあった。ライブそのものもすごくよかった。
ワンマンが終わろうがなんだろうが路上ライブは継続するらしいので、もし興味があれば夜の10時とかに新宿駅の周辺で騒がしい3人のネジ飛びを探してみてほしい。もしかしたらおまわりさんに怒られている最中かもしれないけど。
8月16日
この日は吉祥寺シルバーエレファントでライブだった。
出番が22時ちかくとかなり遅かったので時間のつかいかたがよくわからなくて、店内で食べればいいのに持ち帰りにしたモスバーガーを路上にしゃがみこんで食べたりしていた。どうしてあんなことしたんだろう。
ライブはすごくよくできた。共演の人たちともめずらしくたくさん話した。
それにしても次のライブが11月末まできまっていないのでどうしたもんかな、という気持ち。
いまいろいろあって制作期間というやつなのだけど、それでも10月には1本ぐらいやりたいな。本当にすべてのブッカーやイベンターから嫌われているのでこういうことになる。まあいいか。いいのか?
8月23日
ゆうらん船の企画を観に吉祥寺スターパインズカフェにいった。
ゆうらん船は今年のフジロックにルーキー枠ででたり、新譜のリリースを控えていたりといまとてもいい感じで、実際この日もたくさんお客さんがはいっていた。僕はずっと岩井と二階席から観ていた。
この日出演していた工藤祐次郎さんというかたのライブがとてもよくて一発で好きになった。
客演に呼ばれた本村が工藤さんに指示されるまま次々といろんな楽器を持ち替えては鳴らすくだりですごく笑ってしまった。
ゆうらん船のライブも本当にいろいろみなぎっている、という様子で観ていて元気が出た。
内村イタルは僕が知っているなかで一番音楽と遊ぶのが上手な人間なので、彼といっしょに遊ぶ人がこれからどんどん増えていくことを願う。
終演後は本村とラーメンを食べて帰った。
8月27日
挫・人間の手伝いで新宿レッドクロスにいった。
この日はトモフスキーさんとのツーマンだった。
挫・人間のメンバーも僕もファンなのですごくうれしかった。
特に夏目は大大大ファンなのですごくすごくうれしそうだった。
下川も言っていたけど、トモさんの見た目でトモさんの声でトモさんの曲をやっているのがそれだけで感動、みたいな感じで(こうやって文字にするとなんのこっちゃ、ってなるけど)、とにかくとてもよかった。
挫・人間をバックにやった二曲も最高だった。正直うらやましいな、と思った。
8月29日
バンドの練習だった(もちろん8月も毎週練習したけど、書くようなことがなにもなかった)。
ここ数回つくっていた新曲のBメロのアレンジが、すべてのフレーズの奇跡的な相互作用によって「ただ楽器が鳴っているだけ」みたいになって、僕はその「音楽だけど音楽じゃない感じ」というか「ただの音の集合体が音楽になろうと立ちあがっている過程の感じ」がめちゃくちゃいいなと思ったんだけど、メンバーからはいやふつうにダサいでしょという意見も出た。
このへんの話は僕が大好きなダニエル・ジョンストンが補助線になるのかもしれない。“Go”を聴いてみてほしい。
いやあいつ聴いてもいい曲だなあ。
この曲のサビの「ゴーゴーゴーゴーゴー」にはきらめくようなあやうさがある。特に3回目の「ゴー」があやうい。このあやうさは「音楽」と「音楽じゃない」を行き来していることからうまれているんじゃないかと僕は思う。そしてそれが彼の音楽を後にも先にも似るもののいない魅力的なものにしている。「音楽」と「音楽じゃない」を行き来することがこんなにも「音楽的」なのだと僕に教えてくれたのはダニエル・ジョンストンだ。
もちろん意図的にしろそうでないにしろ「音楽」と「音楽じゃない」の行き来をおこなっているミュージシャンはほかにもいるのだけど、ひとつのサビというみじかい時間のなかで音楽の枠組みからはずれてまたもどってくる、なんてはげしい動きをしているケースはそうそうない。
で、僕はそのBメロにそういった運動を感じたのだけど、でもやっぱりフレーズとしてはダサいし、そこにこめた意図を聴き手に理解してもらおうとすると、こうやってダラダラ書いた内容を押しつける必要がうまれるのでやめにした。それってギャグの解説をするようなもので、つまりは地獄だ。結局ドラムだけ変えたらいい感じになった。僕はダニエル・ジョンストンではないのでこれでいいのだ。
今回はここまでなのだけど、宣伝をひとつ。
友だちのバンド、ゲートボーラーズが9月4日にリリースしたニューアルバムのレビューを書かせてもらった。
レビューは本来もうすこし長かったものを削ってこのかたちになった。削った部分は僕と夏椰の関係を説明して、夏椰の人間性をすこし掘りさげるという内容だった。
文字数の問題とレビューという記事の性格から離れてしまうからという2点が削った理由になる。いきなり本題からはいったので「夏椰なんて呼んで親しげだけど誰だこのレビュワー」と感じた人もいるかもしれないけど、トータルとしてはいい判断だったと思う。
そこで書いていたこと、特に夏椰の人間性については、曲の内容や、さらにはPVの内容、あるいはゲートボーラーズというバンド名が充分に代弁してくれているんじゃないだろうか。
もしかしたら難解で突き放すところのある音楽に聴こえるかもしれない。でも実際はシャイなだけで、誠実なメッセージが詰まりすぎるぐらい詰まった作品だし、バンドだ。
ぜひ聴いてみてください。
ではまた。