
“雨”がエピソード2で“水風船”はエピソード1((sic)boy)
――歌詞については〈北風と太陽〉というラインだったり、(sic)boyさんのリリックではかなり意識的に“水風船”との繋がりを描いているように感じました。
(sic)boy「全く本当にその通りで。“雨”ではヒントをバラまいたんです。今回の“雨”がエピソード2で、エピソード1の“水風船”まで遡って聴いて新しい発見があったら楽しいかなって。
自分で言うのも変ですけど、僕はそういうストーリー性のある歌詞を作るのが得意な方だと思うんです。なので今回は遊び心をバラまきましたね」
――AAAMYYYさんも“水風船”のリリックは意識していましたか?
AAAMYYY「実は私も結構意識していて。“水風船”から連想して〈雨〉をテーマにした部分もあったんです。(sic)boyくんにデモを投げるときにはそれも言っていなかったんですけど、何も言わずとも汲み取ってくれました。
あと無茶振りをするのが私は好きで、予定調和になるのが嫌いなんですね。〈こういう感じで歌って〉って言うよりは、曲を聴いて想像を膨らませて好きにやってもらう方が、曲自体の広がりが出るので。それを目論んで何も言わずに無茶振りをしたら想像以上のものが返ってきて、すごい感動しました」
――特にフックのリリックなどは自己と向き合った前作『Annihilation』の延長線上にあるのかなと思ったんですが、いかがですか?
AAAMYYY「前作は自分のアイデンティティーを自分で確認して言葉にできるようにするタームだったと自分の中では思っているんですね。で、今作はフィーチャリングをしながらその一歩先に行きたい気持ちがあって。
私、今までフィクションを書いたことが無いんです。これまでの作品ではSFチックなものは書いていたんですけど、内容は哲学的でリアリスティックなものだったんですよ。
でも、“雨”では演歌を意識しています。演歌にある哀愁とか、昼ドラのような感じの男女の関係とか、作り込まれたドラマをちょっと意識して書いているんです。でもこういう人間が作っているから、必然的にその(自分自身の)要素も入っていると思います」

実は私のルーツは演歌なんです(AAAMYYY)
――演歌を意識していたのは意外でした。何か演歌に興味を持つきっかけがあったんですか?
AAAMYYY「私のルーツは演歌なんです、実は。今まではかっこつけてカーペンターズとかビートルズとかゴリラズとかテーム・インパラとかを自分のルーツに挙げていたんですけど(笑)、根っこの根っこにあるのはたぶん演歌なんだなってことに自分で気付いて。
(sic)boyくんの『vanitas』を何度も聴いていて、(sic)boyくんが演歌を歌ったらすごい似合いそうだなっていう妄想をしていたのもあって、演歌をテーマに書きました。
でもビートがポップスのままだと〈ザ・演歌〉になってしまうので、レゲエかドラムンベースの2択があって。(sic)boyくんならドラムンベースがかっこよさそうだと思ってドラムンベースにしました」
――演歌を聴いていたのはおじいちゃん、おばあちゃんの影響ですか?
AAAMYYY「そうです。実家が長野の山奥の田舎なので、情報がテレビしかなくて。テレビのチャンネルの主導権をおじいさん、おばあさんが握っていたので、夜の歌謡ショーとかを観てました(笑)」
――タイトルも演歌っぽいというか歌謡曲っぽいですよね。
AAAMYYY「まさにそうですね」
――今でも演歌は聴いているんですか?
AAAMYYY「結構聴きますよ。最近のも聴きますし、〈頭の中に残っている、あの曲なんだっけ?〉みたいなものがサブスクになかったりするから、結構探すのが大変で」
――じゃあレコード屋さんにいったら演歌コーナーとかも覗いたりする?
AAAMYYY「はい。それこそブックオフとかは演歌の宝庫なんで」
(sic)boy「めっちゃありそうですね(笑)」
――演歌で最近気に入っている作品はありますか?
AAAMYYY「やっぱり美空ひばりさんはいつ聴いても素晴らしいですね。
あとは演歌じゃないんですけど、演歌歌手の方が歌うシャンソンもめちゃくちゃ良くて。八代亜紀さんがカバーしてるシャンソン集がサブスクにあって、それをすごく聴いてます」