唯一無二の歌声で独特の世界観をポップに届けてきた注目の才能がアルバムを完成! 自身の日常や内面を掘り下げて生まれた『Mining』にはどんな彼女がいる?

やっぱり音楽って最高

 「去年の2月に『PEACHFUL』を出して、ライヴもいっぱいやって曲を聴いてもらおうと思ったらまたライヴできなくなったりして……。制作意欲がダーンッて落ちて、歌うことの楽しさみたいなのを忘れかけるところだったんですけど、去年の〈フジロック〉に事務所のみんなで行った時に、いろんな人のライヴを観て自分もこうなりたいと思ったし、〈やっぱり音楽って最高〉みたいな気持ちになって、帰り道に歌詞を書いて、帰った次の日に“true to true”が出来て。そこからちょっとずつ曲を作りはじめた感じです」。

 セカンドEP『PEACHFUL』(2021年)以降の1年半をこう振り返るkojikoji。もともと弾き語りの動画配信で脚光を浴び、空音やLUCKY TAPES、変態紳士クラブらとのコラボで注目を集める一方、BASIの後見による初EP『127』(2020年)から自身名義の楽曲リリースも始めた彼女だが、当初は詞曲を自作することに高い壁を感じていたようだ。ただ、創作意欲を取り戻す過程は、そのまま曲を書くことへのハードルを越える結果へと自然に繋がった。

 「たぶん、それまでは書くきっかけみたいなものを待ってたんですよ。けど、1曲出来てから〈そういうことじゃないんだな〉と思って、そこからもっとヌルッとした日常のことを書いたりしていたら曲が出来ていきました。意識しすぎると『PEACHFUL』の時みたいに悩むと思ったので、ただ書いて、トラックに乗せてみて、自分の出したい音とかを重ねてみて、みたいな感じでした」。

kojikoji 『Mining』 A.S.A.B(2022)

 そうやって結果的に全曲の詞曲を自身が書く形で仕上がったのが、彼女にとって初のフル・アルバムとなる『Mining』。本人も「私の世界観を出すなら、EPサイズじゃなくてアルバムで出したいなっていうのはありました」と語る通り、kojikojiらしい歌世界と情緒が11曲に渡って広がっている。幅を広げながらも浮き足立ったところのない統一感が素晴らしく心地良い一枚だ。

 「コンセプトとかもあんまりなくて、ホントに自分が好きな音で、等身大の自分を出せたらいいなと思っていたので、例えば〈バラードを作りたい〉とか〈もっと跳ねた曲を作りたい〉みたいなことはまったく考えずにやりました。実はそういうことを考えながら作った曲もあったんですけど、何か自分っぽくない感じがして。キャッチーで耳馴染みはいいけど、〈自分が歌って気持ち良いのか?〉〈これがホンマの自分なのか?〉って考えたら歌うのが恥ずかしくなって(笑)。自分が歌ってて恥ずかしい曲は絶対に出さないでおこうと思ったので、そういう曲は結果的に全部ボツになりました」。