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思い出を全部入れよう

 そんな芯の通った楽曲たちをアレンジ面で支えるのは、主にニューリーとアズマリキ(Small Circle of Friends)の二本柱だ。前EPでも“TASOGARE”に関与していたニューリーは同じ事務所・Broth Worksに所属する仲間で、ライヴ・セットでも彼女とステージを共にしてきた盟友。一方のアズマは『127』で全曲のトラックを担当した経緯もあり、「大学でギター弾き語りのサークルに入ってた時の思い出を歌った」という“Rosewood”などを繊細なメロウネスで彩色している。

 「アズマさんのトラックが好きで、ビートをいっぱい送ってもらってたんですけど、聴いてると歌詞がどんどん出てくるようなトラックだったので、ポンポンポンッて3~4曲すぐ書けて、〈全部アルバムに入れさせていただきたいです〉みたいな感じで作りましたね。で、ニューリーにアレンジしてもらった曲は、例えば“poyon”だと、私がLogicで元となる音を打ち込んで、デモで歌録ったデータを聴かせて、〈この雰囲気を保ったままアレンジしてほしい〉みたいな流れで作っていて、ニューリーとの4曲はどれもビート先行じゃなくて、私が打ち込んだ音とかギター弾いた音に合わせてアレンジしてもらった感じです。ライヴ・アレンジも1年間やってくれていて、私がライヴで〈こういう音を出したい〉って鳴らした音にお客さんがどう反応するかを同じ目線で見てきたので、〈kojikojiサウンドってこういうことだよね?〉っていうのをわかってくれているし、私がイメージした音や世界観に寄り添って最後まで仕上げるっていうのは、ニューリー的にも普段やらない作業だったので、お互い楽しかったです」。

 アコギのループとスキャット風の歌唱が流麗な先述の“true to true”をはじめ、「声とトラックの音数を最小限にして、かつグルーヴィーな曲にしたい」という意図を踏まえつつ友人たちとの日常を描いた“poyon”、メロディアスでリリカルな“wan-tan”、さらに「自分の話を物語っぽく書いた」という切ない逸曲“味のないsummer”がニューリーのアレンジによる楽曲だ。

 「“wan-tan”は福岡でライヴがあった時に、沖縄と石垣に事務所のみんなで行ったんですけど、その時に食べたワンタン(雲呑)が美味しくて。雲っていう字が入ってるのが何か良いなと思ったら、〈すっと雲を飲み込んだ感覚〉っていうサビが浮かんできて、そこから石垣と沖縄、福岡の思い出を全部入れようと思って書きました」。

 なお、ニューリーとのライヴでの経験はアズマのアレンジした“ペタッ”にも落とし込まれている。

 「“ペタッ”は私が弾き語りで作ってた曲で、それをアズマさんにトラックを付けていただく順番だったんですけど、同時進行でやってたライヴで私が買った鍵盤ハーモニカを〈絶対合うと思うから使ってみて〉ってニューリーに吹いてもらったらめちゃくちゃ良かったので、アズマさんにお願いして音源でも入れてもらいました。ちょっとずつBPMが変わるところも感情の変化を表現する要素になってると思います」。