ニューアルバム『(エン)』を2022年11月22日(火)にリリースすることをアナウンス、同作から君島大空さんが作詞・作曲・編曲した“朝の惑星”を発表したRYUTist。さらに、11月からはファン待望のライブハウスツアーが開催されます。そんな勢いに乗るRYUTistの、宇野友恵さんがお気に入りの本を紹介してくれているのが、この連載〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉です。今回取り上げるのは、小説家・綿矢りささんの作品集「嫌いなら呼ぶなよ」。収録された一編への思いから、コロナ禍以降の活動に対する友恵さんの迷いと決意が明かされました。 *Mikiki編集部

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5thアルバム『(エン)』のリリースとRYUTist初のライブハウスツアーの開催が決まりました。

アルバムは11月22日にリリースし、全国4ヶ所を巡るツアーが27日からスタートします。
東京から始まり、大阪、仙台と行き、最終日は新潟です。

心のざわめきが聞こえてきます。

 

〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉第15回目は、綿矢りささんの「嫌いなら呼ぶなよ」をご紹介します。
赤に青の水玉模様のカバーが一際目を引く本です。

綿矢りさ 『嫌いなら呼ぶなよ』 河出書房新社(2022)

綿矢さんがコロナ禍の中で紡がれた4つの物語。
当たり前になった、マスク生活、リモートワーク、外出自粛。
個性的な、というかちょっと痛々しい登場人物たちの表には出ない内面を引き出す文章力は流石としか言いようがなく、圧巻でした。

書き下ろしの「老は害でも若は輩」は特に衝撃でした。
メールで繰り広げられる作家とライターの喧嘩のやりとりを傍観していた編集者・内田。
我が強い者同士の戦いでかなりやばい。
作家はなんと〈綿矢りさ〉さんご本人のお名前を使用。リアルさが増していました。(ノンフィクションです。)

二人の言い争いがどうしようもなくなった時、攻撃の矛先が内田に向かって、〈会社の陰に隠れている〉とか〈言いたいことがあるなら黙ってないで〉とか、説教をしてきます。

〈本音を言ったらどれだけ最悪な事態になるか、考えただけで恐ろしい。〉

内田には意見など何もなく、〈早くどっちかが折れて、この仕事が終わらないかな〉というのが本音。そう思っていたところで、二人から板挟みにされたので、いたたまれなくなります。年の離れた大人たちからの非を打つ言葉に確実に狼狽していく彼の心情と、自分自身のことを重ねて読まずにはいられませんでした。

 

RYUTistもコロナ禍以降、状況が変わりました。できないものはできない。
最初こそ仕方ないなと納得し、その中でできることを精一杯の力を込めてやっていたけど、月一回の配信ライブがあるかないかといった具合でこのまま細々と活動を続けていくのかと不安になっていました。

いつになったら様子をうかがい続ける期間が終わるのか、誰にもわからないから腹立たしくもなる。少しずつ積み重なる怒りと悲しみ。
個人の想いだけでは先に進めることはできない。
待つことしかできない無力さ。
わりとせっかちな私は待っていられなくて、この一年でちょっとできるようになった、映像とかイラストとかパソコンを使って生きていくのもありだな〜なんて、身勝手な計画を考えたりしていました。ただ、作ることは好きだけど、本当に人生をかけてやりたいことなの?と自分に問いかけてみると〈そうじゃないけど〉と言う。