演歌や歌謡曲に漂うムードを伝えてくれる歌にもっと逢いましょう

八代亜紀 『夜のアルバム』 ユニバーサル(2012)

上手さだけでなく〈ムード〉を湛えた彼女の歌声の響きは、少女期の畠山にもくっきりとその印象を焼き付けたようだ。小西康陽プロデュースの元、ジャズのスタンダードなどを歌うことによってその個性を際立てた本作では、その魅力に改めて引き寄せられた人も多かった模様で。

 

石川さゆり 『X -Cross II-』 テイチク(2014)

喜び、悲しみ、恨み、慈しみ──感情に寄り添った言葉とメロディー、それを艶やかに演じきる歌い手によって生成される歌謡曲/演歌の旨味。椎名林檎、森山直太朗、TAKUROら、〈味〉を知る愛すべき後輩たちとのコラボによって、キャリア40年を越えた彼女も眩しく乱反射する。

EGO-WRAPPIN’ 『steal a person’s heart』 MINOR SWING/NOFRAMES(2013)

『歌で逢いましょう』には森雅樹が選曲で参加しているが、デビュー時からEGO-WRAPPIN’には昭和歌謡のノスタルジアやグルーヴ感があった。本作でも、歌謡曲の〈言葉〉が持つ叙情性を多彩なビートに織り込みながら、彼ららしいアヴァンな作風も響かせている。

 

中田裕二 『SONG COMPOSITE』 インペリアル(2014)

歌謡曲やニューミュージックなどの影響を自作のメロディーに匂わせていたのはバンド時代からだが、ソロになって以降は演者としての艶めきがメキメキと増加。アコースティック・ライヴから発展したこのカヴァー集も、満を持してと言ったところだろう。

 

なかの綾 『わるいくせ』 ユニバーサル(2014)

古のキャバレー、もしくはナイトクラブのハコバン──ラテン・フレイヴァーの演奏をバックに、カヴァー集という一貫したスタイルで香り立つ歌声を聴かせてきた彼女。新作では、横山剣、川上つよしと彼のムードメイカーズ、バンバンバザールらがほろ酔い気分を盛り立てて。

 

渚ようこ 『ゴールデン歌謡・第二集 ~エロスの朝~』 Sound Of Elegance(2013)

 〈洗練〉とは真逆に、歌謡曲が持つチャームをイビツさも含めて再構築し、エイジレスな楽曲を生み続けている彼女。本作なら和モノ・レアグルーヴの名曲“ディープ・パープルはどこ?”や由紀さおり“手紙”のスキャット版は7インチでも聴きたい出来。