
本当の個性を磨いて、内側から出す力を見せたい
――その環境が変わったことでご自身が変化した部分はありますか。
「最近は今いるファンの方をすごく大切にしたいなと思っています。クマリの知名度が少しずつ広がって、新しいファンの方もついてくれるようになっているんですね。札幌で初めて見て、今回のリリイベにほとんど来てくれる方とかもいて。今回のツアーで自分が遠征してみて、遠征ってこんなに大変なんだなと思ったんです。
だから、自分がライブする場所にわざわざ来てくれて時間を使ってくれるということは偉大なんだなと気づきました。今いるファンの方、これからファンになってくれる方を大切にしたいし、夢を見せてあげたいというのが今の一番の気持ちです」
――スタッフの顔色ではなく、素直にファンの人と向き合えているというのはすごくいいことですよね。
「だからこそ、マネージャーさんからこうしてと言われたことではなくて、自分の言葉で話すことが課題ですよね。根底にあるのは自分に自信がないことで、素っ裸の自分を問われた時になにも言えなくて、うまく逃げて背景になろうとしちゃうんですよ。自分の本当の個性を磨いて、内側から出す力を見せたいなと思っている今日この頃です」

アイドルサイボーグを目指してみてもポロッと出ちゃう人間味
――他にツアーをやっていくなかで得られたのはどんなことでしょうか。
「自分の理想としているアイドル像がいわゆるアイドルサイボーグで、嗣永桃子さんとか宮本佳林さんみたいな、アイドルに全力振りきった方なんです。それで、今回のツアーでは人間味を消すというか、とにかく可愛くいるというのを目標でやってみることにしました。
そうしたら、たまにポロッと出ちゃう人間味にファンの方が喜んでくれるんですよね。〈あ、やべ〉みたいに言葉使いが粗くなっちゃったのをよかったと言ってもらえる。だから、みんなは私の理想とするものではなくて、私の人間味が見たいのかと思ったり。
だからと言って人間味がありすぎるのはどうなのか、たまに出るのがいいのか……って考えている時点でダメなんですよね(笑)。ファンのみんながどんな自分を求めているのかがずっとわからないから、もう2年半になるのに悩んでますね」
――お母さんやマネージャーの話と一緒で、人のなかに答えがあると思いすぎているのかもしれませんね。
「ああ、たしかに! そうかもしれません! そこはファンの人目線で考えてました。自分がこうしたいからこうするんだっていうのがあまりないのかもしれない。人生においても」
――でも、クマリデパートのオーディションは人に求められたことではないですよね。そこは確実で自分で選んだわけで。だからそれは相当なことだったんだなと思います。
「たしかに。でも、それくらいかもしれないです」
――得意なダンスを見せたい、みたいな思いはあるのではないでしょうか。
「それも自信を持って言えるものでもなくて。全部を平均点にすることを目標にしてきたので、これがずば抜けてますというのがないんですよ。ダンスは得意ではあるんですけど、個性的なダンスをしている人は他にもいるので。お客さんからは〈振りコピをする時はメイちゃんを見る〉ってよく言われるんですね」
――正解のダンスをしているから。
「そうなんです。でも、特徴があるというより平均点なんです。やっぱり自分はいろんな意味でバランサーだと思います。誰かのためにこうなりたい自分じゃなくて、自分の内から出るものをみんなに見てもらった時、その中身がつまらない自信しかないです」
――そんな(笑)。
「この二十数年間、内から出したことがほとんどないので。場数も踏んでないものがおもしろいわけがないと思うんですよね。
だったら、自分を作り出す過程でみんながなにを求めているかを入れて、人の目を気にしたキャラクターができあがるという、この無限ループ」
私が一歩踏み出さないといけない
――話もループしつつありますもんね(笑)。クマリデパートを変える伸びしろがあるということなのかもしれないなと思いました。一歩引いて俯瞰で見ていた人が前に出てきたら驚きがあると思うので。
「変わりたい気持ちはあります。半年くらい前ですかね、全部がイヤになったことがあって。その時も個性を磨こうと思って、それが裏目に出てしまったんです」
――なにがあったのでしょうか。
「私のお母さんはクマリデパートの5ちゃん(ねる)を見ているんですけど(笑)、特典会の自分の列が短い時に心ない書き込みがあって、それを伝えてきたんですね。人気がないということで、自分を変えようとすごい頑張ってたんですけど、変わろうとしても実際変わってなかったら意味がないじゃないですか。それをSNSで〈頑張ってる途中だよ〉って発信しないとダメになった今の社会ヤバ、となって、病みました」
――それは本当にそうですよね。逐一報告しないといけないのかなと思うことはあります。
「パフォーマンスを見て伝わればいいんですけど、〈この部分気づいた?〉と限定して伝えないとスワイプひとつで飛ばされてしまう。じゃあ自分が頑張っている意味ってなんだろうと思っちゃったんですよね。以前は今よりも細かいことを気にしていました。
と言いつつ、クマリは最近逐一報告を頑張ってます(笑)」
――SNSをかなり意識してますよね。山乃さんは今のグループをどう見ていますか?
「すごくバランスがいいなと思ってます。早桜さんがキャっとして、優雨さんがフンっとして、フウカさんがハーっとして、小田さんがスベって、マナちゃんがうるさくして。そのめっちゃいいバランスのなかに、私がいないんですけど」
――やっぱり俯瞰して見ている。
「話振りMCマシンとして一歩引いちゃってるのかも(笑)。結局、戻ってくるところは自分の行動で、私が一歩踏み出さないといけないということなんですよね。今日でその思いがより深まりました」