The 1975やリナ・サワヤマなど、ここ日本でも人気の今をときめくアーティストたちが多数所属するDirty Hit。同レーベルから、新たな才能サヤ・グレーがデビューアルバム『19 MASTERS』を2022年に発表した。腕利きのベーシストや音楽監督として活躍するマルチ楽器奏者であり、シンガーソングライターでもある現在27歳のサヤ。生まれ育ちはトロント、母は静岡・浜松出身の日本人、父はスコットランド系カナダ人で、幼少期から音楽に触れてきたという。そんな彼女の現在や音楽人生が詰まった『19 MASTERS』が話題になるなか、サヤはアニエスベーのイベントに出演するため急きょ来日。今回は、インディペンデントメディア〈ORM〉を運営するスタッフたちに、彼女へのインタビューを担当してもらった。 *Mikiki編集部
日本のポップスは知的で音楽的で複雑
――今回あなたにインタビューできることをとても嬉しく思います! 今日はよろしくお願いします! ちなみに日本に訪れたのは何年ぶりなのでしょうか?
「母が日本人だから、子供の頃から家族で行ったり来たりしていたんだよね。前回来たのは2019年の〈フジロック〉で、 パンデミックの直前だったから、今回は久々に戻ってきたんだ」
――それはサポートメンバーとしてですか?
「そう! ダニエル・シーザーのサポートでベースを担当したんだけど、雨がたくさん降ってきて気が狂いそうだった(笑)。でも、クールだったよ。あのフェスティバルは大好きだし、すごくマジカルな空間だと思う」
――三宅一生、森万里子、伊丹十三、川久保玲など音楽以外の表現者からも多大な影響を受けたそうですが、具体的にどのようなところに影響受けたのでしょうか?
「彼らが仕事を始めた時から今に至るまで、真正性を貫く姿勢であったり、長いキャリアの中でもコンスタントに成長を遂げたりしていること。多様なカルチャーに多大な影響と進歩をもたらしていることには本当に感激したするね。そして、常に本物であることにこだわり続ける姿勢はとても刺激になる」
――日本では服を見に行きましたか?
「もちろん! PARCOの最上階や原宿にはたくさんの素晴らしいインディペンデントデザイナーがいるし、RADD LOUNGE(東京・渋谷のセレクトショップ)はもちろん、渋谷にはインディペンデントアーティストをフィーチャーした小さなセレクトショップがたくさんあるよね。とにかくクールだった!」
――安室奈美恵、millennium parade、椎名林檎、宇多田ヒカル、Perfume、まふまふ、坂本龍一、藤井 風、BUMP OF CHICKENなど、あなたのお気に入りリストには幅広い日本のポップアーティストが含まれていますね。日本のコアな音楽ファンの間では、これらのポップミュージシャンはリスペクトもされていますが、商業的だという否定的な意見も少なくありません。こうした状況も踏まえ、あなたは日本のポップスをどのように受け取っていますか。
「面白い質問だね。母の影響もあって、私は日本のポップミュージックを聴いて育ったし、とても好きなんだ。メタルやミュージカルシアター、ジャズ、ヒップホップ、R&Bの影響も同じように受けたけど、ポップミュージックのシンプルさが好きだし、ファッションやアクティビズムも好き。
けど洋楽と比べるとしたら、日本のポップスはより知的で音楽的、そして複雑だと思う。コードチェンジもテクニカルで難しいのと、メロディーはかなり激しいように感じる。
ポップスから学べることはたくさんあって、私はそのプロダクションにも興味があるんだ。だからポップスのプロデューサーから学びたいといつも思っているよ」
――特にお気に入りの年代はありますか?
「携帯の中にランダムで80年代のアルバムがたくさん入っているんだ。プロダクションがとても奇抜で、スマートで、新しい感じ。そして反骨精神に溢れているね」