3人の女性の不可思議な運命を描いた短編集。かすかに響いてくる声の様にささやかでありながら、実在と観念が混ざり合い、自分と世界の境界線が揺らいでぼやけ、通り過ぎるあの人も、隣にいる大切な人も、また自身も、今まで当たり前に存在していたものが、いつの間にか消えてしまっているような、まるで夢の中のような不思議な感覚に包まれます。限りなくそぎ落とした鉛筆線のタッチと余白も、読み手自身をよりこの世界に引き込んでいく効果を生み出しています。白黒ではない2色刷り、淡黄の美しい装丁も相まって、温かくもひやりとしたこの余韻を味わうために、また手に取りたくなる1冊です。